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人間
災厄
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突然夜の闇が切り裂かれて巨大な隕石が落ちてくる。
私達は隕石の衝突後の津波を予想して高台への避難を開始していた。
正直被害の想像ができない。
直撃ではないにしてもあれだけの大きさだ、ただでは済まないだろう。
山の斜面を背にする様に避難するべきか迷ったが、とにかく高台に避難する事に決めた。
一番近くに住んでいたケリュネイア達は足の遅い人型を乗せて泉に運んでは戻りを繰り返してくれている。
時間はあまりないかも知れない。全員を避難させる事は難しい。
人型動物型関係なく次々と避難してくる。泉の周りはかなり広いが島全体からしたら微々たるものだ。
アインと颯太が避難して来た者達を誘導して出来るだけ詰めてくれている。
そしてその時はやって来た。
空に轟く爆発音、大気全体が震えている。
そして……
「風が……止んだ?」
空を見上げながらアインが呟く。
そのあと巻き起こる突風。風は落下地点に吹いている……?
「何か変です……森全体が震えてる……」
カナエは怯えて私の肩にしがみついている。
《遠隔視野》を使って落下地点の方角を確認する。
海が向こうに引っ張られている……
更に遠くを見ると、こちらに向かう波と衝撃波が目視できた。
「みんな、物凄い突風がくるわ!伏せて!」
「小さな者は僕の木の陰に隠れるんだ!」
私が叫ぶと颯太も指示を出しながら私を抱き寄せて伏せる。
次の瞬間、凄まじい風が巻き起こる。この森はそう簡単に揺らぐ事の無い大木ばかりだが、その木々が大きく揺さぶられている。
《遠隔視野》でもう一度確認すると、津波が迫って来ていた。
その高さたるや、ビルくらいあるのではないかという波で、恐ろしい速度で迫って来ていた。
あの高さではここも危ない。
『ハル様!』
『ハル様、ご無事ですか!?』
カクカミとヤトがほぼ同時に戻ってきた。遅れてメトもやって来た。
「ええ、今からここに津波が来ます。魔法で防ぐから力を貸して!」
『『分かりました!』』
「何をすればいい?」
私は指示を出す。
土の魔法でなるべく固く、この泉に波が来ない様に壁を作る。波に対して鋭角に、二枚の壁をだ。
高さはかなり高くしなければ飲み込まれてしまう。土魔法の使える私と颯太とカナエで作っていく。
間に合うのか?そもそもこんなもので防げるのか?しかし何もしないよりは良い筈だ。
なるべく多くの者を守れる様に出来るだけ泉から離れた位置に作った。
そしてやって来る巨大な津波。轟音と振動が伝わってくる。
全力で強化した二枚の壁は波の衝突に何とか耐えた。幾らかは壁を乗り越えて雨の様に降りかかって来たけどそれ位は問題ない。
しかし、泉の周りの高台以外は波に飲み込まれてしまった。
眼下にあった湖や広大な森は全て飲み込まれてしまった。
私達はそれをただ呆然と見ていることしか出来なかった。
夜が明けて波も少しずつ収まっていき、被害の全容が見えてきた。
あれだけ生い茂っていた木々は一本も残っていない。荒地だけが広がっていた。
泉のある高台にいた者達は無事だったけど、逃げ遅れた者も少なくはなかっただろう。
「なんてことなの……」
破壊され尽くした島を見ながら呟く。
あの神様は、この《イルメイア》という世界を滅びと再生の世界と呼んでいた。
まさかこんな事が定期的に起こるのだろうか?
