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竜人族の島

保護と鹵獲

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魔動力船を制圧したので、追い掛けられていた3隻の船の所に行って状況を説明しよう。

ウルちゃんに乗って船に近付く。

…逃げてない?

まあそうだよね。

「あの!私達はメルドガルビルさんに頼まれて皆さんを保護しに来ました!」
「本当か?」
「はい!」

ウルちゃんに出来るだけ静かに着水してもらって私の姿が見える様にする。

それぞれ武器を構えて警戒していたけど、私の姿を見て武器を納めてくれた。

「お嬢さんはメルドガルビルの人間なのか?」

先程返事をしてくれた髭面のおじさんが船を近付けながら聞いてくる。

「いえ、訳あってメルドガルビルさんのお手伝いをしている冒険者です。」
「冒険者…?という事は西から来たのか?」
「はい。詳しい話は後でしましょう。」

ウルちゃんと船3隻位ならまとめて港に転移できるだろう。

「《リージョナルテレポート》!」

手早く魔法を構築して発動すると、一瞬でメルドガルビルの港に到着した。

「な、何!?」

全員驚いて周囲を警戒している。
桟橋には竜人族ドラゴニュートが居て船の係留を手伝ってくれた。

そうしていると大型の魔動力船も転移して来た。リオさんがやったんだろう。
それを見て全員呆然としていた。

「ようこそメルドガルビルへ。私は案内をするように頼まれた冒険者のミナです。」
「あ、ああ…リーダーのガランだ。さっきは助かったよ。」

戸惑いながらも手を差し出してきたので私も握り返す。

「小さい…いや、若いな。お嬢さん幾つだ?」
「13ですけど。」
「大陸の方ではそれくらいから冒険者をやるのか?」
「もっと若い子も居ますけど人それぞれだと思いますよ。」

孤児の子とかもっと早くから冒険者をやってるもんね。

「そこの竜人族ドラゴニュート達!捕虜の搬送を手伝って!」
「お、おう!」

リオさんに声を掛けられて戸惑いながら指示に従うメルドガルビルの竜人族ドラゴニュートさん達。

「それで、君達は何で竜人族ドラゴニュートに味方を?」
「雇われているんですよ。冒険者として。」

念の為伏せておくことにした。

ガランさんと数人をメルドガルビルさんの所に案内する。
途中、アルヴォアルさんに会ったので居場所を聞くとレアさんの所で作戦を練っているらしい。

私達の泊まっている屋敷へと向かった。

「人間の皆さんを保護してきました。」
「メルドガルビル殿、この度の受け入れ感謝致します。」
「いやいや、大した事ではないよ。それよりもこの町からの脱走人を保護していただいて感謝している。」
「それこそ礼には及びません。1人でも多くの同胞を助けられて喜んでおります。」

2人はしっかりと握手を交わしていた。

ガランさんはレアさん達を見て驚いている。

「初めまして、ディルロード帝国の皇女のレアです。ここでは食料の改善と作戦立案を担当しております。」

レアさんに続いて護衛の3人も自己紹介する。

「これは驚いた…まさか本当に人間の国から力を借りているとは…。」
「少し予定とは違った形になったが、より良い方向に向かっておるよ。」

ガランさんはメルドガルビルさんの事を全部信用していた訳ではなかったみたい。でもこれでガルビル氏が本気なのが分かっただろう。一緒に来ていた青年達も嬉しそうに頷き合っていた。

「それで当面はこの町で暮らす訳だが、まもなくこの辺りは戦場になる。あなた達の力を借りる事になるやも知れん。」
「勿論共に戦いましょう。しかし怪我人や子供は戦場に出すつもりはありません。どこかに空いている建物はありませんか?」
「それなのだが…残念ながら今はどの建物も住んでおってな…。」

良い感じに話が進んでいたけど早速トラブル発生かな?

「あの、土地を貸していただければ建てますけど。」
「ミナ殿は建築の心得もあるのか?」
「はい。簡単なものなら資材も無しで大丈夫です。」

私の言った事を聞いて首を傾げるメルドガルビルさんとガランさん。

「分かった……土地を用意するので頼めるかな?」
「わかりました!」

いつもの建設ビルディングでサッサと建ててしまおう。

建設の様子を見たいとメルドガルビルさんとナオトさん、ガランさん達がついて来た。

農地と居住地の間に荒地があるのでそこに簡易的な家を作る事に。

3回建てのアパートみたいなものを想像してオーバーブーストを掛けた《建設ビルディング》で作っていく。

水は《水生成クリエイトウォーター》を掛けた桶を設置。排水系は建物に組み込んでしまおう。浄化設備については過去の世界でやった方法、土の精霊さんに力を借りてみる。

強度は最強に。ウルちゃんのブレスに耐えられるくらいかな。

簡易的なベッドや机、椅子がいるね。アウラさんに送ってもらおう。

「はい、出来ました。」

みんなしんと静まり返って何も言わない。

あれ?ダメだったかな…?

「ミナ殿…それはどうなっておるのだ?何をしたらそうなる?」

メルドガルビルさんは興奮気味に私に詰め寄ってくる。

「ええと…魔法です。」
「今のは大陸の魔法使いなら誰でも出来るのか?どれくらいで習得できる?」
「ええと、その…」

どうしよう…想像以上に食いついてきた。

「俺が代わりに答えましょう。まず今の魔法は一般的に覚える事が難しいもので、習得には才能が必要かと。あとこれだけの規模を一瞬で作るのはおおよそ人のできるものではありません。正直俺も驚いています。」
「そうか…それ程か…」

ナオトさんが説明してくれてメルドガルビルさんは落ち着いたみたい。

「正直この技術で各関所に砦を作れば防衛が容易になるのですがね…。」
「それには及ばんよ。これは我々の戦いだ。」

これくらいなら簡単にできるし、安全を確保できるならナオトさんが言った方法を実行した方が被害が少なくなるんじゃないかな?

「彼らにも考えがあるんだ。これ以上君が力を使う必要はないらしい。」
「氏族同士の争いに人間が介入し過ぎちゃいけないって事何でしょうか?」
「いや、そうじゃないんだよ。」
「それなら今後の事を考えて…」
「今回の戦いでは竜人族ドラゴニュートの犠牲者を増やしたいんだ。」

犠牲者を増やしたい?どういう事…?

出来上がった建物を見学しているメルドガルビルさん。

私は一通り設備の説明をして、屋敷へと戻る事にした。
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