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勇者
転居
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トウヤにはまだまだ聞きたい事があるが、先に彼らがこれからどうするかを聞いておく。
「あの街に戻る所はありません。家も引き払ったし、ギルドには出国すると言って出てきました」
彼が第二の人生をスタートさせた街はディアブレルから北に行った所にある人間の国ヘリオスだった。
そこにはトウヤの能力を利用しようとしている者がいるかも知れないし、その者がルドガイアの手の者の可能性もある。
私はルドガイアの兵を倒しているので敵対状態であるだろう。
トウヤを使って私を殺そうとしてきたら?
私は実体化が解けるだけだから死なないが、芽依達が狙われたらどうだろうか?
トウヤをこのまま帰すのは危険か。
「行く所が無いならこのままここで暮らさない?」
「よろしいのですか?」
「ええ。あなたに敵対されると被害が大きそうだから」
「そんな、敵対などしません」
「リタを人質にとられて命令されたらどう?」
リタの為ならやるだろう。トウヤは何も言えずに俯いた。
「ここならばリタの安全は保証できるわ。あなただけなら外を旅してきてもいい」
「それはつまり人質という事ですか?」
「そんなつもりはないけれど、あなたがそう思うならそうなのかも知れないわ」
大森林の外でリタを拐われる危険性の事を言ったつもりだったが、彼にはそうとれたらしい。
現状、互いに信用が出来ていないのだから当然か。
「分かりました。ここでお世話になります。リタもいいかい?」
「うん!パパと一緒ならどこでもいいよ!」
彼らの住まいと必要なものを揃えましょう。
「家については私が建てましょう」
「ありがとう。お願いね」
ライブラが新しく家を建ててくれる事になった。
「じゃあ今日から仲間だね。私はメイ。リタちゃんは読み書きは出来るかな?」
芽依がリタに目線を合わせて聞いている。
「えーと……少しだけなら。パパに教わったよ」
「私の稼ぎが悪いせいで、この子には学校にも行かせてやれていません」
この世界で学校に通えるのは裕福な家だけだ。トウヤの稼ぎが良かったとしても、家柄で入学を拒否される事もあるだろう。
「読み書きについては僕達が教えられるよ。メイもここにいる間は教えてあげられるかい?」
「もちろん!」
颯太と芽依が教えてくれるなら学校に行く必要もないだろう。
同年代の友達が出来ないのが残念だが。
「魔法を覚えたかったらソータお兄ちゃんかお母さんに聞けば教えてくれるよ」
「魔法使えるかな?」
「大丈夫、きっと得意な魔法があるはずだよ」
不安そうに聞くリタに芽依が笑顔で答えると、リタも笑顔で頷いていた。
「教育が必要なのはリタだけじゃないんだ。森に暮らす種族の子供達を集めて学校のようなものができるといいのだけど」
「それは良い考えだわ。道も整備が進んでいるし、誰でも通える学校が出来たら村もきっと豊かになる」
頭を使う事は良い事なのよ。今までになかった発想を閃くのも若い世代の方が多いし、学力を向上させればきっと良い方向にいくはず。
「まだまだ先の話だけどね。各種族の子供の数や学力の調査をしてどれくらいの規模の学校が必要か決めなくてはいけないし、教師の教育も必要だ」
颯太は本当に優秀だわ。
話が飛んでしまったけど、トウヤとリタの家をライブラが作り始め、私は生活に必要な着替えや食器などを泉の水から《物質変換》で生成する。
暫くはこの小屋で暮らしてもらう事になるが、ここも不便というわけでもない。快適に暮らせる筈だ。
それからトウヤにはイルメイアに来た時に会った神の事と私が転生者を憎んでいるという情報が何処から来たのかを聞いておいた。
神の名前はベイリーズィアというらしい。見た目は北欧系の成人女性だったそうだ。私を殺す様に指示されなかったところからして、アルシファーナの賛同者なのかも知れない。
転生者を憎んでいるというのはトウヤの思い込みで、ある日ベイリーズィアから泉の精霊ハルが転生者を二名滅ぼしたと告げられたらしい。
転生者を殺すと他の転生者に伝えられる仕組みになっているだろうか?
