ナナはなぜ壊れたのか③——少女が、少女を脱ぎ捨てるまで

nana

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第71話 「鏡の向こうに、新しい私を」

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外の世界に触れるうちに、
私は、
少しずつ焦りを感じるようになった。

彼の隣にいるとき。
大学生たちと並んで笑うとき。

私は、
無意識に、
自分の姿を気にしていた。

──もっと、
綺麗になりたい。

自然と、
そんな思いが湧いてきた。

それは、
誰かに褒められたいとか、
モテたいとか、
そういう表面的なことだけじゃなかった。

自分自身を、
もっと誇れるようになりたかった。

だから、
私は、
メイクを本気で学びはじめた。

それまで、
なんとなくリップを塗ったり、
友達の真似をしたりしていたけれど。

初めて、
雑誌を買った。

初めて、
YouTubeでメイク動画を真剣に見た。

アイシャドウの入れ方。
涙袋の描き方。
まつ毛のカールの角度。

細かいところまで、
何度も練習した。

最初は、
うまくいかなかった。

アイラインが歪んで、
まぶたに黒い跡を残した。

ファンデーションを塗りすぎて、
仮面みたいになった。

それでも、
私は、
諦めなかった。

鏡に向かって、
何度も何度も、
ブラシを動かした。

制服のポケットに、
こっそりリップを忍ばせるようになった。

昼休み、
トイレの鏡の前で、
そっと塗り直す。

少しだけ色づいた唇。

それだけで、
私は、
ほんの少しだけ自信を持てた。

──鏡の向こうに、新しい私がいる。

そんな気がした。

メイクを覚えて、
私は、
もっと自分を表現できるようになった。

アイシャドウを変えるだけで、
今日の私が少しだけ強くなれる。

チークの位置を変えるだけで、
いつもより優しい顔になれる。

誰かのためじゃない。

彼のためだけでもない。

私は、
私のために、
変わりたかった。

制服のスカートを揺らして、
校舎の階段を駆け上がるとき。

ポケットの中のリップを指で確かめながら。

私は、
静かに、
小さな自信を育てていた。

──つづく。
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