“新しい主”が欲しかった──ナナを真似る女、飼いたがる男

nana

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第14話 「命令、来た。」

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通知音は、思っていたよりも静かだった。
その“ピコン”の響きが、
毛布の下でまだ繋がっていた私たちの指先を
ゆっくりほどいていくのがわかった。

彼女がスマホを見て、
私のほうを振り返る。
「来ました」

それだけで、空気の密度が変わった。
日常と非日常の境界線が、また引き直された気がした。

主からのLINEは、短かった。

「今日は、二人で来て」
「例の“あれ”も持って」

“あれ”が何かなんて、聞かなくてもわかる。
数日前、主の家で私たちが並んでいたときに、
「これ、二人でも面白そうやな」と言われたやつだ。

彼女が何も言わず、クローゼットから箱を取り出す。
透明なケースに入った、あの道具たち。

私はその姿を見て、
一度だけ深く息を吸った。
さっきまで“わたしたち”だったものが、
また“主に仕えるふたり”に戻っていく。

「大丈夫?」
私が訊くと、
彼女は静かに頷いた。

「ナナさんは?」

「…うん。
たぶん、またちゃんと“ナナ”になれると思う」

準備を終えて、
ふたりで玄関に立つ。
並んだ靴が、まるで整列した兵士みたいに見えて、
私は少しだけ笑ってしまった。

「なに笑ってるんですか」
彼女がそう訊いてくる。

「んー…なんも。
ただ、私らって今、
主のとこに行くために“整えられてる”なって思って」

彼女も笑った。
でもその笑顔は、
少しだけ、さっきまでの“彼女自身”とは違っていた。

扉が閉まる音がしたとき、
私は小さくつぶやいた。

「命令、来たな」

そしてもう一度、
自分のなかの“ナナ”に、スイッチを入れた。
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