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竜の国
ノイエス救援
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私が作った飛行魔法は安直な発想から生まれたものだ。
トコヤミやオオトリの様に翼があれば飛ぶことができるだろう。最初は風の魔法で背中に翼を生やしてみてはどうだろうかという試みだった。
術式を組み上げるのはそう難しくなく、風の翼の形は簡単に出来た。
問題はそこからだ。
羽ばたく事によって浮力を得ようとしたのだがどうすれば翼を動かすことができるのかいまいち分からない。
オオトリやトコヤミやエレに話を聞いて感覚を再現してみたが今度は術式が複雑化してしまい、私か芽依くらいしか制御出来ない魔法になってしまった。
そこで発想を変えてみた。
翼は元々風の魔法なのだから、それを消費する事で浮力や推進力に変える方式を試す。
これには複雑な術式も必要とせず、魔法の発動中の微調整が出来れば自由に空を飛ぶ事が出来た。
こうして飛行魔法が完成した。
「やっぱり高速飛行だと風が痛いよ……!」
『私が結界を張ります!』
「ありがとうカナエちゃん!」
風を切り高速で飛んでいくと、少し後ろで芽依とカナエが話していた。
私にも結界を張ってくれたので飛びやすくなる。
本当は風の結界まで含めて飛行魔法にしたかったが、それだと消費が大き過ぎる上に航続距離が極端に短くなってしまったので無しになった。
ゴーグルかヘルメットの様なものがあった方が良いかも知れないわね。
北方向に飛んで数分、進軍中の歩兵達を飛び越し、騎兵やグリフォン達を見つけた。
こちらに侵攻する魔物の群れと交戦になっている。
彼らがノイエスに到着するのは随分と遅くなってしまうだろう。
「メト!」
『はい!』
騎兵達の少し後方に着地すると《眷属召喚》でメトを呼び出す。
「ここの魔物を蹴散らして。なるべく逃がさない」
『分かりました!』
メトは立ち上がり大きな声で吠えた。
空気が振動し、目の前の戦場にいる全ての者が動きを止める。
『聞け、魔物共!お前達はハル様の守護する国に侵攻した。今からお前達を全員滅ぼす、一匹残らずだ!ディアブレルの兵は道を開けろ。退かなければ巻き込むぞ!』
そう言って巨体を揺らしながら走り出す。
それを見て騎兵達は慌てて左右に避け、魔物達も逃げていく。
一方的な蹂躙になるだけだろう。ここはメトに任せて私達はノイエスに向かう。
ノイエスの街はセイランの街と同じくらいの規模で、高い石壁に囲まれていた。
その壁をよじ登ろうとしているのは包囲しているゴブリンやオーク。
壁の上には兵士がいて矢を射ったり石や熱湯を掛けたりして落としている。
オーガー数体が門を破壊しようと巨大な石斧を打ち据えているが、鉄製の扉は凹みはしたものの役割を果たしていた。
「魔法でやっつけるよねお母さん?」
「ええ、三方向に分かれてやるわ。門の周りと高い位置まで登っている箇所を優先でお願い」
「うん!」『わかりました!』
門は北と南と西にあり、どれも攻撃を受けていた。私が北門に向かうと芽依は南門、カナエは西門に飛んでいった。
到着すると門の付近に群がる魔物達を空から攻撃する。
まずは門に取り付いているオーガー達に光線を放って貫く。
私を見つけて弓矢や投石で攻撃してくるが届く事は無い。
私は地面から土の槍を無数に出して次々と貫いていく。
彼らに退きなさいとは言えない。
ここで倒しておかなければまたいずれ攻めてくるだろう。
「降伏する気のあるものは武器を捨てて両手を上げなさい。その気の無い者は全てここで殺します」
一応警告はしておく。
特に降伏を示す素振りは見られなかったので攻撃を再開する。今度は範囲攻撃を意識して違う魔法を詠唱する。
私が発動したのは炎の竜巻を起こす魔法。
