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アスティア
最後の戦い
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食事会も終えてみんなには今日は屋敷に泊まってもらいゆっくりしてもらおう。
明日にはダンジョンに避難していた人達が地上に戻ってくる。それぞれの国に戻って説明とかで大忙しだ。
ユキさん達も疲れているのだろう、みんな早めに自室に戻って行った。
さて……
みんなが寝静まった頃、私は神界に移動する。
アウレリア様達と、レナトゥスが待っていた。
「私はセントラルコアに直接接続を試そうと思います」
私が来るなりレナトゥスが告げる。
「はい。そうするだろうと思っていました。でも1人では無理でしょう。私も行きます」
私はセントラルコアの事を知っている。
流れ込んできた記憶の中にあるのを見つけていた。
直径は1万3千キロで元のレナトゥスと同じサイズのサブコアを4つ従えている。たとえ彼女が万全でも勝てる見込みのない相手だ。
「しかしこれは我々の戦いです。あなたを危険に晒す訳にはいきません」
「これは私達の為でもあるんです。レナトゥス以外のドゥームが次元を渡ってアスティアに来るかも知れません。そうならない様にレナトゥスと同じ変異を全てのドゥームにさせる必要があると思うんです」
「その通りですが……」
レナトゥスは私が行くと言い出すとは思っていなかったのかも知れない。
「私はアスティアを守る為に行くんです。1人より2人の方が絶対良いから協力させてください」
「分かりました。協力に感謝します」
レナトゥスは人間の様に深々とお辞儀をする。自分にお辞儀をされているのだから複雑な気分だ。
「行くのですねミナ」
「はい。これで最後です」
アウレリア様がそばにやってくる。
「無事に帰って来てください。それまでは私達がアスティアを支えます」
「勿論です。必ず帰ります」
「ところで…他の皆には伝えなくて良かったのですか?」
アウレリア様は真っ直ぐ私を見つめながら聞いてくる。
「はい。心配させたくないし、言えばついて行くって言うだろうから…。正直今回はみんなに私の力を分けてる余裕がないと思うんです。取れる戦法は一撃離脱。2人で突撃する方が成功率が高いかなって」
こんな無茶に付き合わせたくない。今度こそ犠牲者が出てしまう。
「…それなら仕方ないわね」
背後からリオさんの声が聞こえた。
慌てて振り返ると腰に手を当てて怒った顔をしたリオさんが目の前にいた。
屋敷で寝ているはずのみんなもその後ろに立っていた。みんなフル装備だった。
「まさかみんな…知ってたの?」
「当たり前でしょ。ミナはすぐ顔に出るからね」
リオさんはそう言いながら私の顔を覗き込んでからデコピンをする。
「いたっ…」
「黙って行こうとしたバツよ。みんなから一回ずつね」
「ん、全力でやる」
「むりむりむり…頭無くなっちゃう」
ソラちゃんの力でデコピンなんかしたら死ぬからね?
「冗談はそれくらいにして、だ。私達はミナと一緒に行くつもりで待っていたんだぞ」
ルーティアさんがこちらに歩いてくる。
どうやって来たんだろう?実体化アウラさんが居るしテュケ君でもここに来れるのかな?
「残念ながら足手纏いの様だから今回は諦めるさね。だが、必ず帰ると約束してくれ」
「はい。必ず帰ります」
ルーティアさんは私の肩をポンと叩くと「約束だぞ」と言って離れて行く。
「本当はゲンコツの一つでもくれてやるつもりだったんだが、それは帰ってくるまで取っておいてやる」
今度はダキアさんとアリソンさんだ。
「えぇ…帰ってき辛いです」
「ミナちゃんが帰ってこなかったらダキアのせいだからねー」
「おおう…じゃあ帰ってこなかったら迎えに行きがてらゲンコツ落とすからな」
「はい…絶対帰ってきます」
ダキアさんは頭をクシャクシャと撫でてくれ、アリソンさんにはギューっと抱きしめられた。
「こんな面白そうな戦いに行けないなんてなぁ…。帰ってきたらダンジョンでシュミレートしてくれよ!俺も戦ってみたい」
「こんな時に何を言ってるのよ…」
「ミナ…絶対、絶対に帰って来るんだぞ。約束だ」
「うん。約束、必ず帰るからね」
マサキさん一家とも挨拶を交わす。
そうやって全員と挨拶をしていった。
そして最後。
「ミナさん、どうしても行かなくちゃダメなんですか…?こっちに来た者を迎撃するのではダメなんですか?」
「うん。初めはこっちに来たら全力で迎撃すればいいかもって思ってたんだけど、記憶を辿って想定してみたら、こっちにくるドゥーム群体の規模がレナトゥスの千倍になるみたいだったから迎撃は無理そうなんだよ」
ユキさんは私に行って欲しくないみたいだ。今にも泣き出しそうな表情で聞いてくる。
