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赤く紅く美しい
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目を覚ますと、そこは室内だった。
見慣れない天井。
どこからか食器のようなカチャカチャという音と、女の子らしい声の鼻歌が部屋に響いていた。
(ここは、、、それにこの歌、、、)
この鼻歌はなんと言う曲だったのだろうか。
しかし、結局答えが出る前に鼻歌は歌い終わってしまった。
思い出したように体を起こし、キョロキョロと周りを見渡したが眼鏡をかけていない鏡には世界がぼやけていた。
家具はシルエットで分かるが、その上に何があるかは手探りでしか分からず。
しかし、今寝ていたのはソファーだと、見ずとも感触と肘掛がある事で分かっていた。
足を下ろし、ソファーと平行に置かれた長方形の机に手を置くと、丁度そこに触り慣れた感触があった。
眼鏡をかけ、曖昧な記憶を思い出しながら今の状況を確認するように周りを見渡す。
今座っているソファーに、目の前にある木箱や書類で散らかった机、天井まであるギッシリ本の詰まった本棚。
この家の構造は大体わかったが、鏡自身の状況は分からないままだった。
記憶では確かに谷に落ちたはずなのに、今は家の中にいるという事。
鼻を触っても痛みは感じず、触った限りでは傷も消えている事。
全てが鏡の記憶と噛み合わなかった。
途中までは必死に考えていたが、考える事を諦め、また周りの状況確認に戻る。
すると、また鼻歌が部屋に響き始めた。
鼻歌の聞こえる方向に目を移した瞬間、鏡は何も考える事が出来なくなった。
視線の先にあったのは〈赤〉。
初めて見るような赤、しかしどこかで見たような紅。
台所のような場所にいる少女の後ろ姿には、腰まで伸びた美しい
赤い髪がサラサラと揺れていた。
赤く、紅く、美しいその髪から、鏡は目を離せなかった。
炎のように赤く、夕日のように紅い。
瞬きをすれば炎のように燃え尽きてしまい、一瞬でも目をそらせば夕日のように沈んでしまうのではないか、そんな赤に。
(綺麗、、、)
気付けば疲れも忘れ、髪は鏡の目の前にあった。
手を伸ばせば触れられる。そう気付くと、鏡は迷うことなく掬うようにその髪を持ち上げた。
「ひゃっ!」
その甲高い声で鏡は我に返る。
髪を触れた喜びと共に触ってしまった後悔に襲われ、鏡は勢いよく頭を下げる。
「ご!ごめんなさい!」
(しまった!僕のバカ!)
怒られる、そう思っていた。
生きているという事は、おそらくこの赤い髪の少女に助けられたのだろう。
もし少女側で考えれば、善意で助けた男に急に後ろから髪を触られれば、それは嫌悪感しか残らない。
鏡はそれを一瞬で考え、後悔していた。
「なんだ起きてたの?言ってくれれば良かったのに。」
しかし、返ってきた言葉は想定外の物だった。
予想と違う反応に戸惑いながらも頭をあげると、そこには少女の顔があった。
鏡と同じくらいの身長に、どこかあどけなさの残った美形の顔、よく似合った紅葉のような紅い着物。
そして真っ赤な髪と瞳、その全てに見惚れていた。
気付けば少女は、不思議そうに首を傾げて、鏡の前で手を振っていた。
「大丈夫?」
鏡はハッとして返事をする。
「はい!大丈夫でふ!」
それは、噛んでしまった事になのか、慌てている様子になのか、少女はクスリと笑った。
「そうみたいだね。もうちょっとで出来るから座って待ってて?」
「はい!」
元気よく返事をした鏡は、ソファーに戻ってからも少女の髪から目が離せなかった。
今目の前にある木箱に入ったガラスの破片や、その破片についた血にも、少しの疑問も持たなかった。
いや、持てなかった。
しばらくして、少女はドラマに出てくるような豪華なティーセットの乗った、木のお盆を持ってきた。
すると少女は片手でお盆を持ち、机の上にあった木箱をそっと下ろすと、残りの書類などをバタバタと雑に落とし、綺麗になった机の上にお盆を置いた。
しかし、鏡はまだ髪をジッと見つめたままで、今の行動にも何も思うことが出来なかった。
「さてと、」
少女は鏡の向かい側のソファーに座ると、ティーポットを手に取る。
ティーポットからティーカップに紅茶が注がれた瞬間、暖かい湯気と共に紅茶の匂いが部屋中に広がった。
鏡は少女から紅茶を受け取ると、忘れていた喉の渇きを思い出し、熱さも忘れて幸せを噛みしめるように紅茶を口にしていく。
気付けば紅茶はなくなり、喉の渇きも消えホッと暖かい息を吐く。
それを見た少女はクスリと笑ったが、鏡は気にせず幸せに浸っていた。
「どう?美味しい?」
「はい!」
迷いなく出た言葉と共に、頬を涙が伝った。
「え、」
鏡は涙を拭ったが、その涙はどんどんと溢れでる。
その溢れる涙と共に、森で味わった焦りや恐怖、痛みの全てが脳裏に浮かんだ。
少女は鏡の涙に一瞬驚いた顔をしたが、何も言わずただ見守っていた。
鏡が泣き止むと、少女は空になった鏡のティーカップに紅茶を注ぐ。
「えーと、今は色々と混乱?してるだろうけどまずは私から。私は玄武 朱雀(げんぶ すざく)」
(玄武?朱雀?)
