7 / 87
【第7話】 「…なんか、命令してくれへんの?」
しおりを挟む
週末の夜。
私はまた、自分の部屋に彼女を呼んでいた。
呼んだ理由なんて、うまく言えない。
一緒に映画を見る予定だった。
そう言い訳することで、自分をごまかしていた。
でも本当は、
なにか“される”ことを待ってた。
それを自分で認めた瞬間、
私はたぶん、もう“ナナ先輩”じゃなかった。
ソファに並んで座って、
コンビニのワインを空けて、
映画を最後まで観終わって、
エンドロールが流れ始めたころ。
彼女は横を向いて、唐突に聞いた。
「ナナってさ、
“言われる前に気づく女”やんな?」
私は笑ってごまかす癖で、
「そんなん知らんわ」って言った。
「うそやん。
ほんまは、言われたいけど、
先に自分からやって、“支配された気にさせへん”ようにするやろ」
図星だった。
それ以上なにも言えなくなった。
彼女はグラスをテーブルに置きながら、
ゆっくりと、
静かに、
私のほうへ向き直った。
「今日は、命令してほしいん?」
──その瞬間、
何かが、こみ上げた。
「……なんか」
私はうつむいて、小さな声で言った。
「命令してくれへんの?」
自分の声が、自分じゃないみたいだった。
喉の奥からこぼれ落ちるその言葉は、
媚びてて、頼ってて、
でも、それ以上に“正直”だった。
彼女はしばらく黙ってから、
目を細めて、まるで愛しむように言った。
「ええよ」
そして、次の命令はこうだった。
「じゃあ、今からナナの“エロい仕草”、10個やって。
自分で“エロいと思ってるやつ”限定で」
私は息を呑んだ。
それは“脱げ”より恥ずかしかった。
触れられるより、ずっとこたえた。
だってそれは──
“自分で自分をエロく見せろ”という命令だったから。
照れ笑いも、茶化しも効かない空気の中で、
私は一つずつ、ポーズを取っていった。
髪をかき上げるしぐさ。
足を組み替えるしぐさ。
唇を指でなぞるしぐさ。
演じてるのに、
演じてるはずなのに、
どんどん“本気”になっていく自分がこわかった。
十個目を終えたとき、
彼女はなにも言わなかった。
ただ、見ていた。
じっと、私という存在の“滑稽さと色気”の境界線を。
私の顔が赤いのか白いのか、もう自分でもわからなかった。
でも一つだけ、確かだった。
──私は今、自分から命令をねだった。
そしてそれを、
“喜んで”やってしまった。
その夜、帰り際に彼女が言った。
「ナナ、いまの顔、めっちゃええな。
“支配されてることに気づいた女の顔”してた」
その言葉に、
私は返事もできず、ただ笑ってしまった。
笑うしかなかった。
それが、降伏のサインやと知りながら。
私はまた、自分の部屋に彼女を呼んでいた。
呼んだ理由なんて、うまく言えない。
一緒に映画を見る予定だった。
そう言い訳することで、自分をごまかしていた。
でも本当は、
なにか“される”ことを待ってた。
それを自分で認めた瞬間、
私はたぶん、もう“ナナ先輩”じゃなかった。
ソファに並んで座って、
コンビニのワインを空けて、
映画を最後まで観終わって、
エンドロールが流れ始めたころ。
彼女は横を向いて、唐突に聞いた。
「ナナってさ、
“言われる前に気づく女”やんな?」
私は笑ってごまかす癖で、
「そんなん知らんわ」って言った。
「うそやん。
ほんまは、言われたいけど、
先に自分からやって、“支配された気にさせへん”ようにするやろ」
図星だった。
それ以上なにも言えなくなった。
彼女はグラスをテーブルに置きながら、
ゆっくりと、
静かに、
私のほうへ向き直った。
「今日は、命令してほしいん?」
──その瞬間、
何かが、こみ上げた。
「……なんか」
私はうつむいて、小さな声で言った。
「命令してくれへんの?」
自分の声が、自分じゃないみたいだった。
喉の奥からこぼれ落ちるその言葉は、
媚びてて、頼ってて、
でも、それ以上に“正直”だった。
彼女はしばらく黙ってから、
目を細めて、まるで愛しむように言った。
「ええよ」
そして、次の命令はこうだった。
「じゃあ、今からナナの“エロい仕草”、10個やって。
自分で“エロいと思ってるやつ”限定で」
私は息を呑んだ。
それは“脱げ”より恥ずかしかった。
触れられるより、ずっとこたえた。
だってそれは──
“自分で自分をエロく見せろ”という命令だったから。
照れ笑いも、茶化しも効かない空気の中で、
私は一つずつ、ポーズを取っていった。
髪をかき上げるしぐさ。
足を組み替えるしぐさ。
唇を指でなぞるしぐさ。
演じてるのに、
演じてるはずなのに、
どんどん“本気”になっていく自分がこわかった。
十個目を終えたとき、
彼女はなにも言わなかった。
ただ、見ていた。
じっと、私という存在の“滑稽さと色気”の境界線を。
私の顔が赤いのか白いのか、もう自分でもわからなかった。
でも一つだけ、確かだった。
──私は今、自分から命令をねだった。
そしてそれを、
“喜んで”やってしまった。
その夜、帰り際に彼女が言った。
「ナナ、いまの顔、めっちゃええな。
“支配されてることに気づいた女の顔”してた」
その言葉に、
私は返事もできず、ただ笑ってしまった。
笑うしかなかった。
それが、降伏のサインやと知りながら。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる