壊れて、笑って、生きていく②──主に委ねるカラダ

誰もいない部屋で、また私は裸になった

あの夜、
私は主たちの前で、
ヒモみたいな衣装で土下座して、
「生まれてきてすみません！」って叫んだ。

爆笑と拍手に包まれながら、
どこかでふっと、
空っぽになった自分を感じた。

タクシーで帰る道すがら、
スマホには、
グループLINEに送られた私の写真が並んでた。

ヒモだけをまとった私。
土下座してる私。
涙目で笑ってる私。

みんながそれに、
「ナナ最高！」「次も期待してる！」
ってコメントしてた。

主も、
「ナナ、やっぱ一番やな」
ってひと言、つぶやいてた。

それだけで、
私はまた、
身体が温かくなるのを感じてしまった。

家に着いたら、
部屋の空気が冷たかった。

誰もいない部屋。
誰にも見られてない私。

私は、
自然と服を脱いでた。

ヒモの水着は持ち帰れなかったから、
代わりに、
下着を細くねじって、
即席の“裸コスチューム”を作った。

鏡の前に立つ。
全裸に近い自分。
何も守れてないくせに、
必死にポーズを取る。

「生まれてきて、すみません！」

もう一度、
自分に向かって叫んだ。

誰もいない。
拍手もない。
笑いもない。

なのに私は、
主にだけ届くかもしれないと、
どこか本気で思ってた。

そして、
また考えた。

「次、呼ばれたら、もっとすごい芸をやろう」

守るものなんて、もうなかった。
恥ずかしいも、情けないも、
全部、笑い飛ばすためにあった。

ノートを広げて、
次の芸のアイデアを書き始めた。

🔹「裸でコーラ一気飲み → げっぷ芸」
🔹「全裸でバンザイ50連発」
🔹「裸で絵描き歌にチャレンジ（お題は主の似顔絵）」
🔹「四つん這いで部屋一周ラリー」

どれもバカバカしくて、
普通の女の子だったら絶対にやらないようなことばかり。

でも、
私はもう普通じゃない。

「主にまた笑ってもらえるなら」

その一心だけで、
私は裸のまま、ノートにペンを走らせ続けた。

夜が明けるころ、
窓の外がほんのり白くなってきた。

私はまだ、
裸のままだった。

鏡に映った自分は、
滑稽で、
情けなくて、
でも少しだけ、
誇らしそうに笑ってた。