【完結】泣き顔に執着する学園の王子様との行末は

ルアミル

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25 修学旅行

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 ゴロゴロとキャリーケースを転がす音が幾つも重なりその間から聞こえる話し声も心なしか弾んでいる。かくいう俺も心が弾んでポケットに手を突っ込みながらソワソワしている。何故なら今日から修学旅行が始まるのだ!

 行き先は京都、大阪で3泊4日の旅になる。特に大阪のテーマパークに行く日が楽しみで仕方ない。
 そもそも行った事がないし、親しみのあるゲーム会社のアトラクションやシリーズ全て見ている魔法使いが出てくる映画のアトラクションなど有名なアトラクションが多数あるためとても楽しみだ。

 今は皆んなで先生の後ろに並んで新幹線に乗り込むところだ。
 班分けは今年友達になったメンバーに入れてもらいとても平和な形で終わった。本当に皆んな優しくて、友達になれて良かったと心から思う。
 友達ができたそのきっかけが桜城だというのはあまりにも皮肉が過ぎるが…。

「芦川おはよ」
「あ、橘!おはよう」

 橘と桜城は、橘がクラスで親しい人と同じ班になったようだ。
 橘はいつも桜城といるがコミュ力おばけで顔が広いし、桜城は男子からの好感度も意外と高いため班のメンバーでいるところをハタから見ていて良い雰囲気に見えた。

 桜城は微笑見ながらたまに頷く程度でほぼ喋って無かったけど。
 桜城以外は全員陽キャなんじゃ無いか?…てか桜城もあまりコミュ力の観点から見るとコミュニケーションが得意でなさそうだし、陽キャのノリとかも理解できなさそうだ。

 橘はとても良いやつだがあの陽キャ班に俺が放り込まれた事を想像するとゾッとするため桜城は自分を持っているとはいえホテルに着く頃には少し辟易してそうな気がする。
 彼らは悪く無いのだが人には相性というものがある。まぁ、勝手な想像だが…。

 窓の外をちょくちょく覗きながら新幹線で友達と話に花を咲かせているとあっという間に目的地へ着く10分前程になった。

 一番前の座席に座っていたが後ろの車両にあるトイレに向かおうと後ろに歩いていくとみんなの様子が見える。
 お喋りをしている者や寝ている者、様々だが…チラリと視界に入った桜城は寝ていた。って睫毛、ながっ!!
 立っている俺と座っている桜城はかなり距離があるにも関わらずはっきりと見えるほど睫毛が長い。流石、学校1の美形…。

 ゆっくり歩きながら思わず目を奪われてまじまじと見ていたらいきなり車両が揺れて、急いで足でバランスを取った。
 おっと、危なかった…。一瞬力んだがすぐに元通りになって歩き出したその時チラリと目に入った。

 桜城が目をパチパチと瞬きしていたのが。ぬ…あれは寝ているのではなく寝たふりだな。
 よく見ると3人席で横の橘とその横にいる明るい生徒がノリ良く話している。桜城がどういう心境か推し量る事はできないがお疲れ様とは思ってしまった。

 それからはバスで移動して京都の観光地へ向かった。その間もバスの中ではクラスの明るい子たちがレクリエーションと称して簡単なゲームを主催してやっていた。
 クラス全体で盛り上がっていたが参加したい人だけ参加するシステムだったため助かった。
 俺も俺の友人達もコミュニケーション弱めの陰キャなため最初は強制参加か⁈とビクビクしていたのだ。俺達は小さな声で普通にお喋りしていた。

 通路を挟んで斜め後ろに座っている桜城は…また目を閉じていた。
 もう分かる、これは寝たふりだな。橘は序盤、桜城を気にしていたが途中からゲームに参加しだしていた。

 夕暮れ前には皆チェックインし終わり各々の部屋へ向かい気がつけば夕食の時間になっていた。
 ホテルの大きな会場へ皆がゾロゾロと向かう。歩いていたら橘と桜城が2人で歩いているところに出くわした。

「久しぶり、芦川~」
「久しぶり、なのか?」
「朝ぶりだから久しぶりじゃね?」
「まぁ、そう、だな?」

 橘は俺にそう喋りかけた直後、後ろから来た別の生徒に話しかけられており本当に人気者だなと思う。
 文化祭で劇の主役を見事に演じてからより人気になった気がする。
 そんな事を考えながらふと顔を上げると桜城と目があった。

