【本編完結】死んだあとに運命だと言われても、

社菘

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第4章

5 *

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その日の夜、また変な夢を見た。

「ん、んん……」

体が熱い。

目覚めてからしばらくは大丈夫だったのに、寝ようと思って目を瞑ってから数時間後。いつものヒートの時のように体が重く、熱を孕んでいるのを感じた。

「ぅ、あ……?」

目も開けられないし体も動かない。
ただ、違和感だけは分かる。

今まで夢でもそんなことはなかったのに、体中を誰かに触られている夢を見たのだ。

実際に体を触られた経験なんてないのだが、自分が触って『気持ちいい』と感じるところを的確に触ってくる謎の快感の波にノエルは小さく呻き声を上げた。

――くちゅ、くちゅ

はしたない水音が静かな部屋に響き渡って、今すぐ耳を塞ぎたいのにそうできない。体が動かないままだらんと四肢の力が抜けている状態のノエルは、よく分からない快感に身を任せるしかなかった。

「あ…っ、い、やぁ……っ」

敏感な性器を上下に扱かれると、まるで自分のものとは思えないほど甘い声が漏れる。

最初は優しく触ってくれていた大きな手の動きがだんだん早くなっていき、ノエルの熱も昂ってきた。そしてあろうことか、知らない人の手の中に精を吐き出してしまったのだ。

「ふ、ぅ…やめて、もうしないでぇ……」

生理的な涙を流しながらそう訴えてみるが、大きな手はノエルの性器から吐き出したものを潤滑剤にし、再びゆるゆると上下に動かし始めた。

連続で与えられる刺激にノエルは奥歯を噛み締め、柔らかい枕に顔を押し付けて堪える。でも、与えられる大きな刺激を逃す方法が分からず、開いた口からはただただ甘い嬌声が漏れるだけだった。

達したばかりで普段の何倍も敏感になっているソコも、人の手で初めて触られた衝撃も耐えがえたいもので、ノエルは冷たいシーツをぎゅっと握りしめて再び絶頂を迎えた。

「はぁ、は……ッ」

乱れた息を整えていると、寝巻きの隙間からするりと大きな手が侵入してくる。その手はいつの間にかぷっくりと立ち上がった胸の先端を指の腹で押し潰したり、指先で弾いたりして弄んだ。

「んや、それだめ……!」

だめ、と言って止めてくれるなら二回も精を吐き出したりしていない。

そしてあろうことか、ノエルが二回も精を吐き出してしまったもう片方の手がぐちゅりと音を立て、熱を受け入れる部分を円を描くように指でなぞられる。

自分でも分かるくらい、彼を受け入れたいと思ってヒクついているソコに指が侵入してくるのを、口では嫌だと言いながらも今か今かと待ち受けていた。

「いやら、も……レイシスさまぁ……っ!じらさな、で……」

うわ言のようにレイシスの名前を読んだ後、ハッと目を覚ました。

どくどくと脈打っている心臓。額から流れる汗。冷たいシーツを掴んでいる自分の手。

ノエルの着衣は乱れていて、はだけた胸元にはじんわりと汗をかいていた。あまりにもリアルすぎる夢だったので部屋の中に誰もいないかと見回してみたが、ノエル以外は誰もいなかった。

「……っう~、最悪だ……」

案の定というか仕方のないことだが、下着がどろどろのぐちゃぐちゃになっていた。こんな状態でルナから着替えさせてもらうわけにはいかず、かと言って自分で風呂の湯を沸かす方法さえ知らないから、やはり誰かの力を借りないといけない。

「ノエル様、ルナです。もうお目覚めでしょうか?」
「うわぁぁっ!」
「ど、どうされました!?」
「ち、ちが…!ちょっと今は入ってこないでくれ!」
「ノエル様!?」
「ルナ、汗をかいたから入浴の準備をしてほしい!あとは自分で入るから世話はしなくて大丈夫!」

ルナは不審がっていたが、なんとか説得して入浴の準備を整えてもらった。そしてなんとか一人で入浴し、汚れた下着も洗い流すことができたのだ。

「はぁ……あんな夢見るなんて」

ゆっくりお湯に浸かりながら破廉恥な夢のことを思い出す。

まるで『エーデ』の主人公たちみたいに、本能でそういう刺激を求めているようだった。実際にしたこともないのに、たかが刺激の強い絵本を読んだ知識だけで、よくあんなにリアルな夢を見られたものだ。

「相手、レイシス様だったのかな……」

目が覚める前、ノエルは自分の口からはっきりと「レイシス様」と呼んでいたのを思い出しては赤面し、もこもこ泡が浮かぶバスタブにずるりと沈んでいく。

「(レイシス様が手なんて握ってくるから!)」

ノエルが返事を迷っていなかったら本当は抱きしめられていただろう。

今でこそ繋いでいた手の温もりをすぐに思い出せるのだから、抱きしめられていたら前戯の夢だけでは済まなかった。

学園に通っている時の自分がレイシスと『性行為をする』なんて想像もしたことないし、死ぬ前のノエルとレイシスが最後にしたのはいつだったのか覚えていないほど随分期間が空いていた。

「子供相手になんて夢を見てるんだ、俺はぁ……!」

姿は18歳だが精神年齢は31歳のノエル。若い時の婚約者を性的な目で見るなんて、あまりにも自分がダメな大人すぎて目眩がした。

これはまた言い訳だけれど、手を繋いだときにホッとしたようなレイシスの顔と、ノエルの名前を優しく呼ぶ声がヒート期間中に肌を重ねた時のような声だったので、無意識のうちに思い出して夢に反映してしまったのだろう。

夢の中で実際に相手を見たわけではないけれど、夢というのはある程度自分の願望が反映されるものだ。心のどこかでレイシスのことを求めているのかと思うと、とても恐ろしくて背筋がぞわりと粟立った。

「ノエル様、なんだかお目覚めの時からぽーっとしていらっしゃいますね」
「んぇ……?」
「大丈夫ですか?体調が悪いならお医者様をお呼びしましょうか」
「いや、ううん、大丈夫。ヒートのせいだと思うから気にしないで……今日、レイシス様が来ても部屋には通さないでもらえる?」
「え?」
「ヒートがぶり返してきたみたいだから、念のため。一日中寝てたって伝えて」
「かしこまりました」

体が熱を持っているのは嘘ではない。通常のヒートのように行き場のない熱と欲が体内に溜まっている感じがして、ノエルは重くため息をついた。

レイシスはアルファをオメガのフェロモンに耐えられないバカだと言っていたが、オメガの自分だって割と虚しくバカな生き物だと思う。

「……俺だって、アルファを欲してる自分が怖い…」

『オメガは神の使い』なんて言われているけれど。

実際のところ獣の本能を隠しているだけの自分の性に、ノエルは「神様には見せられない、醜い姿だな……」と呟いて苦笑した。


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