泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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竜の国

変身の術

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「トコヤミだよね?」
「メイ様は我が分かるのですか?」

驚いた。芽依は人の姿になったトコヤミを一目で言い当てた。

「トコヤミ、人というのは衣服を纏うものなんだ。取り敢えずこれを腰に巻いておくといい」

一緒に帰ってきた颯太が大きめの布を手渡している。

「ありがとうございます」

受け取った布を腰に巻こうとしているが上手く出来ない様だ。

「貸しなさいトコヤミ」
「はい……申し訳ありません、どうも勝手が違って動きにくく……」

私達にとっては簡単な事でも初めて人の姿になったトコヤミには大変な事の様だ。

「これでよし。それでは服を生成するから待っていて」
「はい」

服を作って手渡そうとしたが、彼が一人で着られるとは思えない。手伝おうかと思っていたら颯太が「僕が手伝うよ」と言って代わってくれた。

私は颯太に任せて後ろに下がる。

「ハルさんは平気なの……?その、男の人の裸とか」

リンが近くにやってきて聞いてくる。

「ええ。家族だし特には」
「そうなんだ……」

八十歳まで人間やっていたのだし今更男性の裸くらいで恥ずかしがったりはしないわよ。

颯太が手伝って服を着る事が出来た。
サイズは大きめにしてあったが丁度良かったらしい。

「ソータ様ありがとうございます」
「気にしないで。よく似合っているよ」

颯太は微笑みながらトコヤミに言っていた。

『トコヤミよ、その姿は何だ?』

芽依達の後ろから現れたカクカミもトコヤミを見て直ぐに分かった様だ。

「そこにおられる海竜の長殿から人の姿になる術を教わったのだ」
『なんだいそれ?俺たちにも使えないかな?』

カクカミの更に後ろからメトが頭だけを出しながら言っている。

「おぉ……これは壮観じゃな。精霊殿はこの様な眷属を沢山率いておるかえ?」

カクカミ達を見ながら驚いているメリーゼハーヴ。

「みんなにも紹介したいわね。夜には一度集まってもらいましょうか」

夕食の準備をして、メリーゼハーヴに紹介する為にトウヤ達やマサ達も呼んで全員で食事をする事にした。

「召喚勇者は無事に見つかったのじゃな」
「ええ。協力関係よ」

眷属達も呼んで、メリーゼハーヴを全員に紹介する。

「この方が、海竜の長……」

トウヤは驚きながら凝視している。

『スゴく強そうだね!』
『海竜は仲間の勢力になるのですね。心強いですね』

そう言っているのはマカミとギョクリュウ。

『しかし陸上戦力は期待できないです。ルドガイアが攻めてきた場合は大森林の戦力が主戦力ですよ』

ヤトは遠慮なく言っていた。

「その通りじゃ。我ら海竜は海では無類の強さを誇るが陸ではお世辞にも戦力にはならぬ。だが、味方の海上輸送の安全確保や敵国の輸送を妨害する事はできるぞ。その気になれば船を曳いて海を行く事が出来るぞ」

適材適所ね。海の安全が確保できたのは大きいと思う。

「メリーゼハーヴ、変身の術は竜以外では使う事は出来ないのかしら?」
「試した事が無いので分からんのぅ。教えるので試してみると良い」

メリーゼハーヴがそう言うとメトとマカミは喜んでいた。分かりやすく喜んでいなかったカクカミ、ヤト、ギョクリュウ、オオトリも試してみるらしい。

「みんなが人の姿になれたら色んな所に一緒に行けるね!」

嬉しそうに言う芽依。それを見て全員更にやる気になった様だ。

『私も覚えられないかな……?』

カナエまでそんな事を言い出していた。

メリーゼハーヴに術の手解きを受けて全員が試していたが、結局誰も成功する事はなかった。

「ふむ……能力的には申し分ないはずなのじゃが、やはり竜族にしか出来ぬのかもしれぬな」
「そうかも知れないわね」

残念そうに俯く一同。
何とかしてあげたいわね。術式は魔法に近いものがあるし、解析してみようかしら。

その日は食事と顔合わせで終わり、その晩から私は術の改良を試してみる事にした。
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