「私達でも足手纏い?」
「ごめんね。足手纏いっていうか守りきれないと思う。自分の事で手一杯になると思うんだよ」
ソラちゃんは一緒に行きたがっていた。
「本当に帰って来られるの?」
「それは…一応考えがあります。上手く立ち回れば多分…」
リオさんには嘘はつけそうにない。
なので正直に答えた。
「俺なら死なないし良いだろ?」
「ダメだよ。死なないっていうのは私がダメージを肩代わりしているだけなんだからね」
テュケ君も一緒に行きたがっている。でも今回ばかりは連れていってあげられない。
「ミナ、私はあなたのサポートです。あなたが帰るまでは仲間達の魂の分離はしません。あなたが帰らなければアスティアは滅びます。心してください」
「分かったよアウラさん。帰るまでのサポート宜しくね」
実体化しているアウラさんに答える。
このアウラさんはヘルプ機能としてのアウラさんと同一だ。必ず一緒に帰って来ようね。
「私達は存在力が持つ限りアスティアを支えています。貴女が戻ってくる頃には消えているかも知れません」
アウレリア様だ。神様達を代表して話してくれている。
「最後までご迷惑をお掛けします」
「存在力が切れたら私達は輪廻の輪に還ります。また何処かで会えたら良いですね」
「はい。また会える日を楽しみにしています」
アウレリア様と握手を交わす。思えばこの方が私を転生させてくれなければここには居なかったんだ。
みんなと出会えなかったんだ。
今はここに来て本当に良かったと思うし、これからもこの世界を守っていきたい。その為に今から大仕事をやって来る。
「ミナさん…!行かないでください!ミナさんが帰らなかったら、私…どうしたらいいか…」
ユキさんが抱きついてくる。
そういえば初めて会った時も泣きながら抱き付かれたっけ。
「大丈夫だよ。私、運だけは良いんだから…絶対帰ってくるから、待っててね」
ギュッと抱きしめ返して言うと、ユキさんは小さく何度も頷いてくれた。
「それじゃ、行ってきます!」
私は《アドラステア》を作動させてレナトゥスと共に転移した。
明日にはダンジョンに避難していた人達が地上に戻ってくる。それぞれの国に戻って説明とかで大忙しだ。
ユキさん達も疲れているのだろう、みんな早めに自室に戻って行った。
さて……
みんなが寝静まった頃、私は神界に移動する。
アウレリア様達と、レナトゥスが待っていた。
「私はセントラルコアに直接接続を試そうと思います」
私が来るなりレナトゥスが告げる。
「はい。そうするだろうと思っていました。でも1人では無理でしょう。私も行きます」
私はセントラルコアの事を知っている。
流れ込んできた記憶の中にあるのを見つけていた。
直径は1万3千キロで元のレナトゥスと同じサイズのサブコアを4つ従えている。たとえ彼女が万全でも勝てる見込みのない相手だ。
「しかしこれは我々の戦いです。あなたを危険に晒す訳にはいきません」
「これは私達の為でもあるんです。レナトゥス以外のドゥームが次元を渡ってアスティアに来るかも知れません。そうならない様にレナトゥスと同じ変異を全てのドゥームにさせる必要があると思うんです」
「その通りですが……」
レナトゥスは私が行くと言い出すとは思っていなかったのかも知れない。
「私はアスティアを守る為に行くんです。1人より2人の方が絶対良いから協力させてください」
「分かりました。協力に感謝します」
レナトゥスは人間の様に深々とお辞儀をする。自分にお辞儀をされているのだから複雑な気分だ。
「行くのですねミナ」
「はい。これで最後です」
アウレリア様がそばにやってくる。
「無事に帰って来てください。それまでは私達がアスティアを支えます」
「勿論です。必ず帰ります」
「ところで…他の皆には伝えなくて良かったのですか?」
アウレリア様は真っ直ぐ私を見つめながら聞いてくる。
「はい。心配させたくないし、言えばついて行くって言うだろうから…。正直今回はみんなに私の力を分けてる余裕がないと思うんです。取れる戦法は一撃離脱。2人で突撃する方が成功率が高いかなって」
こんな無茶に付き合わせたくない。今度こそ犠牲者が出てしまう。
「…それなら仕方ないわね」
背後からリオさんの声が聞こえた。
慌てて振り返ると腰に手を当てて怒った顔をしたリオさんが目の前にいた。
屋敷で寝ているはずのみんなもその後ろに立っていた。みんなフル装備だった。
「まさかみんな…知ってたの?」
「当たり前でしょ。ミナはすぐ顔に出るからね」
リオさんはそう言いながら私の顔を覗き込んでからデコピンをする。
「いたっ…」
「黙って行こうとしたバツよ。みんなから一回ずつね」
「ん、全力でやる」
「むりむりむり…頭無くなっちゃう」
ソラちゃんの力でデコピンなんかしたら死ぬからね?
