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第75話 「初めて、全部を許した夜」
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それは、
冬が始まったばかりの夜だった。
吐く息が白く光る駅前。
イルミネーションに囲まれて、
私は、
彼の隣にいた。
「ナナ、今日……家、誰もおらんねん。」
ぽつりと、彼が言った。
両親は、
仕事か、用事で遅くなるらしかった。
──来る?
そう目で訊かれて、
私は、
何も言わずに頷いた。
彼の家。
初めて上がる、
私たちだけの空間。
鍵を開ける音がやけに響いた。
リビングのソファ。
少し乱れたバスケットボールの雑誌。
炊飯器の匂いが、かすかに残るキッチン。
生活の気配が、
どこか無防備に広がっていた。
ふたりきりになった空間で、
私は、
妙に身体が熱くなるのを感じていた。
彼が、
そっと近づいてくる。
気づけば、
もう後戻りできないところに立っていた。
彼の手が、
私の髪を撫でた。
そして、
ぎこちないキス。
最初はおでこに、
それから頬に、
そして、
唇に。
何度も、
確かめるように。
制服のリボンをほどかれたとき、
私は、
無意識に目を閉じた。
シャツのボタンが外される音。
カラダに触れる指先の、
少し震えたぬくもり。
──怖くない。
そう心の中で繰り返した。
怖くない。
怖くなんかない。
彼の手が、
素肌を滑っていく。
冷たいはずの空気も、
今は、
何も感じなかった。
ソファに倒れ込んで、
彼の体温を受け入れたとき、
私は、
確かに自分自身を差し出していた。
痛みは、あった。
小さな、
でも確かな違和感。
だけど、
それ以上に、
「この人のものになりたい」という想いが、
私を支えていた。
彼が私の名前を呼ぶ。
私は、
小さく頷いた。
何も言葉はいらなかった。
指先。
唇。
呼吸。
全部で、
私は、
彼と繋がった。
初めて知る重なり合う感覚。
すべてが不器用で、
拙くて、
でも愛しかった。
この夜、
私は全部を許した。
隠していた不安も。
震えていた自信のなさも。
誰にも見せたことのない、
裸の自分も。
すべて、
彼に差し出した。
終わったあと、
ソファの隅で、
彼が私を抱き寄せた。
カーテンの隙間から見える、
冬の夜空。
私は、
彼の胸に顔をうずめながら、
小さく震えた。
あたたかい。
でも、
心の奥では、
ほんの小さな"軋み"が生まれていた。
彼は、
気づかない。
私だけが、
ひとりで境界線を越えたことに。
制服のスカートを直しながら、
私は、
心の中で静かに思った。
──もう、戻れへんねんな。
──つづく。
冬が始まったばかりの夜だった。
吐く息が白く光る駅前。
イルミネーションに囲まれて、
私は、
彼の隣にいた。
「ナナ、今日……家、誰もおらんねん。」
ぽつりと、彼が言った。
両親は、
仕事か、用事で遅くなるらしかった。
──来る?
そう目で訊かれて、
私は、
何も言わずに頷いた。
彼の家。
初めて上がる、
私たちだけの空間。
鍵を開ける音がやけに響いた。
リビングのソファ。
少し乱れたバスケットボールの雑誌。
炊飯器の匂いが、かすかに残るキッチン。
生活の気配が、
どこか無防備に広がっていた。
ふたりきりになった空間で、
私は、
妙に身体が熱くなるのを感じていた。
彼が、
そっと近づいてくる。
気づけば、
もう後戻りできないところに立っていた。
彼の手が、
私の髪を撫でた。
そして、
ぎこちないキス。
最初はおでこに、
それから頬に、
そして、
唇に。
何度も、
確かめるように。
制服のリボンをほどかれたとき、
私は、
無意識に目を閉じた。
シャツのボタンが外される音。
カラダに触れる指先の、
少し震えたぬくもり。
──怖くない。
そう心の中で繰り返した。
怖くない。
怖くなんかない。
彼の手が、
素肌を滑っていく。
冷たいはずの空気も、
今は、
何も感じなかった。
ソファに倒れ込んで、
彼の体温を受け入れたとき、
私は、
確かに自分自身を差し出していた。
痛みは、あった。
小さな、
でも確かな違和感。
だけど、
それ以上に、
「この人のものになりたい」という想いが、
私を支えていた。
彼が私の名前を呼ぶ。
私は、
小さく頷いた。
何も言葉はいらなかった。
指先。
唇。
呼吸。
全部で、
私は、
彼と繋がった。
初めて知る重なり合う感覚。
すべてが不器用で、
拙くて、
でも愛しかった。
この夜、
私は全部を許した。
隠していた不安も。
震えていた自信のなさも。
誰にも見せたことのない、
裸の自分も。
すべて、
彼に差し出した。
終わったあと、
ソファの隅で、
彼が私を抱き寄せた。
カーテンの隙間から見える、
冬の夜空。
私は、
彼の胸に顔をうずめながら、
小さく震えた。
あたたかい。
でも、
心の奥では、
ほんの小さな"軋み"が生まれていた。
彼は、
気づかない。
私だけが、
ひとりで境界線を越えたことに。
制服のスカートを直しながら、
私は、
心の中で静かに思った。
──もう、戻れへんねんな。
──つづく。
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