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第49話 海デート

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《有間愁斗―視点》

 準備を終えた俺達は車に乗り込み出発した。目的地まではのんびり走って1時間半くらい。

 俺は車の運転が好きな方で、更に助手席には大好きな彼女が座っているわけだから自然とテンションが上ってしまう。

 高速道路を走っているとビルや建物が減っていき、代わりに畑や森が増えてくる。暫くそんな景色を眺めながら俺達は楽しく会話した。
 そして長い山道を抜けるとずっと先にどこまでも広がる青い海が見えた。

「わー、綺麗……海、見えましたね!」
「うん、良い景色だな……」
「そうですね。ああ、早く着かないかなぁ。待ち切れないよぉ」
「あと20分くらいだよ。日曜で高速空いてたら思ったより早く来れたな」
「うん、空いてましたね!ヤバい!海楽しみすぎる!」
「あははは、紫陽花、子供みたいだな」
「だって――」

 助手席で子供の様にはしゃぐ紫陽花、めちゃくちゃ楽しんでくれているのが良くわかる。
 俺達に子供がいたら一緒に大はしゃぎしそうだな。




 海に着いた。

 熱い太陽、焼けた白い砂浜、何処までも続く青い海。

 到着したのが昼前ということもあり、ずっと続く長いビーチの端の方しか駐車場が空いていなかった。
 今日は休日で海水浴客がそれなりに多いがこの辺りは海の家から遠い。ビーチにレジャーシートを敷いて陣取る人の数はまばらでお隣との距離も結構離れている。

 後から知ることになるのだが、実はこの場所、人が少ない理由が他にもあった。それは離岸流である。駐車場に注意喚起の看板があったのに俺はそれを見逃していた。




 海の家が遠くてちょっと不便だけど人が少なくてのんびりできるから、まぁいいか。

 俺は砂浜にレジャーシートとパラソル、折畳みテントを準備して、飲み物が入ったクーラーボックスや荷物を運び、浮輪をふくらまし終えた。

 紫陽花遅いな……海の家の更衣室で着替えてくるって言ってたけど。
 そう言えば駐車場に公衆トイレと無料シャワーがあったな。あそこで着替えられるんじゃないかな?

 あの子、スマホ車に忘れていったんだよな。ちょっと海の家の方に見に行ってみるか。


 小走りで海の家に向かっていると紫陽花を発見した。
 まだ着替えていない。紫陽花の横にはチャラそうな金髪で褐色肌の男が二人いて何か話している。

「ねぇーねぇー、君マジで可愛いから俺達と遊んでよぉ~」
「え?つか、ほんとマジ可愛いじゃん。今日一っしょ」
「いや、そんなレベルじゃないって、千葉一じゃね?」
「え?つか、日本一?優勝?」

 ナンパされてるのか。

 俺は急いで紫陽花の前に出ると。

「俺のツレなんで、もういいですかね?」

 チャラ男どもを睨み付けた。

「彼氏いんのかよ?」
「え?つか、俺らの方がイケてるっしょ?」
「だよな、夏なんだし彼氏乗り換えじゃねw」

 すると紫陽花が。

「この人は彼氏じゃなくて……」

 え?俺、彼氏じゃないの?と思ったら――。

「この人は私の旦那さんですっ!あと、主人の方が全然かっこいいです!行こ、アナタ」

 俺達結婚してるぅううううう!?
 紫陽花は俺の手を引っ張り歩き出した。

 男達の横を通り過ぎると後ろで彼等が……「え?つか、人妻?マジ?」「あの旦那幸せ過ぎだろ!」って言っていた。

 手を繋いで、俺の横を歩く紫陽花が機嫌悪そうに言う。

「さっきので三回目なんです」
「え?三回?」
「海に着いてからナンパされたの……」

 こんな短時間に三回も!?この海どうなってるの!?おかしいでしょ!?いや紫陽花が可愛い過ぎなのか!

「車停めた駐車場の公衆トイレで着替えられそうだったよ」
「そっちで着替えます。さっきの人達、ちょっと恐かったので……助けてくれてありがとうございます……」
「まぁ俺は……旦那だから妻を助けるのは当然だよ」
「妻!ふふふふっ。今日は有間さんの傍から離れたくないな」

 それから俺達は駐車場まで戻ってきた。
 そして、トイレ前のベンチに座って着替えを待っていると。

「お待たせしました」

 照りつける日差しに目を細め、声の方に視線をやる。
 ピンクの花のアクセが付いた白いビーチサンダルが視界に入った。細くて綺麗な素足には砂が張り付いている。

 俺は視線を上げる。

 紫陽花の水着は以前、俺がプレゼントしたものでスリムでスタイルの良い彼女に良く似合っていた。
 今日は下ろしたサラサラの長い黒髪が潮風で揺れている。

 顔はまだ大人になり切れていない幼さというか、あどけなさを残していて、俺を待たせて申し訳なさそいうにしている表情も可愛くて本当に綺麗な子だと思った。……絵に書いたような美少女だ。

「水着似合ってて可愛いよ」
「有間さんがくれたヤツです。私も凄く気に入ってます。えへへへへ」

 笑うと更に可愛い。こんな子を一人占めできる俺は幸せ者だ。



 俺達のレジャーシートに戻って来ると。

「すみません、車の運転も大変だったのに全部やってもらっちゃって、……私も水着着てくればよかったな」
「車、すぐ近くに停められたから全然、大丈夫だったよ」

 俺の水着はハーフパンツみたいなのだから家から着てきた。Tシャツとサンダルもそのままで車を降りて直に準備を開始したのだ。

「あと……、その……」
「ん?」

 言い辛そうになんだろう?

「日焼け止め、背中だけ塗ってもらえませんか?」
「う、うん」

 彼女と海デートでお決まりのヤツ!

 紫陽花はパラソルの日陰に座って綺麗な黒髪を持ち上げる。
 俺は渡されたサンオイルを手に馴染ませて彼女の背中に触れた。

 こうして明るい所で、間近で体を見ると華奢なのに女性らしい肉がしっかり付いていて、きめ細かいツルツルスベスベの美肌で、18歳ってスペックが色々ヤバいな。


「次は有間さんの番ですよ!私が塗ります」
「え!い、いや、お、俺は自分で塗るから」
「ダメです!私が全身塗ります!」

 オイルでヌルヌルになった紫陽花の可愛らしい手が俺の全身をもてあそぶ。

 あああああああーーッ!
 いやぁああああーーッ!
 あふん!





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