「…」
「…」

 いつも通り特に話したりしないのだが…桜城の顔がなんというか…疲れている様にみえた。
 色白な綺麗な肌だが目の下にうっすら隈ができている。

「…お疲れ様」

 コミュ力おばけ集団の中での観光の後に疲れた顔を見たら、俺から桜城に話しかけるなんて…など思う暇なくそう言わずにはいられなかった。
 自分に当てはめて考えたら想像だけでグッと疲れたからだ。

「何?いきなり」
「いや、なんというかその…お前の周り元気だろ。だからちょっと疲れそうだなっていうか…。あ、勘違いだったら悪いけど…」

 言った後に勝手に感情を推し量ったりして良くなかったか?と急に焦り始めた。
 そんなこと全然思っていないかもしれないし、自分本位で考えすぎた。桜城は所謂「陰キャ」では無いと思うが性格の分類で陰か陽かなら陰だと個人的に思っている。
 理由は普段の口数の少なさと雰囲気、後は同族の勘みたいなものだ。だから陽キャの人がウェ~イとなってる場面にいる桜城を見るとではつい親近感を覚えて勝手に同情していた。

「ん、少し疲れた…。まぁ寝たふりしてたらいつの間にか寝てたけど」
「…!」

 自分で話しかけたものの同意する答えが返ってくるとは思わず少しか驚いてしまった。
 やっぱり寝たふりだったんだな…。でもずっと寝たふりはきついだろうから寝てしまったのはむしろ良かったのではないだろうか。
 疲れ…あっそうだ!ふと思い出してアウターのポケットに手を入れ中を探る。

「あった…!これ」
「ん?」
「ブドウ糖が入ったラムネなんだけど要る?…あ、食事前だったな今」

 いつに無いほど疲れて見える桜城にブドウ糖が良いのでは無いかと取り出したのだが食事前だった事を思い出し、掲げたラムネの小袋をポケットへ仕舞おうとした。
 のだがそれは伸びてきた桜城の手によって遮られた。

「え?」
「…ちょうだい、それ」
「お、おう」

 そんなに糖分が不足しているのか、もしくはラムネが好きなのか分からないが食事前だというのに想定外に欲しいと言われキョトンとしながら袋からラムネを出して一粒渡した。

「ありがとう」

 桜城はラムネを口に含むと横目で俺を見て礼を言うとすぐ前を向いた。
 表情はあまり無いが冷たい感じではなかった。
 
「うん」

「暁夜、俺たち席あっちだって!」

 絶妙な距離を保って桜城と話しているとクラスメイトに話しかけられていた橘が会場から出てきて指差しして桜城に話しかけていた。

「うん、今行く」

 俺はそんな桜城と橘をチラリと見ると友人達と合流した。
 なんていうか…不思議な時間だったな。先程の桜城とした会話を思い出してそんな感想を抱いた。
 泣かされた以外で初めて2人きりになったライブの時に比べて桜城も口数が僅かだが増えた気がするし。





 それから美味しいご飯を堪能した後は同じ部屋に泊まるみんなと色々話したり遊んだりした。
 枕投げをしようとはならなかったがトランプやカードゲームを持ち寄り、いろんな遊びをして大変盛り上がった。
 消灯時間も迫り十分に遊んでもう寝ようかと言う頃になってふと頭に桜城が浮かんだ。

 陽キャ軍団の中に1人陰属性の桜城…大丈夫だろうか…?
 まぁ橘は長い付き合いで桜城第一だろうし心配する様な事にはならないかもしれないけど自分がそこに入って一夜過ごす事を考えたら胃がキリキリするためついそんな心配をしてしまった。
 ってなんで俺が桜城の心配してるんだ…。この間のトイレでの事まだ腹立っているのにと冷静になって頭の中から放り出す様に頭をブンブン振って眠りについた。

 それでもやはり気になってしまい翌朝橘に昨夜のことを尋ねたところ、他の同室の生徒は他の生徒の部屋や女子の部屋に遊びに行っていたそうで2人ですぐ寝たと言っていた。
 女子の部屋に…まさかそんな選択肢があるとは…。俺なんて話すことすら緊張してしまうと言うのに。ひとまずゆっくり寝られたと言うことで単純に良かったなと1人思っていた。
 
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