【改訂版】この世界に足を踏み入れたら抜け出せないじゃないですか……

さかき原枝都は

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夏休みの終わりに

日常って何? その4だよ!

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まいったねこりゃ。
ここまではっきりと好みが分かれるとは……。

「んー」

「ねぇ亜美、酢豚にパインは入れないでしょ?」

「んー」

「亜美ねぇさん、パインは入れるべきですよね」

どうすべきか? パインを入れるべきか、入れないべきか。

でも何で酢豚にパイン入れているのと、入れないのがあるんだろうね。

パイン事態は嫌いじゃないし、別に酢豚にパインが入っていても私は気にならない。

そう言えば確か美代ねぇも、酢豚にパインは苦手じゃないんだろうけど、あんまり取らないよなぁ。あえてパインを取らない様に取り皿に取っているのは気にしてたけど。

「んー、どうしよっかなぁ」

とりあえず酢豚に必要なものはそろえないと。

「亜美ぃ、やっぱり入れるの?パイン」

「正直今まよってる。美代ねぇもあんまり好きな方じゃないからね」

「ええ、でも欲しいですぅ。亜美ねぇさんパイン」

「んー……、しょうがない。両方作るか!」
「え、両方って、パイン入れてるのと入れていないの」

「うん、そうなれば多分量的に多くなるけど、食べてね」

「大変じゃない?」
「別にぃ。真由美、手伝ってくれるんでしょ」

「う、うん手伝うけどね。あ、そうだねぇさんも呼ぼっかぁ」
「そうだね、この際だ、呼んじゃおう」
真由美が尚子さんに連絡を取った。

「ねぇさん来るって、なんだか亜美の酢豚楽しみにしてるって言ってたよ」

「そりゃ、ありがたいことで。さぁてと、後はお肉かなぁ」

お肉のコーナーに行くと、真由美が私の手を握った。

ここで、私はあの時……。

もう大丈夫だよ……でもその手を私は強く握り返す。

それで真由美が安心してくれるんだったら……。

「ロースとんかつ用で行くかぁ」
「どれくらい?」

「3パック」
「3パックも、多くない?」

「お肉多めの酢豚かなぁ。それと唐揚げにしたお肉残ったら、多分美代ねぇと尚子さんのお酒のおつまみになるから」

「ほぇー、亜美凄い。そこまで考えていたなんて。さすが主婦」

「主婦? じゃ真由美は旦那様でいいんだぁ」

「えぇ、私が旦那様だなんてぇ……そんなぁ。私なんかぁ」
「真由美ねぇさん、置いていきますわよ」

「え、え。もう、沙良ちゃん、亜美ったらぁ。ちょっと待ってよぉ」

沙良ちゃんと私と顔を見合わせて、クスっと笑う。
ほんと沙良ちゃんとも、もうイキもぴったり。

事件に巻き込まれたりしちゃったけど、私は大切な絆を手に入れることが出来たんだと思う。

「ねぇアイス買っちゃおうか」
「わぁーい! アイス。アイス」
喜ぶ沙良ちゃんの姿が可愛い。

「はい、真由美はソフトクリーム」
「あ、ありがとう」
真由美はこのソフトのアイスが好きだ。

レジで会計をして、お肉が暑さで傷まない様に氷を入れて冷やす。

「意外と買ったねぇ。マイバックがパンパンだよ」
「そうね、何人分の酢豚出来るんだろう」
「えーとねぇ5人分にプラス1人分」
「なにその1人分って?」

「パイン入っていないの3人分。入っているの3人分。だから5人分プラス1人分だよ」

「6人分かぁ、凄い量になりそう」

「真由美お手伝い期待しているよ」
「まっかせなさぁい! 亜美には敵わないけど、料理はちゃんと出来るから基本だけだけど」

「うううっ、真由美ねぇさんいいなぁ。沙良も料理手伝いたいですぅ。亜美ねぇさんと一緒にお料理したいです」

「そっかぁ、それじゃ沙良ちゃんにも手伝ってもらおうかな」
「やったぁ!頑張ります沙良」

ス―パーの中にある小さななフードコートで、3人でアイスを食べながら話す会話。

平凡な日常。それが何だか今はとても嬉しい。

その時、私たちに話しかけてきた同じ年くらいの男の子。


「ねぇねぇ、君たちもしかしてこの前あったゲームのイベントに出ていたドールさんたちじゃない?」


えっ! 何で……。私たちがドールだっていう事、何で分かっちゃったんだろう。今とあの時じゃ、メイクもしていないし、雰囲気だって全然違うのに。
「違いますよ。私達そんなんじゃないですよ」

沙良ちゃんがきっぱりと否定した。


「そうかなぁ、すっごく似てるんだけどなぁ。あのドールって言う子たち物凄く可愛いんだよねぇ。僕一瞬でファンになっちゃたんだ。なんかさぁ、君たち見てるとすごく似てたから、もしかしてと思って声かけたんだけど、ごめんね」


