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繁栄
天敵
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私が《効果合成》を使って行使したのは天候操作。大雨を降らせたのだ。
ここには雨を凌げる様な屋根がない。いくら突風を起こしても降り頻る雨全てを吹き飛ばす事はできない。
泉の水があれを破壊する力を有しているならこれで終わりだ!
「くそっ……折角……ここまで再生したのに……!!」
そんな事を言いながらガムドの骸を傘にして雨から身を守る黄色の宝石。
「答えなさい。あなた達はどこから来たのです?」
「ぐっ……このままでは……嫌だ、消えたくない……」
ガムドの身体を盾にしても雨は石に当たっている。少しずつ亀裂が広がっていき、とうとう二つに割れてしまった。
「くそっ……こんな……我々の天敵が……この星にいるなんて……」
そう言い残して黄色の石は粉々に砕け散った。
勝った。
勝ったけど……
皆酷い怪我を負っていた。雨には泉の水の回復効果が含まれている。この子達はすぐに良くなる。
「メト、大丈夫?」
私は一番重傷のメトの元へと走る。
『流石はハル様……お見事でした。』
メトの右前足は無くなっていた。その姿は痛々しい、
「あなたのお陰よ。本当にありがとう……。」
焼け焦げたメトの毛皮に顔を埋める。
『メト、お前が居てくれたから私も皆を守る事が出来た。心から礼を言う。』
『お役に立てて良かった……』
力なくその場に横たわったままのメト。そのまま意識を失った。
「お母さん、メトは良くなるよね?」
「大丈夫よ。必ず助けるわ。」
《過剰分泌》を併用して何度も治療を繰り返す。
日が暮れ夜が明けても繰り返す。
全く身動きをしないメト。しかしお腹の辺りはゆっくりと規則正しく上下している。
大丈夫だ。良くなっている。
三日間水を与え続けて朝を迎えた四日目、メトが目を覚ました。
『ハル様、俺なんかの為にありがとうございます。』
「いいのよ。あなたは大切な家族なのだから。」
元通りとはいかなかったが、毛皮の再生も始まっている。
残念ながら右前足は再生出来なかったが。
皆と共に泉に帰る。メトもゆっくりだが三本の足で器用に歩きながらついて来てくれた。
帰路に就きながら考えていた。
ガムドを操っていたあの石は何だったのか。
『再生して来た……』『この星に……』と気になる事も言っていた。
あれは私がこの世界に来る前から存在していて、世界の破壊の原因になった一つかも知れない。
『星』などと言っていた事から他の星から来たものではないか?
私はこの世界の事を何も知らない。
憶測でものを考え出したらきりがない。
それにあの力、この世界は魔法というものが存在する。
カクカミやメトが重傷を負う程の力だ。あれには気を付けないといけない。
あの宝石の様な綺麗な石は、なぜ私の泉の水に弱いのか?泉の成分に生命体を壊す様なものは含まれていない。
これは颯太と話し合った考えてみようと思う。
泉に帰るともう一つの悲劇が待っていた。
『ハル様……カナエが死にました。』
カナエを見ていてくれていたケリュネイアが悲しみを堪えて私に言った。
カナエは既に冷たくなっていた。
「遅くなってごめんなさい……でも、あなたのお陰で元凶は倒せたわ。本当に……ありがとう。」
既に返事をすることの出来ないカナエを優しく撫でながら精一杯のお礼を言う。
颯太もカクカミもメトも、他の全員がカナエの遺骸に触れて別れを告げる。
カナエは泉の畔に埋葬することになった。
「あれは……あの石は存在させていてはいけないわ。」
彼らの生態を知らないまま断言するのは私の横暴だろうか?
そう言った時、私怨に満ち溢れていたかも知れない。
正しいのかは分からない。
でも。
少なくともこの森からは排除する。
私は《過剰分泌》も使用して、広範囲に雨を降らせた。
この戦いで傷を負った者全てを癒せる様に。
悲しみを全て洗い流してしまえる様に。
ここには雨を凌げる様な屋根がない。いくら突風を起こしても降り頻る雨全てを吹き飛ばす事はできない。
泉の水があれを破壊する力を有しているならこれで終わりだ!
