泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

文字の大きさ
5 / 453
破壊と再生

悠久

しおりを挟む
汚染除去一回では効果が見られなかった。
付与力も1になってしまい、何もできない。

放射能をどうにかするには全然足らないのだ。仮に泉を綺麗にしたとしても空と大地は汚染されたままだ。すぐに汚染されてしまうだろう。

暫くはこのまま様子を見ているしか無いか……。

☆★☆★

降り積もる雪は泉の周りを白く塗りつぶし、高い壁となって覆い被さらんとしていた。

「んしょ……んしょ……」

ただ泉を眺めているのも退屈だったので雪かきをしながら遊んでみる。

雪だるまを作ってみたり、かまくらを作ってみたり、ふふ……子供の頃を思い出すわ。

素手で雪に触れていても、若干の冷たさを感じるが霜焼けになる事はなかった。
そういえば気温がかなり低い筈だけど寒さも感じない。

精霊というのは感覚が鈍いのかしらね。
雪はまだまだ降り積もる。

雪が降ったある日、孫達と雪遊びをした事を思い出していた。
雪ウサギを作りながら思い出にふける。

みんな元気にしているかしら。

「あら……南天が無いから目も耳も付けられないわ。」

周りに何かないかと探していたら大きな尖った石を見つけた。
やや透明な赤色で、反りのある縦長の三角形……爪にも見えるけど、猫の爪にしてはかなり大きく掌に乗り切らないくらいだった。

そしてほんのり温かい。

「これ……シグルーンのだわ。」

彼……彼女か分からないけど、親切にしてくれたドラゴンさんの形見だ。大切にしよう。
紐でも通して首にでもかけておけたらいいのだけど、紐も穴を空ける術もない。

無くさない様に大切に持っておこう。

☆★☆★

雪はどんどん強くなって吹雪いてきた。世界を汚れを隠す様に世界全体を白く覆っている。

この吹雪はいつまで続くのだろう?

寒くはないけど1人は寂しい。

シグルーンの言った通り、この世界に生きているのは私だけなのだろう。
どれくらいの時間が経っただろうか……
付与力を確認してみる。

【ハル 泉の精霊 状態:放射能汚染 付与力:25352】

これだけあれば汚染された泉をきれいに戻せるだろうか?
でも周りの放射能もどうにかしないといけない。

できる事を確認してみる。

拡張   [10]
吸収   [10]
汚染除去 [100]

今なら253回汚染除去出来るけど、どうしようか?

そういえば他の2つは試していなかった。10しか使わないし試してみよう。

まずは拡張。

選択したらほんの少し泉が大きくなった。
そのまま泉を大きくする機能のようだ。

次は吸収。

選択しようとしたけど何も起こらない。

どうやって使うのだろうか?
この吸収はどういう意味なのか分からない。泉を私が吸収するのか、何かを泉に吸収させるのか。

泉とはとても呼び難いオイル溜まりに触れてみる。
そのまま吸収を選択しても何も起こらない。

それならと試しにシグルーンの爪?を少しだけ漬けて吸収を選択する。

爪が少し欠けてしまった。

しまった、大切な形見を……。
自分の軽率さを反省しながらも泉の状態を確認する。

【ハルの泉 状態:放射能汚染 突然変異の可能性 付与力:25332】

何か増えている。突然変異の可能性……?

どうしようか、シグルーンの形見を全部吸収させればもっと分かりやすく何か起こるかも知れない。

私は悩んだ。
長い間孤独な時間を過ごしてきたけれど、ずっとこの形見を抱きしめていた。
この温もりが孤独な私を支えてくれていた。今更手放したくはない。

悩んだ結果……

「暫く泉の様子を見てみよう。」

心の支えとなっていたシグルーンの欠片を失いたくなかった。
無くさずにどうにか出来る方法を探す事にする。

☆★☆★

ずっと振り続けていた雪は止んで、雲の切れ間から光が差し込んでくる。

いつぶりのお日様だろうか。目を細めながら空を仰ぐ。

陽光が心地良い。

雪は溶けていき、瓦礫は形を留めている物は殆どなくなっていた。

汚染の状況は改善されていないだろうか?

【ハルの泉の 状態:放射能汚染 突然変異の可能性 付与力:134751】

泉の状態は変わらない。付与力の増加量からかなりの時間が経ったのだと想像できる。

そして出来る選択肢が増えていた。

拡張   [10]
吸収   [10]
汚染除去 [100]
突然変異 [10000]

これは……何が出来るのだろうか?
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす
ファンタジー
 女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――? ――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語―― 『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』 五大国から成る異世界の王と たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー ――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。 ――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして…… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない―― 出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは? 最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―― そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味
ファンタジー
※完結しました。感想をいただけると、今後の励みになります。よろしくお願いします。 これは、今まで暮らしていた世界とはかなり異なる世界に移住することになった僕の話である。 ようやく再就職できた会社をクビになった僕は、不気味な影に取り憑かれ、異世界へと運ばれる。 気がつくと、空を飛んで、口から火を吐いていた! これは?ドラゴン? 僕はドラゴンだったのか?! 自分がドラゴンの先祖返りであると知った僕は、超絶美少女の王様に「もうヒトではないからな!異世界に移住するしかない!」と告げられる。 しかも、この世界では衣食住が保障されていて、お金や結婚、戦争も無いというのだ。なんて良い世界なんだ!と思ったのに、大いなる呪いがあるって? この世界のちょっと特殊なルールを学びながら、僕は呪いを解くため7つの国を巡ることになる。 ※派手なバトルやグロい表現はありません。 ※25話から1話2000文字程度で基本毎日更新しています。 ※なろうでも公開しています。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

処理中です...