【完結】君を上手に振る方法

社菘

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4.冬

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「――3年の先輩に呼び出されるって、めちゃくちゃ怖いんですけど?」
「本当にごめんな、木虎。なんかうちの弟が会いたいって言うもんだから」

 24日、クリスマスイブ。僕と兄さんはそれぞれの約束の時間より前に、兄さんが通っている高校の1年生・木虎千冬ことらちふゆをカフェに呼び出した。

 会ってみて驚いたのは、春陽先輩とそっくりだったこと。ただ、バスケの強豪校に入学しているだけあって背が高い。雰囲気は全く春陽先輩とは異なっていた。

「僕、春陽先輩の後輩なんです」
「……春陽の? 後輩ってなに、部活はやってないはずだけど。バイト? それとも生徒会? 生徒会も辞めたって言ってたから違うとは思うけど」
「部活とかバイト関係で知り合ったわけではなくて、ゲームで意気投合して仲良くさせてもらってました」
「ゲーム? ああ……夏休みに帰ったら新しいソフトあったけど、もしかしてあれ?」
「二人でするゲームのことなら、そうです」
「ふーん。で、そんな後輩さんが何で僕のこと呼び出したの?」

 雰囲気がどことなく志鶴先輩と似ている。もしかしたらこの人も属性的には志鶴先輩と同じで、春陽先輩を狙う輩の排除を目的としていそうに見えた。

 なんせ、僕を上から下まで眺める様子はまるで見定められているような視線だったからだ。

「春陽先輩はしばらく学校に来ないって聞いて……いつ頃帰ってくるのかをお聞きしたかったんです」
「もしかしてあんた、春陽のストーカー?」
「えっ!?」
「恵、お兄ちゃんはそんなこと聞いてないぞ!」
「いや、違う違う、違います! ストーカーとかそういうことでは決してないです!」
「じゃあ何が目的? 春陽と仲いいなら直接連絡したほうが早いんじゃないの?」
「その、色々あって……連絡は無視されるかもと思いまして……」
「……はぁ? やっぱりお前、ただのストーカーじゃねーか!」
「違うんです、違うんです! 本当にストーカーではないんです!」

 あまりにも行動的になりすぎた――

 先輩との関係も詳しく話せないのに、帰ってくる日を知りたいとか連絡は無視されそうなんて言ったら、そりゃあ僕が千冬さんの立場でもストーカーだと疑うだろう。

「本当に、その! 先輩の誕生日に会う約束をしていたんですけど、僕が前に怒らせちゃったから気まずくて! 明日会えるかどうか分からなくて、千冬さんに来てもらったんです……!」
「……もしかして、夏休みに春陽と線香花火やった奴ってあんた?」
「え? あ、えっと……海に行ったときにしました、ね」
「はぁ、お前かよ……」

 線香花火をしたことが何か問題だったのだろうか?

 千冬さんは重く溜息をついて、サラサラの黒髪を掻き回す。難しい顔をしながらうんうん唸り、やがて「明日、一日中春陽のバイト先で待ってろ」と呟いた。

「春陽先輩のバイト先って、あのカフェですか?」
「それを知ってんなら、やっぱりお前が本物か……」
「どういう意味?」
「とにかく。開店と同時に店に行って、補導される時間ギリギリまで待て。いいな?」
「それって一日中カフェにいろってこと!?」
「はぁ? 嫌なのかよ? 春陽に会いたいんじゃないの?」
「い、嫌とは言ってないけど! でも本当に春陽先輩と会える保証は!?」
「そんなの僕が保証できるかよ。お前の運が良ければ、だけど」
「運……!?」

 千冬さんの言っていることは半分も理解できていない。でもとりあえず、明日の僕は夏休み前に行った春陽先輩のバイト先に行って、彼を一日中待つこと。

 今の僕にはそれしか選択肢がないし、少しでも会える可能性があるのなら待ちたい。

 本当はフランスまで迎えに行けたら一番いいんだろうけど、高校生の僕にはそんなお金もないし、フランス語も英語もできないから難しい。心底情けないと思いながら、それでも春陽先輩の誕生日は特別だから奇跡が起こることを願いたいのだ。

「……分かった。千冬さんの言う通り、明日は店のオープンと同時に待ってみる」
「ふん。僕が意地悪言ってたらどうすんの」
「だとしたら、千冬さんにからかわれただけなんだなって分かるから」
「……」
「待たないで後悔するより、待って後悔したほうが何倍もいい。可能性があるのなら僕はそれに賭けたい」
「あっそ……まぁ、ご自由にどうぞ」

 それだけ言い残し、千冬さんは店を出て行った。仲介してくれた兄さんは「何が何だか……」と呆けていたけれど、そっちのフォローをしている暇は僕にはない。

 今から大我たちと会う予定なのに、明日のスケジュールと春陽先輩のことだけが僕の頭の中を占めていた。


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