泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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繁栄

精霊の王

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長い雨が止んだ頃、大蛇さんとゴブリン達が泉にやって来た。

私は事のあらましを話していく。
そして似た様な石を見かけても近づかない様にと話しておいた。

尤も、この辺りにはもう存在していないはずだが。

「森の危機を救ってくださりありがとうございました。我らも精霊様にお仕えさせてください。」

ゴブリン達は地に伏せて言う。

「私も精霊様にお仕えさせてください。」

大蛇さんも頭を持ち上げて少し近付いて来ながら言ってくる。
「ひっ」と小さく声を漏らしてしまったけど、颯太に掴まりながら努めて冷静な口調で答える。

「分かりました。今後この様な事がないように皆で助け合いながら生きていきましょう。生き残ったオーガやトロール、ノール達にも伝えてください。私が皆を護ると。」

ゴブリン達は皆名前を持っていたのでヨキ達の時の様に眷属認定をすればよし。
大蛇さんについては名前を付けて欲しいとの事だったので考える事になった。

さて、どうしようか……。
頭が八つに分かれていたらいい名前があるのだけどね。

渓谷を縄張りにしている大蛇だし……渓谷、谷ならヤツ、ヤト。確か夜刀神ヤトノカミという蛇の神様がいたはず。これにしよう。

「あなたは今日からヤトよ。」
『私はヤト、ありがとうございます!』

ゴブリン達もそうだったけどヤトも同様に眷属認定をしたら巨大化した。
蜷局を巻いて頭を持ち上げている叫んでいるヤトは本当に嬉しそうだった。

……気を失いそう。

「ヤト、お母さんは君の姿を見て怖がってるんだ。もう少し大人しくしてよ!」

颯太がヤトを叱ってくれた。

『なんと……!これは失礼を致しました。』

慌てて離れていき、藪のところから頭を少しだけ出している。
ちょっとカワイイ。

「い、いいのよ。私があなたに似た生き物が苦手だっただけだからヤトは何も悪くないの。いつも通りにして。」
『お心遣い痛み入ります。』

藪から頭を出しただけの姿で声量も落としてくれている。
何だか申し訳なくなってしまう。早く慣れよう。

その後、この辺り一帯に住む人型、動物型問わず全ての種族を眷属と認定し、私は泉の精でありながら森の守護者と呼ばれる様になった。

また、一部では私の事を精霊の王と呼ぶ者もいる。
その響きだと精霊をまとめる王様の様に聞こえてしまうけど、知っている精霊は私と颯太しかいない。
颯太は私の息子だから主従関係ではないし、王は変じゃないかと思う。

しかし精霊か……。
他にも精霊が居るのなら是非会ってみたい。もしかしたら魔法というものを知っているかもしれないし。

☆★☆★☆★☆★

月日は流れ、人型種族も動物型種族も数えきれない程世代交代を繰り返した。

歳を取らなかったのはカクカミ、メト、ヤトだけだった。

私は少しだけ成長し、颯太は既に二十歳位の容姿になっていた。身長はかなり伸びて顔立ちもモデルの様に整っている。親バカかもしれないけれど、これはかなりモテる筈よ。

私に対する呼び方も『お母さん』から『母さん』になっていた。この子もすっかり大人になったわ。

……精霊は結婚とかしないのかしらね?

「颯太は好きな人はいないの?」
「何を唐突に言い出すんだい?僕はみんなの事が大好きだよ。母さんが一番だけどね。」

これくらいの歳の子はそういう事は恥ずかしがって中々言わないと思うけど、颯太は純粋に育ったからか平然と笑顔で言ってくる。中身は昔のままなのかしら。

「ありがとう私も颯太が大好きよ。」

頭を撫でてあげたいけど立派に成長した我が子の頭を撫でるのには身長差があり過ぎる。

……なんかちょっと悔しい。

フッと笑うと颯太は私の前でしゃがんでくれた。折角なので撫でさせてもらおう。

『颯太様だけズルいです。俺も撫でてください。』

どこからともなくメトがやって来て頭を近付けて来た。この子も既に母熊位のサイズに成長しているが中身はまだまだ子供だ。

あれから毎日泉の水で身を清めていたら、メトの右腕はしっかり再生した。今では普通に野山を駆け回っている。

さあ、今日は何をしようか?
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