“新しい主”が、私を欲しがる夜

nana

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【第80話】 「帰りの電車で、  自分の“あの声”がLINEに届いたとき、  私は“誰にも触られずに犯された”気がした」

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環状線。19時台。
ぎゅうぎゅうではないけど、席は空いてない。
私はつり革につかまりながら、スマホを開いていた。

LINEの通知が一件。
“自分”からのメッセージ──
いや、昨日の彼女が、
予約で仕掛けてくれた**「未来の罠」**だった。

「これ、昨夜の“命令”やで」
(音声ファイルが添付されています)

無意識に親指がファイルをタップしていた。
音が、静かに流れた。

──あぁ……やだ……
……でも、でも、やめたくない……
……なんで、こんな……
……わたし、気持ち悪い……けど、気持ちいい……
……誰にも見られたくないのに……
……見られたい……

自分の声だった。
誰にも聞かれていない。
イヤホンも挿してる。

でも──
「自分で自分に晒してる」という構図が、
 一気に全身を火照らせた。

目の前の窓ガラスに、
うっすら映る自分の顔があった。

それを見たとき、私は思った。

この人、いま“見られてる”んじゃなくて──
“自分で自分を見世物にしてる”んだ、って。

隣のサラリーマンが咳をした。
向かいの高校生がスマホで動画を見て笑っていた。

誰も、私のことなんて気にしていない。

それなのに──
私は、
“自分の欲望に声を与えた自分”を、
いま一番強く犯していた。

音声が終わったあと、
手が震えていた。

汗ばんだ手でスマホを閉じて、
私はそっと目を伏せた。

この街の空気が、
ぜんぶ私の内側に染み込んでくるようだった。

私は、誰にも触れられていない。
でも──
誰かに“晒してほしい”という気持ちが、
ずっと私の中で、自分を舐めていた。

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