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それから数日、アルバートは朝も昼も夜も優しかった。厳密に言うと夜は優しいけれど、意地悪も多い、だが。そしてそれは、スプラルタ王国の叔父夫婦の邸に到着しても続いた。

「じゃあこんなに可愛いお嫁さんなのにお式をしてないのね」
「はい。ですので、こちらで直ぐに挙げたいと思っています」
「あら、ドレスを仕立てるのに時間はそれなりにいるわよ」
「それが、その」

アルバートにしては歯切れの悪い物言いにアルバートの叔父であるランスタル伯爵夫妻もエミーリアも不思議に思った。

「その、夫婦になった日の夜に、達成感というか、到達感というか、そうなので、えっと、多分、種付けをしてしまったと思われますので、急がないと、エミーの腹が」
「アル、男は、その、そういうときは、達成感に溢れるんだ。かと言って」
「もう、あなた達、何を言っているの。エミーが卒倒しそうなことを言わないの」


しかし、養子縁組の申請も無事に終わった頃、本当にエミーリアは妊娠していることが判明した。
「ですから、言ったじゃないですか。なんとなく手応えがあったんです。あ、手ではなく、その」
「もう、アル、それ以上は言わないで」
伯爵夫妻は迎えいれた甥夫婦の仲睦まじい姿に喜びつつも、大切なことを切り出すタイミングを窺った。

「エミー、今日はお客様がお見えになるんだが、体調は大丈夫だろうか」
「はい。どなた様でしょうか?まだ妊娠が分かっただけですもの、ご挨拶は問題なく出来ますわ」
「それが、実は、君の弟君がいらっしゃる」
「弟?」
「義父上、それは、カリスター侯爵家の方ですか」
「ああ。カリスター侯爵からはちょっと前に御子息の訪問許可の手紙が来ていたんだ。二人のお祝いを届けたいという内容に断ることも出来ないからね」
「分かりました。勿論僕が傍でエミーを守ります」
「その前に、わたくし、弟と言われても本当に自分の弟かどうか分からないわ。それに、二人いるにはいるのだけれど、どっちかしら?」
「あっ、そうそう、一番下の弟君で名前はマイルズ君と言うそうだ。侯爵も分かっているんだろう、特徴も書いてあったよ」

夫婦になって日は浅いが、エミーリアとアルバートはピッタリのタイミングで顔を見合わせて互いに小首を傾げたのだった。
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