王道異世界ファンタジー【ドラゴンライダー】〜Dragon Knights 世界の空を制する者〜

語 群青

文字の大きさ
15 / 23

第十四話: ヴァニットとの再戦

しおりを挟む
 マルクス・オーグとの死闘を終え、深い疲労を抱えたドラゴンナイツたちはヴェルランディアへの帰還準備を整えていた。戦いの傷跡が残る廃墟の中、クロー(颯太)とハート(柚希)は戦場となった村を眺めながら静かに歩いていた。

「こっちの世界に来てから、本当にいろいろあったよね…颯太。」

  ハートが呟くように言いながら、荒れ果てた村の残骸を見つめていた。瓦礫と化した家々、静まり返った空気、そしてどこかに失われた人々の生活、静寂が、戦場の無情さを一層引き立てていた。

「ねぇ、こんな戦いを続けて、本当に意味があるのかな。」
 ハートの言葉に、クローは立ち止まった。そして、彼女に振り向きながら静かに問いかけた。

「どうしたんだよ」
「別に…ただ、私たちはずっと戦ってばかりで、失うものばかり増えていくから。」

 ハートは俯き、しばらく黙り込む。その肩が小さく震えているのを見て、クローは何かを言おうとしたが、その時――。

***

 突然、空気が変わった。不気味な冷気が漂い、辺りに緊張感が走る。

「なんだ、この感じは...!柚希、俺の近くに!」
 クローはハートを引き寄せ、周囲を見渡した。

 空気が震え、遠くの空に黒い裂け目のようなものが現れる。その裂け目から現れたのは、かつて自分たちと戦った闇色の翼を持つ女幹部。

「ヴァニット…!」
 クローが鋭い声で叫ぶ。妖艶な微笑を浮かべた悪魔ヴァニットが空を舞っている。その姿を見た瞬間、クローの頭の中には彼女がもたらした苦しみと怒りがよぎった。

「久しいな、ドラゴンナイツ。マルクス・オーグも倒すなんて強くなったわね」
 ヴァニットは冷たい笑みを浮かべ、静かに降りてきた。

「また来たか…! 今度こそ、お前を――!」
 クローは両腕の爪を構え、攻撃態勢に入る。しかし、ハートは彼の肩を掴んで止めた。

「待って、颯太!」
 ハートがクローの前に立ち、ヴァニットに向き直った。

「ヴァニット、もう争うのはやめにしない?」
 その言葉にヴァニットは一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに笑みを浮かべ直した。

「争いをやめる? それができるなら、とっくにそうしているわ。」
 その声には冷たさがあったが、どこか迷いのようなものを含んでいるのを二人は感じ取った。

「私を止めたいなら、力で示すがいい!」
 ヴァニットは鎌を構え、翼を大きく広げて突撃してきた。

「ハート下がれ!俺が相手をする!」
 クローはハートを後ろに退け、歯を食いしばって爪を構えた。

 ヴァニットが間合いを詰めて鋭い鎌を振るう。その攻撃をクローは咄嗟に受け流すが、強烈な衝撃波が地面を裂き、土埃が舞い上がる。クローは応戦するが、ヴァニットは鎌を巧みに操り、攻撃をいとも簡単に防ぐ。

「その程度で私を止めるつもり?」
 ヴァニットの冷笑がクローの焦りを煽る。

「無駄よ。」
 ヴァニットが再び鎌を振り上げた。マルクス・オーグとの戦いで疲弊し、アーマードワイバーンのカイもいない今のクローには、万に一つ勝つ術はない。クローが気力で必死に食らいつくも、ヴァニットの動きは圧倒的だった。鋭い鎌の一撃がクローの爪を弾き、その衝撃で地面に追いやられる。

「ほら、もっと私を楽しませてよ。」
 ヴァニットは不敵な笑みを浮かべながら再び鎌を振り上げる。瞬間、ハートが間に割って入った。

「ヴァニット!お願い、もうやめて!」
「何?命乞いかしら、それも無駄だと言うの、がーーー」

 ハートのその瞳には涙が浮かんでいた。だが、それは決して恐れや怯えによるものではない。その眼差しはヴァニットに向けての悲しみが込められている。今まで向けられたことのない感情に、ヴァニットは動悸していた。

「他のガーデの人たちとは違う、あなたの心には優しさがあるわ。私にはわかる!あなたも本当は私たちと戦いたくないんじゃない?あなたが何を抱えているのか、もっと教えてほしい。」

 ヴァニットはその言葉に戸惑った表情を見せるが、すぐにまた鋭い目を向けた。
「私は敵だ。お前たちと分かり合うつもりなど――!」

 その言葉の途中で、彼女の鎌が震え、彼女自身の心が揺らいでいるのを感じ取ることができた。ヴァニットが鋭い鎌を振り上げる。

「ハート!危ない!」
 クローの心配とはよそに、ヴァニットの鎌はハートの胴体をかすめ、地面に突き刺さった。さっきまでの敵意は感じられない。二人はヴァニットの中で今までにない何かが動き始めていることに気づいていた。

「私は…私は生まれた時から、この姿と呪いを背負わされて……」
 ヴァニットの声は小さかったが、それを聞き取ったハートが歩み寄った。

「ヴァニット!私たちは、あなたを憎んでいるわけじゃない。あなたが傷つけた人も確かにいるけど、きっと、分かり合えるはずよ!」
 ハートの問いに、ヴァニットは答えられないまま目を伏せた。

「私の存在なんて…誰も望んでいない。それがどちらの側であっても。」
「そんなことない!」
 ハートが叫ぶ。

「何を言っても無駄よ。私は敵なの。」

「クロー!ハート!」
 ヴァニットが振り返ると、遠くの方からブレインたちが近づいてきていた。クローの戦いの気配を感じ、カイが反応したのだろう。

「……さよなら」
 ヴァニットは翼を広げると、再び空へと舞い上がり、暗闇に溶け込むように消えていった。
 その言葉の裏には深い悲しみが滲んでいたように感じていた。

「大丈夫か!今のヴァニットだな」
 ブレインが慌てて駆け寄ってくる。クローとハートを交互に見て、外傷はないことに安堵する。カイも心配そうにクローに鼻先を押し付けてきた。

「平気だ、カイもありがとう。……ハート。」
「うん、私たちを殺すつもりなら、いつでもできたのに。やっぱりヴァニットは今まで戦った幹部たちとは違うんだよ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...