1人で異世界4役物語

尾高 太陽

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~第2章~

俺とジジィ

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 どうも、中居 湊です。
 現在俺は人生で一度あるか無いかの絶望と無気力と自殺願望を体験しています。
 簡単に説明するとですね、異世界に行けなくなりました。
 ええそうですね、きっと夢だったのでしょう。
 だって時計を見たら最初アカに食われた時からほぼ変わっていませんでしたし。
 もういいです。夢に縋るのはやめておきます。
「………大学、行こう。」

 ◆◆◆

 一般人-大学-食堂

 俺はスナック菓子を摘んでいた。
「おいおい湊!また浮気されたのか?」
「あぁ!?…ってなんだ.俺と同じサークルで昼飯時に見つければ一緒に昼飯を食う仲の鍵宮 明(かぎみや あける)。」
「なんだ?そのライトノベル見たいな説明くさい台詞。
で、どうしたんだ?まるで何時ぞやの美人と付き合ったら本命の彼との財布にされてた事に気づいた時と同じ顔になってたぞ。」
「俺とトラウマをナイフでかき混ぜるな。まぁ色々あったんだよ、色々。」
「そっか。」
 明のこう言う時に追求して来ない所は本当に助かる…。
「で、どうしたんだよぉ。」
 と明はニヤけていた。
「俺のシンミリを返せぇ!!」
 俺はまるで神のいたずらのように置かれていたハリセンで明を叩いた。
 俺と明、会ったのつい三ヶ月前じゃん…。

「あ、そうだ。明ん家って金とかの買い取りしてたよな?」
「ん?あぁ、俺の父親が昔の金だったりを集めるのが趣味でやってるよ。どんなに良いものでもよっぽど気に入った物しか買わないし。1度買ったらどんなに金を積まれても売らない。おかげでここ数年赤字だ。何のために商売してるんだか…。」
 俺は〈夢〉の中から持ってきた金貨の1枚をポケットから出した。
「これを買って欲しいんだ。」

 ◆◆◆

 一般人-明家-店舗(1階)

「親父、客連れて来たぞ。湊は親父にソレを見せといて、俺は着替えてくる。」
 そう言って明は奥の階段を上っていった。
 と、同時に明の父親が俺をジッと見ている事に気がついた。
 白い髪に丸い眼鏡、悪い目つきと口角の下がった不満そうな顔。
「………。」
 気まずい!
 え?これって良くある無愛想〈キャラ〉か?
「ふっ、お前のようなガキがどんなガラクタを持って来たんだか。」
「あぁ!?」
 違う。
 ただのクソジジイだ。
「クソジジィ今何つった!」
「これだから最近の〈ガキ〉は、すぐキレて、すぐ喧嘩を売る。」
「先に喧嘩を売ったのはテメェだろぅが。」
 するとドタドタと階段を下りる足音が聞こえてきた。
「あぁ!?」
「あぁ?!」
「何やってんの…。」

 明が降りて来て見た光景はこれだ。
 自分の父親の胸ぐらを掴む友達と自分の友達に喧嘩を売り続ける父親。
 俺は明に店の外に連れ出された。
「うちの親父、客にすぐ喧嘩売るんだよ。だから出来るだけ相手にしないほうがいいぞ。」
 どんな親父だよ…。

 ◆◆◆

「で、どんなガラクタを持って来た。」
「あぁ!?」
 っと、相手にしない相手にしない。
「これを買って欲しいんだ。多分金だと思う。」
 俺は金貨をクソジジィの前の机に置く。
「っ。」
 笑った?
 一瞬、ジジイの口角が上がった気がした。
「ふん、こんなものこちらの世界では無価値な物だ。」
「無価値、か。」

 ◆◆◆

 俺は金貨をポケットに入れると明に挨拶して店を出た。
 あのジジイ、査定の時だけガチの目だった。
 でも明の話だと気に入ったものだけとか言ってたし。
 別の店にでも行ってみ………。

 〈こんなものこちらの世界では無価値な物だ。〉

 俺は急いで振り返り、店の扉を開いた。
「ジジイ!!今何つった!!」
「湊、だから関わるなって。」
「違う!喧嘩を売ってるんじゃ無い!ジジイ!今、〈こちらの世界〉ではつったか!?」
 するとジジイは小さく溜め息を吐く。
「全く、こんなに口の悪い奴と関わるな明。」
 しかし、さっきのように喧嘩を買わない俺を見たジジイは、ゆっくりと立ち上がり階段が見える奥の廊下へと歩いた。
「付いて来い。現状報告、か思い出話を聞いてやる。」
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