泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

文字の大きさ
382 / 453
竜の国

卒業

しおりを挟む
その日私はミードという蜂蜜から作られたお酒を試しに飲んでみたが、結果は前と同じだった。

私は相当酒に弱いらしい。

ベッドの上で頭を押さえながら考える。時刻は分からないが既に深夜。隣では芽依が寝息を立てていた。

飲酒については泉にいる時に少しずつ慣らしていけば良いだろう。外で酒を飲むのは断れば良い。不意にアルコールを取り込んでしまった時の事が心配だ。戦わざるを得ない者の中には私の弱点を突いてくる者もいるかもしれない。今度は即時に泉の水で中和できないか試してみるか。

次の日、朝食の時に私が倒れた後の事を聞いてみた。というのは皆にもお酒を飲んでもらってどの程度酔うのかを試してもらう様に頼んでいた。
その為に初日と同じ様にトウヤ親子とマサ達にも来てもらった。

颯太は全く酔わず、精霊達は普通に酔ったそうだ。個人差があり、強い者順ならカグツチ、サヅチ、ミツハ、ククノチ、シナツ、シラヒ、ワダツミ、イヒカ、ミカヅチ。

精霊達の中でミカヅチが一番弱いが、それでも酔い潰れたりはしなかったらしい。

精霊が酒に弱い訳ではなさそうね。

流石にアクアには飲ませられなかった。因みにカナエも飲んだが軽く酔っただけだったらしい。

意外な事に芽依は全然酔いが回らなかったそうだ。『美味しい!』と次々と飲んでいくので流石にセロが止めたらしいが。

セロ、リン、ミラは程よく酔う程度。
エルは『私、お酒強いんですよ~』と言っていたが、二杯でギブアップ。マイは颯太同様全く酔わず、ライブラはそもそも酔うという現象が起こらない。

リタには飲ませられないが、トウヤは生前と同じくらいの酒量だと話していて、マサとナナも同じだと言っていた。

トウヤ達の言っている『生前と同じ』が正しければ私が酒に弱いのにも納得だ。
ただ前世では酒量を増やそうと努力した事はないので改善出来るかは分からない。

情報も得られたので皆に感謝を言いつつ朝食を片付けてネーロの所に向かう。

今日も同じ様に料理を習い、次の日も同様だった。残りの2日はアレンジ料理とデザートに当たるものを教えてもらった。

「今日で最後だな」
「はい。丁寧なご指導ありがとうございました」
「いやいや、生徒の出来が良いから教え甲斐があったよ」

ネーロは笑顔でそう言ってくれた。

「私はネーロさんは一流の料理人だと思います。その腕を振るうのに相応しい所で働いてみませんか?」

報酬を渡す時に私はネーロに提案する。

「いや、折角の申し出だが、俺は好きな所で料理を作りたいんだ。仕事先は自分で探すよ」
「分かりました。報酬とは別にこちらも受け取ってください」

手渡したのは小型の樽に入った泉の水だ。

「それを飲めば大抵の毒や病気を治せます。ネーロさんの好きに使ってくださって結構です」
「ありがとうな」
「お世話になりました」

別れの挨拶を交わして家を出る。

新しい料理を覚える事が出来て充実した五日間だった。これで颯太に料理を教えられるし、冒険者として旅をしている間の食事も華やぐだろう。

帰りに食材を大量に買い込んで指輪にしまうと、私は王城へと向かった。

入り口では止められる事もなく、そのまま通される。

「国王陛下がお待ちです」
「ありがとう」

警備の兵に礼を言って奥へと進む。

途中で騎士がやって来て案内をしてくれた。通されたのは会議室、中にはラムドとエリオットとフランシス、ファディア国王エルンストとメリーゼハーヴが居た。

「精霊殿よ。大会に出るというのは誠か?」

入るなり聞いてきたのはメリーゼハーヴ。

「私は出ないわ。出るのは私の家族とパーティのメンバーよ」
「なんじゃそうか……妾もエントリーしようかと思うておったのに」

残念そうにしているが、私と戦いたかったのだろうか?

「メリーゼハーヴ殿が出場したら大会になりませんよ」

フランシスはそう言って笑っていたが、芽依なら勝てるかもしれないわよ?
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす
ファンタジー
 女性向け異世界ファンタジー(逆ハーレム)です。ヤンデレ、ツンデレ、溺愛、嫉妬etc……。乙女ゲームのような恋物語をテーマに偉大な"五大国の王"や"人型聖獣"、"謎の美青年"たちと織り成す極甘長編ストーリー。ラストに待ち受ける物語の真実と彼女が選ぶ道は――? ――すべての女性に捧げる乙女ゲームのような恋物語―― 『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』 五大国から成る異世界の王と たった一人の少女の織り成す恋愛ファンタジー ――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。 ――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして…… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない―― 出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは? 最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―― そして次第に明らかになる彼女の正体とは……?

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味
ファンタジー
※完結しました。感想をいただけると、今後の励みになります。よろしくお願いします。 これは、今まで暮らしていた世界とはかなり異なる世界に移住することになった僕の話である。 ようやく再就職できた会社をクビになった僕は、不気味な影に取り憑かれ、異世界へと運ばれる。 気がつくと、空を飛んで、口から火を吐いていた! これは?ドラゴン? 僕はドラゴンだったのか?! 自分がドラゴンの先祖返りであると知った僕は、超絶美少女の王様に「もうヒトではないからな!異世界に移住するしかない!」と告げられる。 しかも、この世界では衣食住が保障されていて、お金や結婚、戦争も無いというのだ。なんて良い世界なんだ!と思ったのに、大いなる呪いがあるって? この世界のちょっと特殊なルールを学びながら、僕は呪いを解くため7つの国を巡ることになる。 ※派手なバトルやグロい表現はありません。 ※25話から1話2000文字程度で基本毎日更新しています。 ※なろうでも公開しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

処理中です...