その聞いた事もない苗字と名前に、偽名ではないのか。
しかしもし偽名だったとして何の為に。
そんな中学生離れした事を考えている鏡の向かいでは、朱雀が困った顔を浮かべていた。
「、、、えーっと、君は?」
「え?あぁ!僕は多、、、多神 鏡です。」
見慣れない天井。
どこからか食器のようなカチャカチャという音と、女の子らしい声の鼻歌が部屋に響いていた。
(ここは、、、それにこの歌、、、)
この鼻歌はなんと言う曲だったのだろうか。
しかし、結局答えが出る前に鼻歌は歌い終わってしまった。
思い出したように体を起こし、キョロキョロと周りを見渡したが眼鏡をかけていない鏡には世界がぼやけていた。
家具はシルエットで分かるが、その上に何があるかは手探りでしか分からず。
しかし、今寝ていたのはソファーだと、見ずとも感触と肘掛がある事で分かっていた。
足を下ろし、ソファーと平行に置かれた長方形の机に手を置くと、丁度そこに触り慣れた感触があった。
眼鏡をかけ、曖昧な記憶を思い出しながら今の状況を確認するように周りを見渡す。
今座っているソファーに、目の前にある木箱や書類で散らかった机、天井まであるギッシリ本の詰まった本棚。
この家の構造は大体わかったが、鏡自身の状況は分からないままだった。
記憶では確かに谷に落ちたはずなのに、今は家の中にいるという事。
鼻を触っても痛みは感じず、触った限りでは傷も消えている事。
全てが鏡の記憶と噛み合わなかった。
途中までは必死に考えていたが、考える事を諦め、また周りの状況確認に戻る。
すると、また鼻歌が部屋に響き始めた。
鼻歌の聞こえる方向に目を移した瞬間、鏡は何も考える事が出来なくなった。
視線の先にあったのは〈赤〉。
初めて見るような赤、しかしどこかで見たような紅。
台所のような場所にいる少女の後ろ姿には、腰まで伸びた美しい
赤い髪がサラサラと揺れていた。
赤く、紅く、美しいその髪から、鏡は目を離せなかった。
炎のように赤く、夕日のように紅い。
瞬きをすれば炎のように燃え尽きてしまい、一瞬でも目をそらせば夕日のように沈んでしまうのではないか、そんな赤に。
(綺麗、、、)
気付けば疲れも忘れ、髪は鏡の目の前にあった。
手を伸ばせば触れられる。そう気付くと、鏡は迷うことなく掬うようにその髪を持ち上げた。
「ひゃっ!」
その甲高い声で鏡は我に返る。
髪を触れた喜びと共に触ってしまった後悔に襲われ、鏡は勢いよく頭を下げる。
「ご!ごめんなさい!」
(しまった!僕のバカ!)
怒られる、そう思っていた。
生きているという事は、おそらくこの赤い髪の少女に助けられたのだろう。
もし少女側で考えれば、善意で助けた男に急に後ろから髪を触られれば、それは嫌悪感しか残らない。
鏡はそれを一瞬で考え、後悔していた。
「なんだ起きてたの?言ってくれれば良かったのに。」
しかし、返ってきた言葉は想定外の物だった。
予想と違う反応に戸惑いながらも頭をあげると、そこには少女の顔があった。
鏡と同じくらいの身長に、どこかあどけなさの残った美形の顔、よく似合った紅葉のような紅い着物。
そして真っ赤な髪と瞳、その全てに見惚れていた。
気付けば少女は、不思議そうに首を傾げて、鏡の前で手を振っていた。
「大丈夫?」
鏡はハッとして返事をする。
「はい!大丈夫でふ!」
それは、噛んでしまった事になのか、慌てている様子になのか、少女はクスリと笑った。
「そうみたいだね。もうちょっとで出来るから座って待ってて?」
「はい!」
元気よく返事をした鏡は、ソファーに戻ってからも少女の髪から目が離せなかった。
今目の前にある木箱に入ったガラスの破片や、その破片についた血にも、少しの疑問も持たなかった。
いや、持てなかった。
しばらくして、少女はドラマに出てくるような豪華なティーセットの乗った、木のお盆を持ってきた。
すると少女は片手でお盆を持ち、机の上にあった木箱をそっと下ろすと、残りの書類などをバタバタと雑に落とし、綺麗になった机の上にお盆を置いた。
しかし、鏡はまだ髪をジッと見つめたままで、今の行動にも何も思うことが出来なかった。
「さてと、」
少女は鏡の向かい側のソファーに座ると、ティーポットを手に取る。
ティーポットからティーカップに紅茶が注がれた瞬間、暖かい湯気と共に紅茶の匂いが部屋中に広がった。
鏡は少女から紅茶を受け取ると、忘れていた喉の渇きを思い出し、熱さも忘れて幸せを噛みしめるように紅茶を口にしていく。
気付けば紅茶はなくなり、喉の渇きも消えホッと暖かい息を吐く。
それを見た少女はクスリと笑ったが、鏡は気にせず幸せに浸っていた。
「どう?美味しい?」
「はい!」
迷いなく出た言葉と共に、頬を涙が伝った。
「え、」
鏡は涙を拭ったが、その涙はどんどんと溢れでる。
その溢れる涙と共に、森で味わった焦りや恐怖、痛みの全てが脳裏に浮かんだ。
少女は鏡の涙に一瞬驚いた顔をしたが、何も言わずただ見守っていた。
鏡が泣き止むと、少女は空になった鏡のティーカップに紅茶を注ぐ。
「えーと、今は色々と混乱?してるだろうけどまずは私から。私は玄武 朱雀(げんぶ すざく)」
(玄武?朱雀?)
その聞いた事もない苗字と名前に、偽名ではないのか。
しかしもし偽名だったとして何の為に。
そんな中学生離れした事を考えている鏡の向かいでは、朱雀が困った顔を浮かべていた。
「、、、えーっと、君は?」
「え?あぁ!僕は多、、、多神 鏡です。」
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