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養育
マナー
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ザハーンは人間と取引をしている商人だと言っていたが、この豪邸を別邸として持っていて、私達の衣服までこんなにも沢山用意してくれる。
彼は一体何者なのだろうか?
夕食の時にその疑問は解消された。
煌びやかな装飾の施された食堂で、大きなテーブルを囲んで豪勢な食事。
まるで国の偉い人みたいだと思っていたら、その偉い人までやって来た。
「精霊様、お初にお目にかかります。私はウルゼイドを統治する者、アルザハーンと申します」
三十代位のアルザハーンは跪いて頭を垂れる。
その後ろでザハーンもそれに習っている。
そういえば初めに助けたのはブランザハーン、取引をしていたのはザハーン、今目の前にいるのがアルザハーン……
ひょっとしてザハーンは王族?
「初めまして、ハルです。一国の王が跪く必要はありませんよ」
「いえ、父祖の恩人たる精霊様は、本来であれば国を挙げて歓待せねばならないと。精霊様ご一行がお越しになるのであれば本来ならば城をお使いいただく所ですが、今回は学園に通う事が目的でありますれば、一番近いこの屋敷にお住まいになられた方が宜しいかとご用意させていただきました」
そこまでして貰わなくても良かったのだけど。
「ありがとう。それでも国の者に示しがつかないでしょう。さあ、立ち上がって」
アルザハーンを立たせて用意された夕食の席に着いて話しながらいただく。
ザハーンは本名をイルザハーンと言い、アルザハーンの弟らしい。
「商人なのは事実です。私は王位継承権を放棄しておりますので」
王弟という立場も、王族という肩書きも全て捨てて商人として大成しているのだそうだ。
「これもハル様のお陰です。取り引きをしてくださった森の幸と泉の水はどれも高値で取り引きをさせていただいておりました」
「でも、今回のこれはやり過ぎではないの?服についてもあんなに用意してくれなくたって……」
「あれくらい大した事ではございませんよ。これまでの利益を考えればあれでも少ない位だと思っております。その他御入用の物がありましたらなんなりとお申し付け下さい」
これ以上何を用意してもらえば良いのか分からないわよ。
芽依はご馳走に驚きながら少し遠慮がちに食べていく。
マナーなんて教えていないもの。そもそも私はこちらの世界のマナーなんて分からない。
「私達はずっと森で暮らして来たから食事のマナーも知らないの。まずはあなた達の常識から教えていただけるかしら」
「これは……気付きませんで大変失礼しました。精霊様からは気品すら感じておりました故」
私は何となくでやっていたテーブルマナーが合っていただけ。
颯太と芽依にはちゃんとしたものを覚えて貰いたいと思う。
メイドや家政婦長が来て丁寧にテーブルマナーを教えてくれた。
颯太も芽依も物覚えが良くて、一度教えられた事はすぐに出来る様になっていた。
芽依は教えてもらう事も楽しんで吸収する事ができる様で、笑顔で「わかりました」「ありがとう!」と返事をしていた。その様子を見ていると皆が笑顔になっていく。
この子には人を笑顔にさせる才能があるのかしら。
言い過ぎね。親馬鹿だわ。
「明日から学校です。馬車にてお送りしますので、まずは学校を見学して参りましょう」
「ありがとう。宜しくお願いね」
食事も楽しく終えることができてお湯をいただく。
屋敷には大きな浴場があり、初めて入るお湯に芽依も大はしゃぎだった。
ウルゼイドに出てきて初めて体験する事だらけで、戸惑うかと思ったけど杞憂だったみたいね。芽依はいつも通りの笑顔を向けてくる。
緊張していたのは私の方かしら?
人の文化に触れていくのはとても楽しい。明日からもっと沢山のものに触れていくのだ。芽依の様に楽しんでいこうお思う。
彼は一体何者なのだろうか?
夕食の時にその疑問は解消された。
煌びやかな装飾の施された食堂で、大きなテーブルを囲んで豪勢な食事。
まるで国の偉い人みたいだと思っていたら、その偉い人までやって来た。
「精霊様、お初にお目にかかります。私はウルゼイドを統治する者、アルザハーンと申します」
三十代位のアルザハーンは跪いて頭を垂れる。
その後ろでザハーンもそれに習っている。
そういえば初めに助けたのはブランザハーン、取引をしていたのはザハーン、今目の前にいるのがアルザハーン……
ひょっとしてザハーンは王族?
「初めまして、ハルです。一国の王が跪く必要はありませんよ」
「いえ、父祖の恩人たる精霊様は、本来であれば国を挙げて歓待せねばならないと。精霊様ご一行がお越しになるのであれば本来ならば城をお使いいただく所ですが、今回は学園に通う事が目的でありますれば、一番近いこの屋敷にお住まいになられた方が宜しいかとご用意させていただきました」
そこまでして貰わなくても良かったのだけど。
「ありがとう。それでも国の者に示しがつかないでしょう。さあ、立ち上がって」
アルザハーンを立たせて用意された夕食の席に着いて話しながらいただく。
ザハーンは本名をイルザハーンと言い、アルザハーンの弟らしい。
「商人なのは事実です。私は王位継承権を放棄しておりますので」
王弟という立場も、王族という肩書きも全て捨てて商人として大成しているのだそうだ。
「これもハル様のお陰です。取り引きをしてくださった森の幸と泉の水はどれも高値で取り引きをさせていただいておりました」
「でも、今回のこれはやり過ぎではないの?服についてもあんなに用意してくれなくたって……」
「あれくらい大した事ではございませんよ。これまでの利益を考えればあれでも少ない位だと思っております。その他御入用の物がありましたらなんなりとお申し付け下さい」
これ以上何を用意してもらえば良いのか分からないわよ。
芽依はご馳走に驚きながら少し遠慮がちに食べていく。
マナーなんて教えていないもの。そもそも私はこちらの世界のマナーなんて分からない。
「私達はずっと森で暮らして来たから食事のマナーも知らないの。まずはあなた達の常識から教えていただけるかしら」
「これは……気付きませんで大変失礼しました。精霊様からは気品すら感じておりました故」
私は何となくでやっていたテーブルマナーが合っていただけ。
颯太と芽依にはちゃんとしたものを覚えて貰いたいと思う。
メイドや家政婦長が来て丁寧にテーブルマナーを教えてくれた。
颯太も芽依も物覚えが良くて、一度教えられた事はすぐに出来る様になっていた。
芽依は教えてもらう事も楽しんで吸収する事ができる様で、笑顔で「わかりました」「ありがとう!」と返事をしていた。その様子を見ていると皆が笑顔になっていく。
この子には人を笑顔にさせる才能があるのかしら。
言い過ぎね。親馬鹿だわ。
「明日から学校です。馬車にてお送りしますので、まずは学校を見学して参りましょう」
「ありがとう。宜しくお願いね」
食事も楽しく終えることができてお湯をいただく。
屋敷には大きな浴場があり、初めて入るお湯に芽依も大はしゃぎだった。
ウルゼイドに出てきて初めて体験する事だらけで、戸惑うかと思ったけど杞憂だったみたいね。芽依はいつも通りの笑顔を向けてくる。
緊張していたのは私の方かしら?
人の文化に触れていくのはとても楽しい。明日からもっと沢山のものに触れていくのだ。芽依の様に楽しんでいこうお思う。
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