不死鳥の箱庭~無能だと追放されたが運命の不死鳥と契約して全てをやり直す~

鴉真似≪アマネ≫

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第一章 不死鳥契約

4話 眷族契約

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 リオンが自身の部屋に入って最初に感じたのはーー違和感。

 とりわけ、ベッド付近。

 リオンは専属侍女のアイリス以外に自身の部屋に立ち入ることを許可していない。
 そして、第一運命線から行動を共にしてきたリオンはアイリスの仕事の癖をすべて把握している。

 だからこそ気づけた小さな違和感。
 その違和感に従いベッド付近を探索すると、案の定妙な絡繰りが置かれていた。

(これは、着火の魔道具か? 何が目的か分からんが、小賢しい真似を)

「やるならもっと派手にやれ。どれ、私が手伝ってやろう」

 そう言って、リオンはニヤリと頬を歪ませる。
 そして、魔道具に魔力を注ぎ始める。

 元はただ火を起こすだけの魔道具。
 しかし想定外の魔力注入で内部の魔導回路がショートをし、着火装置に大きな火花が。

 そして、過剰な魔力によって損傷したガスチューブに引火しーー

 ーードッカン!!

 リオンの部屋を吹き飛ばした。

 ◆

「リオン坊ちゃま!?」

 リオンの部屋から爆発が起きて、最も早く駆け付けたのは近くにいたリーナだった。
 
 リーナが到着したころには火の手は既に燃え広がり、凄まじい熱気がリーナを襲う。

「坊ちゃま……」

 そんな業火に包まれた部屋を見て、リーナは思わず立ち尽くしてしまう。

 しかしそれも一瞬のこと。すぐさま魔力を身にまとい、リーナは火の中へ飛び込んだ。

「リオン坊ちゃま!! ゴホゴホ……どちらにいらっしゃいますか!?」

 魔力で身を守っているため火傷を負うことはないが、煙で呼吸がままならない。

 (一刻も早く坊ちゃまを……)

 そう思った瞬間。足元を誰かがしがみつく。

「坊ちゃま!?」

 それリオンだと瞬時に判断し、抱きかかえる。そして、火の中から飛び出る。

「はぁはぁはぁ……ふぅ、助かった。リーナ、礼を言う」
「坊ちゃま、ご無事ですか!?」
「あぁ、咄嗟に魔力で身を覆った。爆破のダメージはほとんどない」
「そ、そうですか。それは何よりです」

 リオンの無事を把握し、ひとまず落ち着くリーナ。
 しかし、同時に3歳で魔力を纏い身を守ったリオンの異常さに戦慄する。

「もうじき医者が来ますので、もう少々お待ちください」

 いくら魔力で体を守ったとはいえ、不安は残る。もしアンブロシア家の直系に万が一のことがあれば、幼鳳宮の使用人全員の首が物理的に飛びかねない。
 
 徐々に、騒ぎを聞きつけた使用人たちが集い始める。その中に、ディアークの教育係のロルフも含まれていた。

「リーナ、何事ですか!?」
「お爺様……それがーー」

 リーナは自分の知る情報を余すことなくロルフに伝える。
 リオンと魔力の修練を行っていたこと。
 リオンを部屋まで送り届けたこと。直後に部屋が爆発したこと。

 話を聞いたロルフは、すかさず膝をつきリオンに頭を垂れる。

「申し訳ございません、リオン坊ちゃま!! このような失態、申し開きようもございません」

 今幼鳳宮で最も位が高いのは、このロルフである。そのため、幼鳳宮で起こった事件はすべて彼の責任下にある。

 そのことはリーナも分かっているため、心配な眼差しをロルフに送る。

 そんな視線の中、リオンは徐に口を開く。
 
「ロルフ・アイヒベルク」
「っ!! っは!」
 
 その威容、ロルフは思わず背筋が伸びる。これが3歳の子供の威厳なのかと、恐れおののくばかりだ。

「私の部屋に何かが仕掛けられていた」
「っ!?」
「爆発で木端微塵になったが、仕掛けた者を必ず捉えよ。幼鳳宮の魔導防衛システムを使ってでも」
「承知いたしました。すぐに確認いたします!!」

 ーー魔導防衛システム

 アンブロシアだけでなく、他の御三家でも取り入れられている防衛システム。

 監視、警報、排除などなど。
 宮殿全体を覆うようほどの巨大な魔力場で、外部からの侵入を防ぐ。

 警報や排除システムが動作しなかったということは、下手人は内部の者だと分かる。
 であれば、宮殿全体を監視しているシステムコアを確認すれば、下手人の正体は簡単にわかる。

