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勇者
悪足掻き
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「よく頑張ったわね。すぐに治すわ」
私は《過剰分泌》させた泉の水を使ってトコヤミを治療する。
芽依とマイにも水掛けて治療した。
『トコヤミ様があれの爆発から私を守ってくれて……』
エレは人の姿に戻り泣きそうな顔をしながら言っている。
『お前の鱗ではあの爆発には耐えられなかっただろう。我はエレを失って悲しむハル様を見たくなかっただけだ』
トコヤミの傷は回復しているが、彼はまだ地面に伏したままだ。
「トコヤミがエレ守ってくれたから最後にメトとマカミを助けてくれたのよ。ありがとうトコヤミ」
私はトコヤミの頭を優しく撫でる。
『勿体なきお言葉』
トコヤミは嬉しそうだった。
「芽依とマイもよく頑張ってくれたわね。二人が守ってくれなかったら危なかったわ」
「当然だよ」
そう言いながらも嬉しそうに笑顔を見せる芽依。マイも喜ぶかと思ったが反応がない。
「あの中にまだ人がいるです!」
マイが指差したのは破壊された車の残骸。メトが無造作に捨てたので地面に横倒しになっていた。
『生き残りがいるのか』
メトが車を掴んで揺すると中から男が一人転がり出て来た。
短めの茶髪の中肉中背。どこにでもいそうな二十歳位。この男が瞬間移動の能力者かも知れない。
「ひぃっ!?ま、待ってくれ!俺はシュウに騙されて連れてこられたんだ!」
メトが車で潰そうとしているがそれを止めた。彼の言っている事が本当なら情報を聞き出せる相手かも知れない。
「あなたも転生者?」
「そ、そうだ。いえ……そうです」
「瞬間移動はあなたの能力ね?」
「はい……」
「名前は?」
「アキオ」
素直に答えるアキオ。しかし何かをしようとしている気配を感じる。
右手をズボンのポケットに入れたままなのも気になる。
「右手を見せなさい」
ビクリと反応するアキオ。額には汗。
「嫌だね」
「お母さん!」
咄嗟に芽依が飛び出してきて私を抱き抱えると地面に転がる。
芽依の後ろ、さっきまで私のいた所で爆発が起こっていた。
「メイおねーちゃん!」
直ぐにマイが反撃。
アキオの足元から石の槍を無数に出現させて身体を貫いた。
芽依は軽鎧の背中部分に金属片が幾つも突き刺さっているが幸い致命傷には至らなかった。
爆発したのは手榴弾の様な物だろう。それを瞬間移動させて私を爆殺しようとしたのだと思われる。
「芽依、ありがとう。何で気付いたの?」
礼を言いながら芽依に泉の水を振り掛ける。
「何となくお母さんが危ないと思っただけだよ。守れて良かった……」
そう言って力無く笑う芽依。
「ぐはぁっ……!い、痛え……頼む……俺にも水を……」
アキオは腹部に五本の槍が突き刺さっていた。
すぐに槍を取り除き水を掛ければ治す事は出来るだろう。無論そんな事はするつもりはない。
「あなた達はどうしても私を抹殺したかったみたいね。何故?」
「俺を、殺せば……リーグニツを、敵に、回す事になるぞ……」
話す気はない、か。
泉の水を掛けて傷を塞ぐ。
槍を抜かずに。
「お、おいっ……ウソだろ……俺の身体がっ、俺の身体があぁぁぁっっ!?」
槍は身体と同化していた。修復された内臓は槍と結合してしまっている様だ。
「何故私を殺そうとするの?」
「神に言われたんだよ!」
「その神の名は?」
「知らない!教えてもらってない!!」
歯をガチガチと鳴らしながら必死に槍を抜こうとしているアキオ。
「もう一つ、あなたはリーグニツの者なの?」
「俺はリーグニツの勇者だ!召喚の儀で呼ばれたんだよ!」
召喚の儀?
