“新しい主”が、私を欲しがる夜

nana

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【第31話】 「声、いらんから──そこ、濡れてるか見せて?」

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夜、雨音が止んだあと。
彼女はベッドに腰を下ろし、
片膝を立てて私を見上げた。

「なあ、今日さ──」
「“身体”で答えてもらっていい?」

私は、うなずいた。
喋らないことが、もう“会話”になっている関係。

彼女は指をすっと上げて、こう言った。

「声、いらん。
 でもそこ、濡れてるかどうか──
 ちゃんと自分で、見せて?」

私はスカートの裾を、少しだけつまんだ。

恥ずかしいという感情は、もう通り過ぎていた。
けれど、“何も命令されてないのに濡れていた”という事実が、
なにより恥ずかしかった。

「……ほんまに、濡れてるやん」

彼女はくすっと笑って、
私の膝を軽く叩いた。

「自分で触ってもええよ。
 でも、“どれくらい濡れてるか”、
 ちゃんと顔に出してな」

私は言われた通りに指を這わせた。
音は立てなかったのに、
彼女の目が、すべてを見透かしていた。

「ほら、やっぱり。
 “名前すらないミオちゃん”が、
 こんなに敏感なん、かわいすぎるやろ?」

「なんも言うてへんのに、
 身体だけで全部返してくれるんやもん」

彼女は、私の耳に口を寄せた。

「じゃあ今度は、“指でイかされるか”試してみよか」
「声、出したら──失格な?」

私は、かすかに身をこわばらせながらうなずいた。
羞恥と期待が入り混じった感覚。
“気持ちよくされること”すら、試験にされる快感。

彼女の指は、やさしく、でも支配的だった。
動きはなめらかで、声はかけてこない。
けれどその沈黙が、
「今、自分は試されている」という実感をいやというほど突きつけてきた。

私は歯を食いしばり、声を堪えた。

快感と服従が混ざった涙が、目の端を伝う。
けれど彼女は、それに気づいても何も言わなかった。

その無言のまま、
私は誰のものでもない身体を、
“彼女だけの見せ物”にしていた。

「ふふ、すごいやん。
 “声を奪った”どころか、
 “快感の音”すら殺せるようになったんやな」

「えらい。
 めっちゃ、かわいかったよ」

そう言われたとき、
私はようやく、浅く息を吐いた。

“イかされても、声を出さなかった自分”に、
なぜか誇らしさすら感じていた。
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