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4.冬
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しおりを挟むそして、あれよあれよという間にすっかりクリスマスイブは過ぎ去っていて、クリスマス――春陽先輩の誕生日の朝になっていた。
誕生日おめでとうございます、くらいメッセージを送ろうと思ったけど、もしも会える可能性があるのなら顔を見て直接言いたい。
たった少しの可能性に縋りたいほど、今の僕は春陽先輩に会って話をしたかった。
「けーいー、本当に行くのか?」
「うん。千冬さんがせっかく教えてくれたし」
「嘘かもしれないのに?」
「嘘だったら、嘘だったんだなって分かるから」
「ふーん……まじで変わったな、お前」
「え?」
「いや。まぁ、忠犬ハチ公のごとく待ってみろ。お前はうさぎだけど」
「うわっ、やめろって……!」
家を出る前、靴を履いている僕の頭を兄さんがぐしゃぐしゃ掻き回す。一応、色んなスタイリング写真を見て不器用ながらも苦労してセットしたのに、兄さんの行動で一瞬で崩れ去った。
兄さんの手を振り払って外に出ると、雪こそ降っていないものの肌が切り裂かれそうな寒さだった。はぁ、と息を吐くと瞬時に白くなり宙に溶けていく様子を見ると、本格的に冬がきたのだなと感じる。
黒いマフラーを首にしっかり巻いて、コートのポケットに手を突っ込んだまま歩き出した。街に近づくにつれてクリスマスの雰囲気に変わってきて、まだ朝だというのに店頭に立ってクリスマスケーキを販売している人や、クリスマスを楽しむためにこれから出かけるのであろうカップル、お父さんに抱っこされてはしゃぐ子供がいる家族連れ。
その中で、なんだか俺だけがこの世界から切り取られたようで、一人ぼっちのように思えた。
「いらっしゃいませ。……あ、君ってもしかして宇佐美くん?」
「えっ、はい、そうですけど……どうして名前を?」
「実は昨日、千冬くんから連絡があったんだよね。前に春陽くんと一緒に来てくれたのも覚えてたし」
出迎えてくれたカフェの店員はこの店の店長らしい。夏休みに春陽先輩と来た時にもいた人だったみたいで、俺のことを覚えていてくれたと話してくれた。
なんせ、春陽先輩が誰かを連れてきたのは初めてだったと。もちろん志鶴先輩たちは来たことがあったみたいだけど、それ以外で春陽先輩が自ら『親しい』人を連れてきたのは初めてだから覚えていたと店長さんは笑っていた。
「千冬くんに、朝から晩までここで待てって言われたんだって?」
「はい、実は……。いても大丈夫ですか? もちろん注文はその都度するつもりです」
「もちろん大丈夫だよ。店の隅っこの席だと、他のお客さんを気にせずに待てるかも」
「ありがとうございます」
ホットカフェラテを注文して、店長さんがおすすめしてくれた店の隅っこの席を陣取った。暇を潰すためにゲームやら普段読まない本やら持ってきたので、時間が許す限りはここで過ごさせてもらうつもりだ。
「春陽くんと喧嘩でもしたのかい?」
「あー……喧嘩というか、いざこざというか……前みたいに話せなくなっちゃって」
「それって10月頃? 文化祭らへんだった?」
「そうですけど……先輩が何か言ってましたか?」
「言ってたわけじゃないんだけど、夏休み明けから受験のためにバイトに入る日を減らしてたんだけどね。突然お客さんとしてここに来て、この席に座ってずっと泣いてたことがあるんだよ」
「え……春陽先輩が?」
「うん。大丈夫か聞いても大丈夫だって言うから、それ以上はどうしようもなくて」
先輩が一人で泣いていたという話を聞いて心が痛むのと同時に、後悔に襲われた。先輩から距離を置こうと言われても、一人にするべきじゃなかった――
「春陽先輩、待ってます……一目だけでもいいから顔が見たい……」
文化祭の事件のあとに先輩が泣いていたという席で、俺は静かに時間が流れるのを感じた。
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