それでは幾ら繁栄しても、文明が興っても何も残らないではないか。
怒りと絶望の入り混じったドロドロとした感情が湧き上がってくる。
「折角ここまで来たのに……」
あんまりだ。
「母さん……」
泣き崩れそうになるのを颯太の声が支えてくれた。
そうだ。この世界に来たばかりの孤独な自分ではないのだ。
今はみんながいる。私がしっかりしなければ。
「怪我をした者がいないか確認をしましょう。それから周囲の探索を行います」
何とか己を奮い立たせて皆に言った。
私達は隕石の衝突後の津波を予想して高台への避難を開始していた。
正直被害の想像ができない。
直撃ではないにしてもあれだけの大きさだ、ただでは済まないだろう。
山の斜面を背にする様に避難するべきか迷ったが、とにかく高台に避難する事に決めた。
一番近くに住んでいたケリュネイア達は足の遅い人型を乗せて泉に運んでは戻りを繰り返してくれている。
時間はあまりないかも知れない。全員を避難させる事は難しい。
人型動物型関係なく次々と避難してくる。泉の周りはかなり広いが島全体からしたら微々たるものだ。
アインと颯太が避難して来た者達を誘導して出来るだけ詰めてくれている。
そしてその時はやって来た。
空に轟く爆発音、大気全体が震えている。
そして……
「風が……止んだ?」
空を見上げながらアインが呟く。
そのあと巻き起こる突風。風は落下地点に吹いている……?
「何か変です……森全体が震えてる……」
カナエは怯えて私の肩にしがみついている。
《遠隔視野》を使って落下地点の方角を確認する。
海が向こうに引っ張られている……
更に遠くを見ると、こちらに向かう波と衝撃波が目視できた。
「みんな、物凄い突風がくるわ!伏せて!」
「小さな者は僕の木の陰に隠れるんだ!」
私が叫ぶと颯太も指示を出しながら私を抱き寄せて伏せる。
次の瞬間、凄まじい風が巻き起こる。この森はそう簡単に揺らぐ事の無い大木ばかりだが、その木々が大きく揺さぶられている。
《遠隔視野》でもう一度確認すると、津波が迫って来ていた。
その高さたるや、ビルくらいあるのではないかという波で、恐ろしい速度で迫って来ていた。
あの高さではここも危ない。
『ハル様!』
『ハル様、ご無事ですか!?』
カクカミとヤトがほぼ同時に戻ってきた。遅れてメトもやって来た。
「ええ、今からここに津波が来ます。魔法で防ぐから力を貸して!」
『『分かりました!』』
「何をすればいい?」
私は指示を出す。
土の魔法でなるべく固く、この泉に波が来ない様に壁を作る。波に対して鋭角に、二枚の壁をだ。
高さはかなり高くしなければ飲み込まれてしまう。土魔法の使える私と颯太とカナエで作っていく。
間に合うのか?そもそもこんなもので防げるのか?しかし何もしないよりは良い筈だ。
なるべく多くの者を守れる様に出来るだけ泉から離れた位置に作った。
そしてやって来る巨大な津波。轟音と振動が伝わってくる。
全力で強化した二枚の壁は波の衝突に何とか耐えた。幾らかは壁を乗り越えて雨の様に降りかかって来たけどそれ位は問題ない。
しかし、泉の周りの高台以外は波に飲み込まれてしまった。
眼下にあった湖や広大な森は全て飲み込まれてしまった。
私達はそれをただ呆然と見ていることしか出来なかった。
夜が明けて波も少しずつ収まっていき、被害の全容が見えてきた。
あれだけ生い茂っていた木々は一本も残っていない。荒地だけが広がっていた。
泉のある高台にいた者達は無事だったけど、逃げ遅れた者も少なくはなかっただろう。
「なんてことなの……」
破壊され尽くした島を見ながら呟く。
あの神様は、この《イルメイア》という世界を滅びと再生の世界と呼んでいた。
まさかこんな事が定期的に起こるのだろうか?
それでは幾ら繁栄しても、文明が興っても何も残らないではないか。
怒りと絶望の入り混じったドロドロとした感情が湧き上がってくる。
「折角ここまで来たのに……」
あんまりだ。
「母さん……」
泣き崩れそうになるのを颯太の声が支えてくれた。
そうだ。この世界に来たばかりの孤独な自分ではないのだ。
今はみんながいる。私がしっかりしなければ。
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何とか己を奮い立たせて皆に言った。
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