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冒険者

遺跡

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空いた穴に降りる事になった。
念の為私と芽依が持っていたロープを繋いで命綱にして、順番に降りていく。
初めはセロ、次にミラ、リン、芽依、私の順番だ。

私が最後なのはステップサーペントがいた場合、邪魔になるからだろう。
気を遣わせてしまって申し訳なく思う。

「大丈夫だよ!降りて来て、お母さん!」

穴の中から芽依の声が聞こえてくる。
ロープを伝って降りていく。

中ではランタンに灯りをつけてみんなが待っていた。
ランタンはセロが念の為にと持って来ていたものだそうだ。

中は石造りでヒンヤリとしていた。
自然にできた洞窟というよりは誰かが石を削って組み上げた空間の様だ。

「これって遺跡よね?」
「あ、ああ……!大発見なんじゃないか?」
「そうですね。ギルドに報告したら報奨金がたっぷり出ますよ」

三人は大喜びだ。

「探索しないの?」
「遺跡は古代文明のものだからね。俺達みたいな駆け出しじゃ中に何かいたら対応出来ないよ」

ここの防衛に魔法で動くものが侵入者を排除するために待ち構えているかも知れないそうだ。
遺跡にはそういった防衛機構が備えられている事が大半らしい。

「少しだけ中を見たらダメ?」
「うーん……まあ、何かいたらすぐに引き返せばいいかな」
「やった!お母さんもいい?」
「ええ。いいわよ」

芽依の提案で少しだけ中を探索する事に。

ランタンを持つセロが先頭。次にミラ、私、リン、芽依の順番で一列で進む。
芽依が最後尾なのは後方の警戒をする為だそうだ。
私やリンが真ん中付近なのは近接戦闘が苦手だろうとの配慮だ。
よく考えられている。

ゆっくりと慎重に奥へと進んでいく。
通路の様に真っ直ぐ延びた遺跡。幅は四メートル程で高さも同じくらい。綺麗に表面を加工された石壁は苔が生えていたり、所々崩れていたりしたが歩くのには困らない。

同じ風景がしばらく続いていたが、やがて広い空間に出た。
入り口から慎重に中を確認して見る。
どうやら何もいない様だ。魔力の反応も殆ど無い。

「かなり広い空間だ。ランタンじゃ照らしきれない」
「私が灯りを出しましょう」

魔法で光の球を作ると空間の中央上方に投げつける。

パッと光が弾けて空間全体が明るくなる。
ドーム状になった天井は通路と同じ石造りで地面も同じ。ここは何をする所だったのだろうか?

「ねえあれ!」

芽依が指差した方向、左手の奥側には剣が一振り台座に突き刺さっていた。
その奥には祈る様な仕草の女性の石像が立っている。

「あれは…大地の女神マイファメイアですね」

ミラが教えてくれる。
神様って複数いるのかしらね。

「神像があるって事は罠では無さそうね」

リンもホッと胸を撫で下ろしている。

「ねえ、あの剣は何だろう?」
「見に行ってみよう」

芽依とセロが足早に向かう。
私達もそれを追った。

剣が突き刺さっている所には台座があって、床よりも一段高くなっている。
その台座には何やら文字が書いてある様でセロと芽依はそれを読もうとしていた。

「えーと……これって文字?」
「みたいだけど読めないな」
「見せて」

私なら読めるかも知れない。二人に場所を空けてもらって台座を確認する。

「ええと……世界を救うもの、魔王……討ち滅ぼす……聖剣?所々欠けていて読めないわ」
「すごい!読めるのお母さん?」
「ええ。見た事のない文字だけど分かるわね」

この身体に備わっている機能なのだろう。しかしこれを書いた者は何者なのだろう?

「この剣は聖剣なのか?抜いたら持って帰っていいのかな?」

セロが柄に手をかけて引き抜こうとする。が、びくともしない。
剣は古代よりここにある筈なのに錆び一つない。黄金に輝く刀身が美しい。

「硬いな……」
「私も手伝うよ!」

芽依も加わって力一杯引っ張ると、少しずつ動いて剣が抜けた。
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