 さらに、このシステムはアンブロシアでは直系と一部の上層部にのみ共有されているため、下手人はシステムの存在を知らなかった可能性が高い。

 リオンが部屋を離れたのは3時間程度。誤魔化すほどの余裕はないはずだ。

「ロルフ・アイヒベルク。犯人が分かったら真っ先に私に報告するように。父上よりも先に、だ」
「っし、しかし……」

 ロルフはリオンの父、つまりアンブロシア家現当主の眷族。故に、主人に逆らうことは決して許されない。

 それはリオンも知っている。

「別に報告するなとは言っていない。ただ、犯人の正体如何によってはお家騒動になるかもしれない。その前に私が処理しよう」
「……リオン坊ちゃまは、下手人の正体に心当たりがおありで?」
「っふ、愚問だな。お前たちも心当たりぐらいあるんじゃないか? この幼鳳宮で私に敵愾心を持つのは一人だけだからな」
「……承知いたしました。システムの録画を確認後、すぐに坊ちゃまに報告いたします」
「あと録画玉も確保しておけ。万が一にも消されないように」
「もちろんでございます」

 この会話の直後、幼鳳宮の医務担当がやってきて、リオンは医務室へと運ばれた。

 その後、録画を確認したロルフは、密かにため息が零れるのだった。

 ◆

「リオン坊ちゃま!?」

 数時間後、医務室に突入してきたのはリオンの専属侍女・アイリスだった。
 医務室にはベッドに座らされたリオンと、その傍に座るリーナの姿があった。

「大丈夫ですか!? お部屋で爆発が起こったと聞いたです!」
「あぁ、私は無事だ。医者が言うにはかすり傷らしい」
「そう、ですか……ご無事で何よりです。取り乱してしまい、申し訳ないです」

 リオンの無事を確認すると、アイリスは胸を撫でおろす。
 しかし次の瞬間、リオンの前に跪く。

「わたしが宮殿を離れたばかりに。処罰はいかようにも、です」

 もともと専属侍女というのは、幼い雛鳥を守るためにアンブロシア本家から選ばれた者。
 
 それぞれが第六位階の実力を持ち、命を張ってアンブロシアの未来を守る役割が与えられている。

 にもかかわらず、アイリスはリオンの傍を離れ、宮殿の外へ出てしまった。本家に知られれば、何かしらの罰があってもおかしくはない。

「自覚はあるようですね、アイリス殿。リオン坊ちゃまを危険に晒したこと。それ相応の責任を取ってもらいます」
「申し開きようもないです」

 リーナにも叱られ、アイリスは一層失態を自覚する。

 態度にはこそ出ていたないが、長年見てきたリオンの目にはアイリスが分かりやすく落ち込んでいると分かった。

「よせ、リーナ。アイリスを外に送ったのは私だ。責任なら私にある」
「リオン坊ちゃま……お言葉ですが、坊ちゃまの命令といえど、主人を危険に晒したのはアイリス殿の失態です」
「坊ちゃま、リーナ殿の言う通りです。ここで甘い対応をされるべきではないです。どうか厳罰を、です」

 アイリスはリオンに庇われ嬉しそうにしているが、今後のことを考えてリオンに厳罰を求める。

「はぁ、息ぴったりだな、お前たちは」
「「…………」」

 リオンの評価に、二人共キョトンとした顔をして互いの顔を見つめ合う。

「まあ、仲がいいのは結構だがな……他の人間も出払ってわけだし、ちょうどいい。二人共、少し話がある」

 改まったように、リオンは二人に向き直る。
 その行動に、二人はさらに戸惑いを見せる。

「二人とも、私の眷族になる気はないか? もちろん、私の契約後にはなるが」
「「っ!?」」

 ーー眷族契約

 アンブロシア家では、不死鳥契約後の血族は眷族を持つことができる。

 血族から血を分けてもらうことで、眷族は不死鳥の力を一部引き継ぐ。
 同時に、主人となる血族に逆らうことができなくなるが。

 ロルフなどは現当主の眷族であるため、『焔の不死鳥』の力を一部引き出すことができるのだ。

「アイリスはもちろん、リーナも眷族契約はまだだと聞いている。だったら、私の眷族にならないか?」

 この誘いは、リオンにとっても緊張な瞬間である。第一運命線にはなかったこの行動。リオンでもその結末は知りえなかった。

 まだ幼いが、それなりの可能性は見せたつもりだ。
 だが、どんな不死鳥と契約するかもわからない三歳児の戯言に、二人はどこまで耳を貸すか。

(さあ、どうなる)

「「…………」」

 アイリスとリーナは再度顔を見合わせ、目をばたつかせる。

 そしてーー

「「こ、光栄です!!」」

 即答だった。リオンに誘われ、二人共喜色をあらわにする。
 それを見たリオンも、露骨に胸をなでおろす。
 
 こうして、幼いリオン・アンブロシアは2人の味方を獲得した。
 

 
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