渦巻く火柱が生き物の様にうねりながら外壁に群がっている魔物達を焼いていく。殆どの魔物は原形を留める事のない程焼かれて地面に転がった。
トコヤミやオオトリの様に翼があれば飛ぶことができるだろう。最初は風の魔法で背中に翼を生やしてみてはどうだろうかという試みだった。
術式を組み上げるのはそう難しくなく、風の翼の形は簡単に出来た。
問題はそこからだ。
羽ばたく事によって浮力を得ようとしたのだがどうすれば翼を動かすことができるのかいまいち分からない。
オオトリやトコヤミやエレに話を聞いて感覚を再現してみたが今度は術式が複雑化してしまい、私か芽依くらいしか制御出来ない魔法になってしまった。
そこで発想を変えてみた。
翼は元々風の魔法なのだから、それを消費する事で浮力や推進力に変える方式を試す。
これには複雑な術式も必要とせず、魔法の発動中の微調整が出来れば自由に空を飛ぶ事が出来た。
こうして飛行魔法が完成した。
「やっぱり高速飛行だと風が痛いよ……!」
『私が結界を張ります!』
「ありがとうカナエちゃん!」
風を切り高速で飛んでいくと、少し後ろで芽依とカナエが話していた。
私にも結界を張ってくれたので飛びやすくなる。
本当は風の結界まで含めて飛行魔法にしたかったが、それだと消費が大き過ぎる上に航続距離が極端に短くなってしまったので無しになった。
ゴーグルかヘルメットの様なものがあった方が良いかも知れないわね。
北方向に飛んで数分、進軍中の歩兵達を飛び越し、騎兵やグリフォン達を見つけた。
こちらに侵攻する魔物の群れと交戦になっている。
彼らがノイエスに到着するのは随分と遅くなってしまうだろう。
「メト!」
『はい!』
騎兵達の少し後方に着地すると《眷属召喚》でメトを呼び出す。
「ここの魔物を蹴散らして。なるべく逃がさない」
『分かりました!』
メトは立ち上がり大きな声で吠えた。
空気が振動し、目の前の戦場にいる全ての者が動きを止める。
『聞け、魔物共!お前達はハル様の守護する国に侵攻した。今からお前達を全員滅ぼす、一匹残らずだ!ディアブレルの兵は道を開けろ。退かなければ巻き込むぞ!』
そう言って巨体を揺らしながら走り出す。
それを見て騎兵達は慌てて左右に避け、魔物達も逃げていく。
一方的な蹂躙になるだけだろう。ここはメトに任せて私達はノイエスに向かう。
ノイエスの街はセイランの街と同じくらいの規模で、高い石壁に囲まれていた。
その壁をよじ登ろうとしているのは包囲しているゴブリンやオーク。
壁の上には兵士がいて矢を射ったり石や熱湯を掛けたりして落としている。
オーガー数体が門を破壊しようと巨大な石斧を打ち据えているが、鉄製の扉は凹みはしたものの役割を果たしていた。
「魔法でやっつけるよねお母さん?」
「ええ、三方向に分かれてやるわ。門の周りと高い位置まで登っている箇所を優先でお願い」
「うん!」『わかりました!』
門は北と南と西にあり、どれも攻撃を受けていた。私が北門に向かうと芽依は南門、カナエは西門に飛んでいった。
到着すると門の付近に群がる魔物達を空から攻撃する。
まずは門に取り付いているオーガー達に光線を放って貫く。
私を見つけて弓矢や投石で攻撃してくるが届く事は無い。
私は地面から土の槍を無数に出して次々と貫いていく。
彼らに退きなさいとは言えない。
ここで倒しておかなければまたいずれ攻めてくるだろう。
「降伏する気のあるものは武器を捨てて両手を上げなさい。その気の無い者は全てここで殺します」
一応警告はしておく。
特に降伏を示す素振りは見られなかったので攻撃を再開する。今度は範囲攻撃を意識して違う魔法を詠唱する。
私が発動したのは炎の竜巻を起こす魔法。
渦巻く火柱が生き物の様にうねりながら外壁に群がっている魔物達を焼いていく。殆どの魔物は原形を留める事のない程焼かれて地面に転がった。
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