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4.冬
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しおりを挟む終業式の日、春陽先輩は本当に来ていなかった。
志鶴先輩から事情は聞いたものの、僕には言うなと口止めをされていたようなので連絡することもできない。ただ、僕が冬休みに入ってから唯一気になっていることがあるとすれば――
「恵、クリスマスどうする?」
「もちろん、彼女いない男4人で寂しくカラオケ行くよなっ?」
「いや、クリスマスは……イブなら空いてる」
「はーっ!? 25日はデートの予定でも入ってんの!?」
「そういうわけじゃないけど、用事」
「それをデートって言うんだろー!?」
蛍がポカポカ殴ってきて、それを衛が止めに入ってくれた。殴られた背中をさすりながら「本当に、デートってわけじゃなくて……」と自分で言っていて虚しくなってくる。
なんせ、25日は春陽先輩の誕生日。夏休み、二人で夕暮れの海に行ったときに先輩の誕生日を知って、体育祭のあとに12月25日は僕が先輩の誕生日をお祝いしたい、と約束した日だ。
先輩はそんなこととっくに忘れているか、覚えていてもフランスにいるのなら約束は無効になるだろう。
でもその日は勇気を出してお祝いのメッセージを送ってみようと思っているし、少しの期待を込めて予定を空けておきたいのだ。
それを蛍にはデートだと誤解されてしまったけれど、大我には『何か』分かったらしい。肩をぽんぽん叩かれて「頑張れよ」と言ってくれて、俺は小さく頷いた。
冬休みの課題はものの1週間足らずで終わらせた。夏休みに鍛えたおかげか、効率のいい勉強法というのを身につけたからだ。
「恵、お前変わったなぁ」
「は? どんなところが?」
「真面目に勉強するようになったし、前みたいにゲーム廃人じゃないとこ」
「……兄さんは僕を何だと思ってんの?」
2歳年上の兄・類が僕のベッドに寝そべりながらお菓子を食べている横で、俺は真面目に教科書を広げていた。
「好きな人でもできた? それとも付き合ってる人の影響とか?」
「うるさい、そんなのいない」
「うっそだー。夏休みに1週間も泊まりに行った“友達”なんて、兄ちゃんは信じてないぞ」
「プライバシーの侵害」
「俺はお兄ちゃんだから許されるのである」
「はぁ……」
兄さんと僕の性格は真逆だ。どちらかといえば兄さんは大我と似ていて、いつも笑っている明るい人気者。春陽先輩とはまた違う種類のイケメンで、同じ中学の時は兄さんがモテている姿をよく見ていた。
今は同じ高校ではなく兄さんはバスケの特待生として強豪校に進学しているから、学校での兄さんは知らない。でもどうせファンクラブができていたり、春陽先輩のように毎日告白とかされているのだろう。兄さんを好きな人たちが、弟の部屋で寝そべってポテチを食べながら漫画読んでる姿を見たら幻滅するだろうな。
「クリスマスはどうすんの?」
「24日は大我たちと遊びに行くけど」
「25日は?」
「……何で兄さんに教えないといけないのさ」
「何も予定がないなら久しぶりに俺とゲーセンとか行く? ファミレスでご飯食べて、帰りはケーキでも買って帰るか」
「兄さんと出かける予定は僕にはないから」
「えー。やっぱり怪しい。デート?」
「……そんなんじゃないし」
じゃあ、どうして25日の予定を空けるんだ、と問われたら何も言えないけれど。
あの日は先輩と口約束をしただけで、何時にどこで待ち合わせとかを具体的に決めているわけじゃない。ただ、待つだけなら個人の自由だろう。
「恵がそんな顔をするくらい大事な人なら、クリスマスに会えたらいいな」
「え?」
「ははっ、お前って昔から全部の感情が顔に出るから」
「は!? そんなことない」
「そんなことある。俺はお兄ちゃんだから何でも分かるのである」
「ムカつく……」
子供だなと思われているのだろう。ニヤニヤしてる兄さんの足を叩くと「おい! 有望バスケ選手の足だぞ!?」と喚いていたけれど、知ったこっちゃない。
そこではたと気がついた。兄さんと大我に僕の態度で多少気づかれたということは、もしかして春陽先輩も僕の『本気の気持ち』に気づいてしまったから、距離を置いたのかも――?
だから志鶴先輩に行き先の口止めをして、今までのことをなかったことにしようとしているのではないか?
「うおっ、なに? なんでいきなり落ち込んだ!?」
「もういやだ、僕には何も分からない……」
「少年よ、そうやって大人になっていくのだ」
「うるさい……」
兄さんの下手な慰めには溜め息しか出てこなかった。
「大我たちとはどこに行くの?」
「カラオケって言ってたかな」
「へー! じゃあ俺らとも会うかもな」
「俺らって? 兄さんも出かけるの?」
「うん。バスケ部で! 今回は後輩も交えて」
「ふうん……僕なら絶対行きたくないけど」
「そういえば、今年入ってきた1年に恵とそっくりな無気力系男子がいるんだよ。あいつもそう言ってた」
「そりゃ、僕と気が合いそうだね」
「綺麗な顔しててさー。確かクウォーターとか言ってたかな」
「……クウォーター?」
「そう。じいちゃんがフランス人とかなんとか」
確か、兄さんの通ってる学校は県内有数のバスケ強豪校で、色んなところから生徒が集まってくる。そして、寮がある。兄さんは冬休みに入ったから実家に帰省しているのだ。
それらの情報が頭の中を駆け巡り、カチッとピースがはまった感じがした。
「……その人の話、詳しく聞かせてくれない?」
もしかしたら、もしかするのかも――!?
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