泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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勇者

新たな家族

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狼は責任を取ってこの場で死ぬ事を望んでいる。
クーゲルは致し方ない事だと言ってくれているのだ。彼らが許してくれる様なのでこの子を助けようと思う。

「あなた、私の眷属にならない?」
『私は死ななければならないのではないのですか?』
「こちらの騎士様はあなたが操られていたのだと理解してくれました」
『おお……何と御心の広いお方だ』

狼は頭を伏せたままクーゲルを見ている。

「どうしたのだ?」
「クーゲル様を御心の広い方だと仰っています」
「そ、そうか」

魔物に褒められるなどそうは無い経験だろう。クーゲルも満更ではなさそうだ。

『それではお願い致します』
「あなた名前はある?」
『ありません。付けていただけないでしょうか?』
「分かったわ。あなたの名前は、そうね……マカミでどうかしら?」
『俺の名はマカミ。ありがとうございます!』

真っ黒だった毛並みが真っ白に変わり身体は更に大きくなる。

「何をしたのだ?」
「私の家族にしただけです」

名付けを行うと姿が変わる事をクーゲルに説明する。

「では私も名前を頂けば大きくなるのでしょうか?」
「元々名前がある者も家族と認めれば成長した事はあるわ。だからエレはこれ以上大きくはならないはずよ」
「そうですか……」

残念そうなエレ。

「お母さん、私は?」
「人間で名前を付けたのは芽依が初めてどけど人間があんな風に大きくなったらおかしいでしょう?」
「確かにそうだね」

そう言って笑う芽依。

「では私は……?」

マイは子供の姿がコンプレックスになっているみたいね。

「あなたはその姿のままでいいのよ」

そう言って頭を撫でると顔を緩ませていた。

あなたが先に大人になってしまったら芽依が悲しむわよ。

『ではこの者を送り届けて参ります。我らの家へと案内する。ついて来られるか?マカミよ』
『はい!』

マカミは大きくなった事でトコヤミに乗せて運ぶ事ができなくなってしまったが、彼が泉まで誘導してくれるそうだ。

『では行って参ります』
「ええ、お願いね。助かるわ」

トコヤミにお礼を言って送り出す。

トコヤミが飛んでいくとマカミもそれを追って勢いよく走り出した。

あの速度ならそう時間は掛からないだろう。数日中に到着する筈だ。

「ハル殿、それで一つ相談がある」
「何でしょう?」
「この魔物の死体を我らにお譲り頂けぬか?」

クーゲルが言うには騎士団が壊滅した原因を国王に説明しなければならないそうだ。

「分かりました。それならばあなた方が討伐した事になされれば宜しいでしょう」
「それはありがたい申し出だが、そこまで甘える訳にはいかぬ。ハル殿達の協力があった事を報告させていただこう」
「ええ。お願いします。それからリザードマンの群れが西を目指して移動していたら手出しをしないで頂きたいのですが」
「了解した。くれぐれもよく言っておこう」

クーゲルとの話も纏まったので私達は南西の村へと戻る。

エレに竜変身してもらい全員を運んでもらった。

移動中ギルに確認したら合流していない群れはあと二つだと教えてくれた。
無事に泉に辿り着ける事を祈ろう。

「ハル!みんなも無事だったか!良かった……」

村に着くとジェイド達が私達の所へと走ってきた。

私とセロが事の顛末を説明する。

「そうか。何はともあれこの討伐は完了したんだな」
「ええ。その寄生体の魔物が森の魔物達を狩ったりゾンビに変えていた事で数を大きく減らしていたみたいです。ゾンビは私の水で駆逐したのでもう大丈夫。森が元に戻るには時間がかかるかも知れませんが、これで元通りです」

とにかく問題は解決した。村の状況からして森の幸が獲れなくても飢えることは無さそうだ。

次の日には私達は野営地を片付けて帰途に着く。

予定より随分早く帰る事になった。
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