アキオが言うには神の奇跡により一度だけ国を救う為に異界から勇者を呼び出せる様になったらしい。
「ありがとう。よく分かったわ」
「全部話したんだ……!助けてくれよ……!」
泣きじゃくりながら懇願してくるアキオ。
残念だが生かしておくつもりはない。瞬間移動の能力は危険過ぎる。
「今、楽にしてあげるわ」
私はアキオの肩に触れると《栄養吸収》で彼を塵に返した。
私は《過剰分泌》させた泉の水を使ってトコヤミを治療する。
芽依とマイにも水掛けて治療した。
『トコヤミ様があれの爆発から私を守ってくれて……』
エレは人の姿に戻り泣きそうな顔をしながら言っている。
『お前の鱗ではあの爆発には耐えられなかっただろう。我はエレを失って悲しむハル様を見たくなかっただけだ』
トコヤミの傷は回復しているが、彼はまだ地面に伏したままだ。
「トコヤミがエレ守ってくれたから最後にメトとマカミを助けてくれたのよ。ありがとうトコヤミ」
私はトコヤミの頭を優しく撫でる。
『勿体なきお言葉』
トコヤミは嬉しそうだった。
「芽依とマイもよく頑張ってくれたわね。二人が守ってくれなかったら危なかったわ」
「当然だよ」
そう言いながらも嬉しそうに笑顔を見せる芽依。マイも喜ぶかと思ったが反応がない。
「あの中にまだ人がいるです!」
マイが指差したのは破壊された車の残骸。メトが無造作に捨てたので地面に横倒しになっていた。
『生き残りがいるのか』
メトが車を掴んで揺すると中から男が一人転がり出て来た。
短めの茶髪の中肉中背。どこにでもいそうな二十歳位。この男が瞬間移動の能力者かも知れない。
「ひぃっ!?ま、待ってくれ!俺はシュウに騙されて連れてこられたんだ!」
メトが車で潰そうとしているがそれを止めた。彼の言っている事が本当なら情報を聞き出せる相手かも知れない。
「あなたも転生者?」
「そ、そうだ。いえ……そうです」
「瞬間移動はあなたの能力ね?」
「はい……」
「名前は?」
「アキオ」
素直に答えるアキオ。しかし何かをしようとしている気配を感じる。
右手をズボンのポケットに入れたままなのも気になる。
「右手を見せなさい」
ビクリと反応するアキオ。額には汗。
「嫌だね」
「お母さん!」
咄嗟に芽依が飛び出してきて私を抱き抱えると地面に転がる。
芽依の後ろ、さっきまで私のいた所で爆発が起こっていた。
「メイおねーちゃん!」
直ぐにマイが反撃。
アキオの足元から石の槍を無数に出現させて身体を貫いた。
芽依は軽鎧の背中部分に金属片が幾つも突き刺さっているが幸い致命傷には至らなかった。
爆発したのは手榴弾の様な物だろう。それを瞬間移動させて私を爆殺しようとしたのだと思われる。
「芽依、ありがとう。何で気付いたの?」
礼を言いながら芽依に泉の水を振り掛ける。
「何となくお母さんが危ないと思っただけだよ。守れて良かった……」
そう言って力無く笑う芽依。
「ぐはぁっ……!い、痛え……頼む……俺にも水を……」
アキオは腹部に五本の槍が突き刺さっていた。
すぐに槍を取り除き水を掛ければ治す事は出来るだろう。無論そんな事はするつもりはない。
「あなた達はどうしても私を抹殺したかったみたいね。何故?」
「俺を、殺せば……リーグニツを、敵に、回す事になるぞ……」
話す気はない、か。
泉の水を掛けて傷を塞ぐ。
槍を抜かずに。
「お、おいっ……ウソだろ……俺の身体がっ、俺の身体があぁぁぁっっ!?」
槍は身体と同化していた。修復された内臓は槍と結合してしまっている様だ。
「何故私を殺そうとするの?」
「神に言われたんだよ!」
「その神の名は?」
「知らない!教えてもらってない!!」
歯をガチガチと鳴らしながら必死に槍を抜こうとしているアキオ。
「もう一つ、あなたはリーグニツの者なの?」
「俺はリーグニツの勇者だ!召喚の儀で呼ばれたんだよ!」
召喚の儀?
アキオが言うには神の奇跡により一度だけ国を救う為に異界から勇者を呼び出せる様になったらしい。
「ありがとう。よく分かったわ」
「全部話したんだ……!助けてくれよ……!」
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