アングレカム

むぎ

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帰国

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ゆらゆらと揺れる感覚がする。足が地面についてないような…

ゆっくり目を開けると、夏樹の顔が上にあった。

「わっ、夏にぃ、ごめんね!重いでしょ?下降ろして~!」
慌てて降りようとするも
「検査で疲れてたんだろう。帰宅が遅かったし、直ぐ着くから大人しくしてなさい。」
と降ろしてくれない。
諦めてぎゅっと夏樹の服を握りしめて顔を埋める。
高校生になるのに、お姫様抱っこなんて…
顔から火が出そうで顔を見られないようにした仕草だったが、その行動が夏樹の心を満たすのを時雨は気づいていない。

「あら、お帰り~。時雨君、具合悪い?疲れて見えるわ。」
柚子さんが出迎えてくれ、抱っこされている状態に心配される。

「ただいま。ちょっと疲れてるみたいだから抱き上げてる。夕食まで休ませるよ。」
問答無用で夏樹が返答し、そのまま部屋のベッドに降ろされた。
着替えを渡され、楽な服装へと着替えると、ご飯の時間まで寝てなさいと電気を消された。
むぅっとしながらも、身体は疲れていたようで、横になって暫くするといつの間にか眠りについた。






~side夏樹~
「ふぅ……。」
部屋を出て、リビングに戻ると、ソファに心配そうな顔をした柚子がいる。

「大丈夫なの?時雨君。」
そんな柚子を後ろからぎゅっと抱きしめ落ち着くようにすぅと柚子という名前に相応しく、柚子の香りがする頸の匂いを嗅ぐ。

「疲れてるんだろう。今日は1日検査漬けだったからね。正直、体の状態はあまり芳しくないと父さんから聞いているよ。」

「心配かけないように、我慢する子だから心配だわ。」

「そうだなぁ。柚子も家にいる時は少し気にかけててくれないか?シグが部屋に篭ってる時に定期的に声かけてくれるくらいでいいから。」

「全然いいわよ。私にとっても可愛い義弟ですもの。」
そんな柚子に優しく夏樹が口づけを落とす。

「柚子も身重の身だし、無理しないで。俺にとっては柚子も時雨も1人しかいない大切な存在だから。俺、柚子がいなかったら生きていけない。」
愛おしげに柚子をぎゅっと再度抱きしめてる力を強くする。

「私もよ。なっちゃんもあまり無理しないでね。」

ほのぼのと甘い雰囲気の中、ゆっくりと夏樹達も過ごした。

          
               side end


2時間ほどして、ご飯の準備を終えると、夏樹は時雨を起こしにいく。

スヤスヤと寝息をたてながら眠っており、起こすのは忍びないが仕方あるまい。

「シグ、シグ、起きて。」
トントンと叩き、目覚めを促すも起きる気配が無い。元々寝起きが悪いのは知っているため、根気よく揺すり起こす。

「…んぅ……。」
モゾモゾと煩わしそうに動く。

「シグ、起きて。ご飯食べるよ。」

「…いらない…。」
ぽそりと小さな声で返答が返ってきた。

「薬も飲まなきゃでしょ?ほら、起きるよ。」
掛けられていた毛布を奪い取る。

「…さむい……。」
目をゴシゴシと擦りながら、丸まり起きるつもりは無い様子だ。

「調子悪い?」
「…んーん。でも、ご飯はいらない。薬だけ飲むから水持ってきて欲しい。」

額に手を当てるといつもよりやや高い気がする。
時雨に体温計を渡し測らせると、37.2℃。
平熱が35℃台であるため、微熱である。

「今日はシグのご飯、雑炊にしてるんだ。こっちに持ってくるから、食べれる分だけ食べて寝よ。」
そういって、一度出てから器に少量の雑炊を取り戻る。

時雨のベッドは病院にあるようなリクライニング機能のついたものであるため、リモコンで体を起こす。

「はい、食べれる分だけでいいから。」
食事を受け取り、スプーンをゆっくり持つと、一口口に含む。

モグモグと時間をかけて飲み込むとスプーンを置いた。

「もう、いい。」
ふぅっと薬を手に取り水で飲み込むと目を瞑った。

「そっか。ゆっくり休んで。また様子見にくるから、上がるようなら城先生に来てもらおう。」
城は大学病院で働いているが、月見里家のお抱えであり連絡すれば、オペや緊急時でない限り診察に来る。

「んー。」
半分夢の中の時雨は曖昧に返事をして、また眠りについた。

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