12 / 45
12
しおりを挟む
それから数日、アルバートは朝も昼も夜も優しかった。厳密に言うと夜は優しいけれど、意地悪も多い、だが。そしてそれは、スプラルタ王国の叔父夫婦の邸に到着しても続いた。
「じゃあこんなに可愛いお嫁さんなのにお式をしてないのね」
「はい。ですので、こちらで直ぐに挙げたいと思っています」
「あら、ドレスを仕立てるのに時間はそれなりにいるわよ」
「それが、その」
アルバートにしては歯切れの悪い物言いにアルバートの叔父であるランスタル伯爵夫妻もエミーリアも不思議に思った。
「その、夫婦になった日の夜に、達成感というか、到達感というか、そうなので、えっと、多分、種付けをしてしまったと思われますので、急がないと、エミーの腹が」
「アル、男は、その、そういうときは、達成感に溢れるんだ。かと言って」
「もう、あなた達、何を言っているの。エミーが卒倒しそうなことを言わないの」
しかし、養子縁組の申請も無事に終わった頃、本当にエミーリアは妊娠していることが判明した。
「ですから、言ったじゃないですか。なんとなく手応えがあったんです。あ、手ではなく、その」
「もう、アル、それ以上は言わないで」
伯爵夫妻は迎えいれた甥夫婦の仲睦まじい姿に喜びつつも、大切なことを切り出すタイミングを窺った。
「エミー、今日はお客様がお見えになるんだが、体調は大丈夫だろうか」
「はい。どなた様でしょうか?まだ妊娠が分かっただけですもの、ご挨拶は問題なく出来ますわ」
「それが、実は、君の弟君がいらっしゃる」
「弟?」
「義父上、それは、カリスター侯爵家の方ですか」
「ああ。カリスター侯爵からはちょっと前に御子息の訪問許可の手紙が来ていたんだ。二人のお祝いを届けたいという内容に断ることも出来ないからね」
「分かりました。勿論僕が傍でエミーを守ります」
「その前に、わたくし、弟と言われても本当に自分の弟かどうか分からないわ。それに、二人いるにはいるのだけれど、どっちかしら?」
「あっ、そうそう、一番下の弟君で名前はマイルズ君と言うそうだ。侯爵も分かっているんだろう、特徴も書いてあったよ」
夫婦になって日は浅いが、エミーリアとアルバートはピッタリのタイミングで顔を見合わせて互いに小首を傾げたのだった。
「じゃあこんなに可愛いお嫁さんなのにお式をしてないのね」
「はい。ですので、こちらで直ぐに挙げたいと思っています」
「あら、ドレスを仕立てるのに時間はそれなりにいるわよ」
「それが、その」
アルバートにしては歯切れの悪い物言いにアルバートの叔父であるランスタル伯爵夫妻もエミーリアも不思議に思った。
「その、夫婦になった日の夜に、達成感というか、到達感というか、そうなので、えっと、多分、種付けをしてしまったと思われますので、急がないと、エミーの腹が」
「アル、男は、その、そういうときは、達成感に溢れるんだ。かと言って」
「もう、あなた達、何を言っているの。エミーが卒倒しそうなことを言わないの」
しかし、養子縁組の申請も無事に終わった頃、本当にエミーリアは妊娠していることが判明した。
「ですから、言ったじゃないですか。なんとなく手応えがあったんです。あ、手ではなく、その」
「もう、アル、それ以上は言わないで」
伯爵夫妻は迎えいれた甥夫婦の仲睦まじい姿に喜びつつも、大切なことを切り出すタイミングを窺った。
「エミー、今日はお客様がお見えになるんだが、体調は大丈夫だろうか」
「はい。どなた様でしょうか?まだ妊娠が分かっただけですもの、ご挨拶は問題なく出来ますわ」
「それが、実は、君の弟君がいらっしゃる」
「弟?」
「義父上、それは、カリスター侯爵家の方ですか」
「ああ。カリスター侯爵からはちょっと前に御子息の訪問許可の手紙が来ていたんだ。二人のお祝いを届けたいという内容に断ることも出来ないからね」
「分かりました。勿論僕が傍でエミーを守ります」
「その前に、わたくし、弟と言われても本当に自分の弟かどうか分からないわ。それに、二人いるにはいるのだけれど、どっちかしら?」
「あっ、そうそう、一番下の弟君で名前はマイルズ君と言うそうだ。侯爵も分かっているんだろう、特徴も書いてあったよ」
夫婦になって日は浅いが、エミーリアとアルバートはピッタリのタイミングで顔を見合わせて互いに小首を傾げたのだった。
85
あなたにおすすめの小説
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
婚約破棄されたその後は、何も起きない日々でした
ふわふわ
恋愛
婚約破棄――
それは、多くの令嬢にとって人生を揺るがす一大事件。
けれど彼女は、泣き叫ぶことも、復讐に走ることもなかった。
「……では、私は日常に戻ります」
派手なざまぁも、劇的な逆転劇もない。
彼女が選んだのは、線を引き、基準を守り、同じ判断を繰り返すこと。
王宮では改革が進み、領地では生活が整えられていく。
誰かが声高に称えられることもなく、
誰かが悪役として裁かれることもない。
それでも――
混乱は起きず、争いは減り、
人々は「明日も今日と同じである」ことを疑わなくなっていく。
選ばない勇気。
変えない決断。
名を残さず、英雄にならない覚悟。
これは、
婚約破棄をきっかけに
静かに日常を守り続けた一人の令嬢と、
その周囲が“当たり前”を取り戻していく物語。
派手ではない。
けれど、確かに強い。
――それでも、日常は続く。
お姉さまは最愛の人と結ばれない。
りつ
恋愛
――なぜならわたしが奪うから。
正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる