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勇者
依頼受理
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翌日、朝食を取り終えてから冒険者ギルドへと向かった。
ブランに昨日の出来事を説明しなければならない。勝手に宿が変更されて困惑しているかと思えば、「最高級のホテルに泊まってるんだってな。俺の用意した宿より全然良いところだろ?」と笑っていた。
ブランの用意した宿がどんな所かは知らないが、彼の所にも連絡が来たようだ。
「セロ達は呼び出しがあるまで仕事をするのか?滞在の費用は掛からねえんだからのんびりしたらどうだ?」
「いえ、折角王都に来たので色々経験しておきたいんです。俺達でも出来る仕事はありますか?」
ブランは自分の部屋ではなく受付に立っていた。
ギルドマスターではあるが冒険者達とコミュニケーションを欠かしたくないという事でかなりの頻度でここに立っているらしい。
良い心掛けだとは思うけど自分の仕事もするべきだわ。
「で、今日は何かやるか?お前らのやれそうな仕事だと、そうだな……コイツはどうだ?」
そう言って紙をこちらに寄越して見せる。
内容は狩りに出る貴族の警護。
直属の騎士がいるので身辺の警護というよりは斥候の役目らしい。
「気楽な仕事だぞ。獣や魔物を見つけて報告するだけだ。昼から出て夕方には戻ってくる。一人二万エルズだ」
「に、二万……」
「そんな簡単な仕事でそんなに貰えるのですか?」
「貴族様だからな。それに依頼主はエリオット王子派だからお前らとも相性がいい」
王侯貴族には派閥があるのね。継承権争いが起こったりするのかしら?
エリオットに接近しすぎて巻き込まれるのは良くない。注意しておいた方が良いだろう。
「その依頼は上客なのでは?私達がやっても宜しいのでしょうか?」
「ああ、問題ないぜ。文句を言ってくる奴がいたら力を示せばいい」
それは問題あるのでは?
「セロさんどうしますか?」
「そうだね……受けよう。このタイミングで俺達が断ったら違うパーティを見つけるのに大変だろうし、ギルドマスターが俺達の為に取っておいてくれた仕事なら断る訳にはいかないだろう」
確かにセロの言う通りだ。ここで断るとブランは困ってしまうだろう。
「流石パーティリーダーだな!よく分かっているじゃねーか!」
カウンターから身を乗り出してセロの肩をバンバンと叩くブラン。
その勢いでよろめいて咳き込むセロ。
「先方には使いを出しておく。待ち合わせ場所は東門内だ。コイツを持っていって見せろ」
カウンターに置かれたのは金属のプレート。紋章が彫り込まれている。
「それはロイガー男爵家の紋章だ。お前達が護衛するのはマリオネル・ロイガー男爵だ。頻繁に狩りの護衛を依頼してくるが正直あまり上手くはない。だが護衛の腕は確かだ。まあ、気負わずに楽しんで来い」
私達が楽しんではいけないでしょうに。
装備も全て持ってきているのでここで時間を潰して東門に行こうという話になった。
そうなると嫌でも他の冒険者達に注目される。
「アンタらが《セイランの護剣》か?ちょっと実力を見せてくれよ」
早速絡まれる。声を掛けてきたのは二十歳前後の青年剣士。背中に大振りな剣を背負っていた。
「俺達昼から仕事があるので」
「仕事っつっても貴族の斥候だろ?少しくらい付き合えよ」
青年は強引だ。セロに手合わせを強要してくる。
「私がやろうか?丁度退屈してたんだ」
そう言って割って入ったのは芽依だ。
「なんだ?こんなチビっ子も冒険者なのか?セイランはよっぽど人手不足なんだな!」
「子供だからって見くびらないでね。お兄さんより強いんだから」
「言ったな?訓練場に来い。怪我をしても泣くんじゃねーぞ!」
そう言ってズカズカと訓練場の方へと歩いていく青年。
芽依はニッコリ笑うと「ちょっと遊んでくるね」と、意気揚々とついていった。
私達も見に行ったが、結果は芽依の圧勝。泣くのは青年の方だったみたいね。
ブランに昨日の出来事を説明しなければならない。勝手に宿が変更されて困惑しているかと思えば、「最高級のホテルに泊まってるんだってな。俺の用意した宿より全然良いところだろ?」と笑っていた。
ブランの用意した宿がどんな所かは知らないが、彼の所にも連絡が来たようだ。
「セロ達は呼び出しがあるまで仕事をするのか?滞在の費用は掛からねえんだからのんびりしたらどうだ?」
「いえ、折角王都に来たので色々経験しておきたいんです。俺達でも出来る仕事はありますか?」
ブランは自分の部屋ではなく受付に立っていた。
ギルドマスターではあるが冒険者達とコミュニケーションを欠かしたくないという事でかなりの頻度でここに立っているらしい。
良い心掛けだとは思うけど自分の仕事もするべきだわ。
「で、今日は何かやるか?お前らのやれそうな仕事だと、そうだな……コイツはどうだ?」
そう言って紙をこちらに寄越して見せる。
内容は狩りに出る貴族の警護。
直属の騎士がいるので身辺の警護というよりは斥候の役目らしい。
「気楽な仕事だぞ。獣や魔物を見つけて報告するだけだ。昼から出て夕方には戻ってくる。一人二万エルズだ」
「に、二万……」
「そんな簡単な仕事でそんなに貰えるのですか?」
「貴族様だからな。それに依頼主はエリオット王子派だからお前らとも相性がいい」
王侯貴族には派閥があるのね。継承権争いが起こったりするのかしら?
エリオットに接近しすぎて巻き込まれるのは良くない。注意しておいた方が良いだろう。
「その依頼は上客なのでは?私達がやっても宜しいのでしょうか?」
「ああ、問題ないぜ。文句を言ってくる奴がいたら力を示せばいい」
それは問題あるのでは?
「セロさんどうしますか?」
「そうだね……受けよう。このタイミングで俺達が断ったら違うパーティを見つけるのに大変だろうし、ギルドマスターが俺達の為に取っておいてくれた仕事なら断る訳にはいかないだろう」
確かにセロの言う通りだ。ここで断るとブランは困ってしまうだろう。
「流石パーティリーダーだな!よく分かっているじゃねーか!」
カウンターから身を乗り出してセロの肩をバンバンと叩くブラン。
その勢いでよろめいて咳き込むセロ。
「先方には使いを出しておく。待ち合わせ場所は東門内だ。コイツを持っていって見せろ」
カウンターに置かれたのは金属のプレート。紋章が彫り込まれている。
「それはロイガー男爵家の紋章だ。お前達が護衛するのはマリオネル・ロイガー男爵だ。頻繁に狩りの護衛を依頼してくるが正直あまり上手くはない。だが護衛の腕は確かだ。まあ、気負わずに楽しんで来い」
私達が楽しんではいけないでしょうに。
装備も全て持ってきているのでここで時間を潰して東門に行こうという話になった。
そうなると嫌でも他の冒険者達に注目される。
「アンタらが《セイランの護剣》か?ちょっと実力を見せてくれよ」
早速絡まれる。声を掛けてきたのは二十歳前後の青年剣士。背中に大振りな剣を背負っていた。
「俺達昼から仕事があるので」
「仕事っつっても貴族の斥候だろ?少しくらい付き合えよ」
青年は強引だ。セロに手合わせを強要してくる。
「私がやろうか?丁度退屈してたんだ」
そう言って割って入ったのは芽依だ。
「なんだ?こんなチビっ子も冒険者なのか?セイランはよっぽど人手不足なんだな!」
「子供だからって見くびらないでね。お兄さんより強いんだから」
「言ったな?訓練場に来い。怪我をしても泣くんじゃねーぞ!」
そう言ってズカズカと訓練場の方へと歩いていく青年。
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