「冗談はそれくらいにして、だ。私達はミナと一緒に行くつもりで待っていたんだぞ」
ルーティアさんがこちらに歩いてくる。
どうやって来たんだろう?実体化アウラさんが居るしテュケ君でもここに来れるのかな?
「残念ながら足手纏いの様だから今回は諦めるさね。だが、必ず帰ると約束してくれ」
「はい。必ず帰ります」
ルーティアさんは私の肩をポンと叩くと「約束だぞ」と言って離れて行く。
「本当はゲンコツの一つでもくれてやるつもりだったんだが、それは帰ってくるまで取っておいてやる」
今度はダキアさんとアリソンさんだ。
「えぇ…帰ってき辛いです」
「ミナちゃんが帰ってこなかったらダキアのせいだからねー」
「おおう…じゃあ帰ってこなかったら迎えに行きがてらゲンコツ落とすからな」
「はい…絶対帰ってきます」
ダキアさんは頭をクシャクシャと撫でてくれ、アリソンさんにはギューっと抱きしめられた。
「こんな面白そうな戦いに行けないなんてなぁ…。帰ってきたらダンジョンでシュミレートしてくれよ!俺も戦ってみたい」
「こんな時に何を言ってるのよ…」
「ミナ…絶対、絶対に帰って来るんだぞ。約束だ」
「うん。約束、必ず帰るからね」
マサキさん一家とも挨拶を交わす。
そうやって全員と挨拶をしていった。
そして最後。
「ミナさん、どうしても行かなくちゃダメなんですか…?こっちに来た者を迎撃するのではダメなんですか?」
「うん。初めはこっちに来たら全力で迎撃すればいいかもって思ってたんだけど、記憶を辿って想定してみたら、こっちにくるドゥーム群体の規模がレナトゥスの千倍になるみたいだったから迎撃は無理そうなんだよ」
ユキさんは私に行って欲しくないみたいだ。今にも泣き出しそうな表情で聞いてくる。
「私達でも足手纏い?」
「ごめんね。足手纏いっていうか守りきれないと思う。自分の事で手一杯になると思うんだよ」
ソラちゃんは一緒に行きたがっていた。
「本当に帰って来られるの?」
「それは…一応考えがあります。上手く立ち回れば多分…」
リオさんには嘘はつけそうにない。
なので正直に答えた。
「俺なら死なないし良いだろ?」
「ダメだよ。死なないっていうのは私がダメージを肩代わりしているだけなんだからね」
テュケ君も一緒に行きたがっている。でも今回ばかりは連れていってあげられない。
「ミナ、私はあなたのサポートです。あなたが帰るまでは仲間達の魂の分離はしません。あなたが帰らなければアスティアは滅びます。心してください」
「分かったよアウラさん。帰るまでのサポート宜しくね」
実体化しているアウラさんに答える。
このアウラさんはヘルプ機能としてのアウラさんと同一だ。必ず一緒に帰って来ようね。
「私達は存在力が持つ限りアスティアを支えています。貴女が戻ってくる頃には消えているかも知れません」
アウレリア様だ。神様達を代表して話してくれている。
「最後までご迷惑をお掛けします」
「存在力が切れたら私達は輪廻の輪に還ります。また何処かで会えたら良いですね」
「はい。また会える日を楽しみにしています」
アウレリア様と握手を交わす。思えばこの方が私を転生させてくれなければここには居なかったんだ。
みんなと出会えなかったんだ。
今はここに来て本当に良かったと思うし、これからもこの世界を守っていきたい。その為に今から大仕事をやって来る。
「ミナさん…!行かないでください!ミナさんが帰らなかったら、私…どうしたらいいか…」
ユキさんが抱きついてくる。
そういえば初めて会った時も泣きながら抱き付かれたっけ。
「大丈夫だよ。私、運だけは良いんだから…絶対帰ってくるから、待っててね」
ギュッと抱きしめ返して言うと、ユキさんは小さく何度も頷いてくれた。
「それじゃ、行ってきます!」
私は《アドラステア》を作動させてレナトゥスと共に転移した。
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