“新しい主”が、私を欲しがる夜

nana

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【第33話】 「触れていいよ、って言われたのに、目の前でしかできなかった」

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「なあ、今日は──ミオがやってみて?」

シャワーを終えた私がバスタオルで髪を拭いていると、
彼女はベッドに寝転がったまま、そう言った。

「どうって?」

「触っていいよ。
 自分で、自分のこと」

「ただし──」
「わたしの目の前でだけ、な?」

私は動きを止めた。

触れてもいい。
でも、“彼女が見ている前で”だけ。

それは自由じゃない。
命令よりも緊張する、“選ばされた行為”だった。

彼女はあぐらをかいて、
私のほうを見ながら笑った。

「恥ずかしいよな?」
「でも、ミオってそういうの、
 いちばん反応するタイプやと思うねん」

「“好きにしていい”って言われるほうが、
 逆に従順になってまうやろ?」

その通りだった。

私は何も言わず、ベッドの端に座り、
そっとタオルを脇に置いた。

指先が、脚の内側をすべっていく。
彼女の視線がそこにあって、
音も動きも、全部“晒されている”のに──
不思議と、恐怖はなかった。

あったのは、
“見せていること”そのものが、命令に従っている気持ちよさ。

「ミオって、“自分のため”には触らへんのやな」

彼女はぽつりとつぶやいた。

「“わたしに見せるため”だけに、気持ちよくなるんや」
「……やば、めっちゃ好き、それ」

彼女の声が、
私の指よりも先に、
下腹の奥を刺激してくる気がした。

ふと、彼女が言った。

「ねえ、気持ちいいん?」
「返事、いらんよ。顔に出して」
「……ううん、“顔だけ”で教えて?」

私は思わず、目を伏せる。
でも、唇はわずかに震えていた。

呼吸が浅くなり、
喉が、出せない声のために震えていた。

「なあ、ミオ」
「“誰かに見られながら気持ちよくなる”って、
 たぶん、一生忘れられん記憶になるで」

「今、あんた、
 “見せるための快感”に、身体が調教されていってるんやわ」

指の動きが止まらない。
でも、彼女が見ている限り──
私は、もっと続けてしまう。

“見せるために濡れていく”
それが、自分の新しい快感の型になっているのがわかった。

最後、彼女は言った。

「ミオ、次は“わたしの声だけで”触れてもらうから」

「何も言わんでも、
 “こうしてほしい”って思ったら──
 声のトーンで、察してね」

そう言って、私のあごに指を添えて、
そっと微笑んだ。

「“感じてる顔”ができるようになったね。えらい」

その一言に、
私はなぜか、達成感で泣きそうになった。

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