「くそっ……折角……ここまで再生したのに……!!」
そんな事を言いながらガムドの骸を傘にして雨から身を守る黄色の宝石。
「答えなさい。あなた達はどこから来たのです?」
「ぐっ……このままでは……嫌だ、消えたくない……」
ガムドの身体を盾にしても雨は石に当たっている。少しずつ亀裂が広がっていき、とうとう二つに割れてしまった。
「くそっ……こんな……我々の天敵が……この星にいるなんて……」
そう言い残して黄色の石は粉々に砕け散った。
勝った。
勝ったけど……
皆酷い怪我を負っていた。雨には泉の水の回復効果が含まれている。この子達はすぐに良くなる。
「メト、大丈夫?」
私は一番重傷のメトの元へと走る。
『流石はハル様……お見事でした。』
メトの右前足は無くなっていた。その姿は痛々しい、
「あなたのお陰よ。本当にありがとう……。」
焼け焦げたメトの毛皮に顔を埋める。
『メト、お前が居てくれたから私も皆を守る事が出来た。心から礼を言う。』
『お役に立てて良かった……』
力なくその場に横たわったままのメト。そのまま意識を失った。
「お母さん、メトは良くなるよね?」
「大丈夫よ。必ず助けるわ。」
《過剰分泌》を併用して何度も治療を繰り返す。
日が暮れ夜が明けても繰り返す。
全く身動きをしないメト。しかしお腹の辺りはゆっくりと規則正しく上下している。
大丈夫だ。良くなっている。
三日間水を与え続けて朝を迎えた四日目、メトが目を覚ました。
『ハル様、俺なんかの為にありがとうございます。』
「いいのよ。あなたは大切な家族なのだから。」
元通りとはいかなかったが、毛皮の再生も始まっている。
残念ながら右前足は再生出来なかったが。
皆と共に泉に帰る。メトもゆっくりだが三本の足で器用に歩きながらついて来てくれた。
帰路に就きながら考えていた。
ガムドを操っていたあの石は何だったのか。
『再生して来た……』『この星に……』と気になる事も言っていた。
あれは私がこの世界に来る前から存在していて、世界の破壊の原因になった一つかも知れない。
『星』などと言っていた事から他の星から来たものではないか?
私はこの世界の事を何も知らない。
憶測でものを考え出したらきりがない。
それにあの力、この世界は魔法というものが存在する。
カクカミやメトが重傷を負う程の力だ。あれには気を付けないといけない。
あの宝石の様な綺麗な石は、なぜ私の泉の水に弱いのか?泉の成分に生命体を壊す様なものは含まれていない。
これは颯太と話し合った考えてみようと思う。
泉に帰るともう一つの悲劇が待っていた。
『ハル様……カナエが死にました。』
カナエを見ていてくれていたケリュネイアが悲しみを堪えて私に言った。
カナエは既に冷たくなっていた。
「遅くなってごめんなさい……でも、あなたのお陰で元凶は倒せたわ。本当に……ありがとう。」
既に返事をすることの出来ないカナエを優しく撫でながら精一杯のお礼を言う。
颯太もカクカミもメトも、他の全員がカナエの遺骸に触れて別れを告げる。
カナエは泉の畔に埋葬することになった。
「あれは……あの石は存在させていてはいけないわ。」
彼らの生態を知らないまま断言するのは私の横暴だろうか?
そう言った時、私怨に満ち溢れていたかも知れない。
正しいのかは分からない。
でも。
少なくともこの森からは排除する。
私は《過剰分泌》も使用して、広範囲に雨を降らせた。
この戦いで傷を負った者全てを癒せる様に。
悲しみを全て洗い流してしまえる様に。
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