「あの街に戻る所はありません。家も引き払ったし、ギルドには出国すると言って出てきました」
彼が第二の人生をスタートさせた街はディアブレルから北に行った所にある人間の国ヘリオスだった。
そこにはトウヤの能力を利用しようとしている者がいるかも知れないし、その者がルドガイアの手の者の可能性もある。
私はルドガイアの兵を倒しているので敵対状態であるだろう。
トウヤを使って私を殺そうとしてきたら?
私は実体化が解けるだけだから死なないが、芽依達が狙われたらどうだろうか?
トウヤをこのまま帰すのは危険か。
「行く所が無いならこのままここで暮らさない?」
「よろしいのですか?」
「ええ。あなたに敵対されると被害が大きそうだから」
「そんな、敵対などしません」
「リタを人質にとられて命令されたらどう?」
リタの為ならやるだろう。トウヤは何も言えずに俯いた。
「ここならばリタの安全は保証できるわ。あなただけなら外を旅してきてもいい」
「それはつまり人質という事ですか?」
「そんなつもりはないけれど、あなたがそう思うならそうなのかも知れないわ」
大森林の外でリタを拐われる危険性の事を言ったつもりだったが、彼にはそうとれたらしい。
現状、互いに信用が出来ていないのだから当然か。
「分かりました。ここでお世話になります。リタもいいかい?」
「うん!パパと一緒ならどこでもいいよ!」
彼らの住まいと必要なものを揃えましょう。
「家については私が建てましょう」
「ありがとう。お願いね」
ライブラが新しく家を建ててくれる事になった。
「じゃあ今日から仲間だね。私はメイ。リタちゃんは読み書きは出来るかな?」
芽依がリタに目線を合わせて聞いている。
「えーと……少しだけなら。パパに教わったよ」
「私の稼ぎが悪いせいで、この子には学校にも行かせてやれていません」
この世界で学校に通えるのは裕福な家だけだ。トウヤの稼ぎが良かったとしても、家柄で入学を拒否される事もあるだろう。
「読み書きについては僕達が教えられるよ。メイもここにいる間は教えてあげられるかい?」
「もちろん!」
颯太と芽依が教えてくれるなら学校に行く必要もないだろう。
同年代の友達が出来ないのが残念だが。
「魔法を覚えたかったらソータお兄ちゃんかお母さんに聞けば教えてくれるよ」
「魔法使えるかな?」
「大丈夫、きっと得意な魔法があるはずだよ」
不安そうに聞くリタに芽依が笑顔で答えると、リタも笑顔で頷いていた。
「教育が必要なのはリタだけじゃないんだ。森に暮らす種族の子供達を集めて学校のようなものができるといいのだけど」
「それは良い考えだわ。道も整備が進んでいるし、誰でも通える学校が出来たら村もきっと豊かになる」
頭を使う事は良い事なのよ。今までになかった発想を閃くのも若い世代の方が多いし、学力を向上させればきっと良い方向にいくはず。
「まだまだ先の話だけどね。各種族の子供の数や学力の調査をしてどれくらいの規模の学校が必要か決めなくてはいけないし、教師の教育も必要だ」
颯太は本当に優秀だわ。
話が飛んでしまったけど、トウヤとリタの家をライブラが作り始め、私は生活に必要な着替えや食器などを泉の水から《物質変換》で生成する。
暫くはこの小屋で暮らしてもらう事になるが、ここも不便というわけでもない。快適に暮らせる筈だ。
それからトウヤにはイルメイアに来た時に会った神の事と私が転生者を憎んでいるという情報が何処から来たのかを聞いておいた。
神の名前はベイリーズィアというらしい。見た目は北欧系の成人女性だったそうだ。私を殺す様に指示されなかったところからして、アルシファーナの賛同者なのかも知れない。
転生者を憎んでいるというのはトウヤの思い込みで、ある日ベイリーズィアから泉の精霊ハルが転生者を二名滅ぼしたと告げられたらしい。
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