「いいえ。それじゃ行きましょうか」

「あ、う、うん」

私たちは沙良ちゃんの言う通り、その場を離れた。

「びっくりしちゃったね」

「う、うん。でも分かる人に分かるんだ」

「ダメですよねぇさん方。あそこでそうです、なんていったらサインとか写真とか取られて拡散されてまた酷いことになりかねませんよ」

そうだった、私たちのドール契約は続行中だ。

あの事件の後、美代ねぇから

「あなた達二人は私が無理やりドールとして契約したんだけど、今回の事もあるし契約を解除する? それはあなた達の意志に任せるわ。」

私たち二人の気持ちは一緒だった。

「私たちは二人一組でドールを続けさせていきたいです」

「そう、分かった。彼方には伝えておくわ」

美代ねぇはそれ以上何も言わなかったけど、ちょっと嬉しそうだった。
まぁ、私たちは沙良ちゃんの様に売れてないから、そんなに出演依頼は来ないんだろうけどね。

「なんか芸能人みたいな気分になっちゃうね」

「だ・か・ら。それがいけないんです。私たちはこれからどんどん表の世界に姿を現せないといけないんです。そうなれば、自分のプライバシーは自分たちで守らないといけなくなるんです。

マネージャさんからもきつく言われているんですからね。ねぇさんたちもドールなんですからその自覚は持ってくださいね」

さすがは沙良ちゃん。プロ意識は物凄く高い。

今まで非公式の世界とは言え、れっきとしたプロ・コスプレイヤーとして舞台を踏んできたことはある。

「ありがとうね沙良ちゃん」

沙良ちゃんは顔を少し赤くさせて
「いいんですよ、大好きなねぇさんたちを守るのも私の務めですから」

なんかちょっとジーンと来ちゃった。

沙良ちゃんに抱き着いて

「あ、亜美ねぇさん。い、いきなり」
「嫌? 沙良ちゃん」

「嫌じゃないですよ。だって大好きな亜美ねぇさんに、抱いてもらってるんですもの」

そんなこと言われたら……。キュッてしちゃいそう、誰もいなかったら多分キスしてるよこれ、本当にうれしいよ。

三人仲良く手を繋いで歩く道。
私の心は幸せで満ちている。

帰ってからのキッチンでの悪戦苦闘の状況は、お手伝い頑張ってくれた二人の名誉のためあんまり触れないようにしよっと。

でもねぇ、沙良ちゃんほんとお料理とか何も今までしたことないんだって。
今日がお料理初デビュー。

頑張るって人参の皮を剥いてくれているその姿、なんだかコリスが一生懸命にピーラーで皮むいているように見えて、ほんと可愛いかったよ。

真由美はもうちょっと要努力かなぁ。

これからいろいろと教えがいがありそうだ。


それでも出来たよ酢豚。
ご希望通り。
パインありとパインなしの酢豚が出来ました。
私達3人の力作です。


尚子さんも帰ってきて、美代ねぇと一緒にさっそくビールで乾杯。

まぁ、二人は勝手にやってくれ!

私たちは自分たちで作った酢豚を堪能しながら、顔を見合わせては何となく恥ずかしそうにしながら楽しい夕食の時を過ごした。


「あ、そうだ亜美ちゃん。明日何か予定入っている?」
「特別ないですけど、なんですか尚子さん」

「明日さぁ、103号室に入居してくる人いるんだよ」

「え、そうなんですか? だって前の人転居してからまだそんなに経っていないんですけど。昨日お部屋の掃除業者さんが来て終わったばかりですよ」

「そうなんだよねぇ。それがさぁ急遽どうしても入居したいって契約している紹介所から連絡が来てさぁ。なんでも2人で住むらしんだよね」

「下見もしなくてもよかったんですか?」

「そうみたい、間取りの図面見て気に入ったのと、この場所の立地がいいんだってさ」

「即決ですね」

「そうなんだよ。それでさぁ、明日お店休みなんだけど、私と美代また彼方の所に行かないといけなくてさぁ、亜美ちゃんちょっとその人たちの引っ越しに立ち会ってくれるかなぁ」

「美代ねぇも行くの、彼方さんの所に」

「そうぉなのよぉぉ! まだねぇいろいろと残務整理残しているからねぇ。執筆の方も何とか落ち着いてきたし。そうそう、マネージャの愛理ちゃんにも会うからミーちゃんたちの今後の事も聞いてくるから」

私と真由美は席を立って同時に

「よろしくお願いいたします」
と頭を下げた。

だって美代ねぇは今でも会社の役員なんだもん。とっても偉い人なんだからこれくらいはしないと……ま、これもお仕事ですよね沙良ちゃん。

「そうそうおねぇ様方、美代おねぇ様にはちゃんと礼儀をもって接してくださいね」

「ねぇ――、美代おねぇ様ぁ」

あはは、こっちの方は沙良ちゃんには頭上がらいわな。

「尚子さん大丈夫ですよ。明日、その人たちの引っ越しに立ち会いますんで」

「ありがとうね亜美ちゃん」

「それでなんていう方なんですか?」

「ええとね、確か遠野とおのさん。契約者が遠野護とおのまもるさんていう人だったかな」

「遠野さんですね。わかりました。管理人代行のお仕事引き受けました」

「よろしくね亜美ちゃん」

でも遠野? まぁ同じ苗字の人はたくさんいるだろう。

まさかね……。

でも何となく胸騒ぎがするのはなぜだろう。



私たちはその事実に明日、驚愕きょうがくする……。
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