【完結】君を上手に振る方法

社菘

文字の大きさ
33 / 41
4.冬

しおりを挟む


 終業式の日、春陽先輩は本当に来ていなかった。

 志鶴先輩から事情は聞いたものの、僕には言うなと口止めをされていたようなので連絡することもできない。ただ、僕が冬休みに入ってから唯一気になっていることがあるとすれば――

「恵、クリスマスどうする?」
「もちろん、彼女いない男4人で寂しくカラオケ行くよなっ?」
「いや、クリスマスは……イブなら空いてる」
「はーっ!? 25日はデートの予定でも入ってんの!?」
「そういうわけじゃないけど、用事」
「それをデートって言うんだろー!?」

 蛍がポカポカ殴ってきて、それを衛が止めに入ってくれた。殴られた背中をさすりながら「本当に、デートってわけじゃなくて……」と自分で言っていて虚しくなってくる。

 なんせ、25日は春陽先輩の誕生日。夏休み、二人で夕暮れの海に行ったときに先輩の誕生日を知って、体育祭のあとに12月25日は僕が先輩の誕生日をお祝いしたい、と約束した日だ。

 先輩はそんなこととっくに忘れているか、覚えていてもフランスにいるのなら約束は無効になるだろう。

 でもその日は勇気を出してお祝いのメッセージを送ってみようと思っているし、少しの期待を込めて予定を空けておきたいのだ。

 それを蛍にはデートだと誤解されてしまったけれど、大我には『何か』分かったらしい。肩をぽんぽん叩かれて「頑張れよ」と言ってくれて、俺は小さく頷いた。

 冬休みの課題はものの1週間足らずで終わらせた。夏休みに鍛えたおかげか、効率のいい勉強法というのを身につけたからだ。

「恵、お前変わったなぁ」
「は? どんなところが?」
「真面目に勉強するようになったし、前みたいにゲーム廃人じゃないとこ」
「……兄さんは僕を何だと思ってんの?」

 2歳年上の兄・るいが僕のベッドに寝そべりながらお菓子を食べている横で、俺は真面目に教科書を広げていた。

「好きな人でもできた? それとも付き合ってる人の影響とか?」
「うるさい、そんなのいない」
「うっそだー。夏休みに1週間も泊まりに行った“友達”なんて、兄ちゃんは信じてないぞ」
「プライバシーの侵害」
「俺はお兄ちゃんだから許されるのである」
「はぁ……」

 兄さんと僕の性格は真逆だ。どちらかといえば兄さんは大我と似ていて、いつも笑っている明るい人気者。春陽先輩とはまた違う種類のイケメンで、同じ中学の時は兄さんがモテている姿をよく見ていた。

 今は同じ高校ではなく兄さんはバスケの特待生として強豪校に進学しているから、学校での兄さんは知らない。でもどうせファンクラブができていたり、春陽先輩のように毎日告白とかされているのだろう。兄さんを好きな人たちが、弟の部屋で寝そべってポテチを食べながら漫画読んでる姿を見たら幻滅するだろうな。

「クリスマスはどうすんの?」
「24日は大我たちと遊びに行くけど」
「25日は?」
「……何で兄さんに教えないといけないのさ」
「何も予定がないなら久しぶりに俺とゲーセンとか行く? ファミレスでご飯食べて、帰りはケーキでも買って帰るか」
「兄さんと出かける予定は僕にはないから」
「えー。やっぱり怪しい。デート?」
「……そんなんじゃないし」

 じゃあ、どうして25日の予定を空けるんだ、と問われたら何も言えないけれど。

 あの日は先輩と口約束をしただけで、何時にどこで待ち合わせとかを具体的に決めているわけじゃない。ただ、待つだけなら個人の自由だろう。

「恵がそんな顔をするくらい大事な人なら、クリスマスに会えたらいいな」
「え?」
「ははっ、お前って昔から全部の感情が顔に出るから」
「は!? そんなことない」
「そんなことある。俺はお兄ちゃんだから何でも分かるのである」
「ムカつく……」

 子供だなと思われているのだろう。ニヤニヤしてる兄さんの足を叩くと「おい! 有望バスケ選手の足だぞ!?」と喚いていたけれど、知ったこっちゃない。

 そこではたと気がついた。兄さんと大我に僕の態度で多少気づかれたということは、もしかして春陽先輩も僕の『本気の気持ち』に気づいてしまったから、距離を置いたのかも――?

 だから志鶴先輩に行き先の口止めをして、今までのことをなかったことにしようとしているのではないか?

「うおっ、なに? なんでいきなり落ち込んだ!?」
「もういやだ、僕には何も分からない……」
「少年よ、そうやって大人になっていくのだ」
「うるさい……」

 兄さんの下手な慰めには溜め息しか出てこなかった。

「大我たちとはどこに行くの?」
「カラオケって言ってたかな」
「へー! じゃあ俺らとも会うかもな」
「俺らって? 兄さんも出かけるの?」
「うん。バスケ部で! 今回は後輩も交えて」
「ふうん……僕なら絶対行きたくないけど」
「そういえば、今年入ってきた1年に恵とそっくりな無気力系男子がいるんだよ。あいつもそう言ってた」
「そりゃ、僕と気が合いそうだね」
「綺麗な顔しててさー。確かクウォーターとか言ってたかな」
「……クウォーター?」
「そう。じいちゃんがフランス人とかなんとか」

 確か、兄さんの通ってる学校は県内有数のバスケ強豪校で、色んなところから生徒が集まってくる。そして、寮がある。兄さんは冬休みに入ったから実家に帰省しているのだ。

 それらの情報が頭の中を駆け巡り、カチッとピースがはまった感じがした。

「……その人の話、詳しく聞かせてくれない?」

 もしかしたら、もしかするのかも――!?


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~

夕凪ゆな
BL
「来週の木曜日、少しだけ僕に時間をくれないか」  学園の太陽と慕われるセオドリックは、副会長レイモンドに告げた。  というのも、来たる木曜日はレイモンドの誕生日。セオドリックは、密かに、彼を祝うサプライズを画策していたのだ。  しかし、レイモンドはあっさりと断る。 「……木曜は、予定がある」  レイモンドをどうしても祝いたいセオドリックと、独りで過ごしたいレイモンド。  果たして、セオドリックのサプライズは成功するのか――? 【オムニバス形式の作品です】 ※小説家になろう、エブリスタでも連載中 ※全28話完結済み

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

「呪いを解くには毎日可愛いと言ってください」と嘘をついたら、氷の聖騎士様が本気で口説きにかかってきました

たら昆布
BL
間違って呪われた青年と呪いを解除したい騎士の話 番外編はその友達たちの話

とあるΩ達の試練

如月圭
BL
 吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。  この話はフィクションです。更新は、不定期です。

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

君の1番にならせて‼︎

小麦
BL
【ツンデレ一途微執着年下攻め×無意識翻弄鈍感年上受けの幼馴染BL】  高2の夏希には学校に憧れであり推しの男子がいる。その男子の恋路を応援したものの、推しが幼馴染と付き合い始めたのを見て夏希はショックを受ける。  そんな夏希は、推しの彼女の弟であるもう1人の幼馴染・晴に話を聞いてもらうことにする。1つ歳下でツンデレ気味な晴が不機嫌ながらに夏希に告げた言葉は──?

腐男子ですが何か?

みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。 ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。 そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。 幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。 そしてついに高校入試の試験。 見事特待生と首席をもぎとったのだ。 「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ! って。え? 首席って…めっちゃ目立つくねぇ?! やっちまったぁ!!」 この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

処理中です...