誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと義妹に押し付けられた~入替義姉妹~

富士とまと

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「自分で……?」
 アイリーンのクローゼットを開く。
 どうしよう。
 侍女はいない。ドレスを着るには、誰かの手伝いがいる。
 一人では後ろのボタンを留めることができないからだ。
 それに、髪も自分では結えない。
 化粧も、したことがないから分からない。
 自分でも着れそうなドレスはないかとクローゼットのドレスを見ていく。
「あら……?」
 紅茶のシミのようなものがドレスについている。こぼした?にしては広範囲だ。
「こっちのドレスも……。右端のドレスは汚れて着られないものをまとめてあるのかな?」
 10ほどのドレスに大きなシミが付いている。
 すぐに洗い落とせば落ちたかもしれないのに……。アイリーンはこぼしてしまったということを言い出せなかったのだろうか?
 愚図というお父様の言葉を思い出す。
 アイリーンもお父様にそういわれることがあったの?言われないようにと隠していたの?それとも別の理由で言い出せなかった?
 汚れがないドレスの中で一つだけ前でボタンを留めるタイプのものが見つかった。
「あら?」
 よく見れば、このドレスにもスカートの一部にシミがある。そして、その汚れを隠すように、フリルが縫い付けられていた。へたくそな縫い目で……。
 アイリーンが自分で縫った?それとも侍女の腕が悪かった?
「考えている暇はないわ……」
 今は一刻も早く出かける準備をしないと。
 ドレスの汚れは……。部屋の中から出られないのだから、少しずつ汚れを落としたり、フリルを縫い付けたりしよう。勝手なことをしてとあとでアイリーンに叱られてしまうかもしれないけれど……。このまま着ることができずにクローゼットにしまいっぱなしになるよりはいいだろう。
 唯一一人で着られるドレスに袖を通す。
 それから化粧は見様見真似で……と思ったけれど、怖くてほんの少し頬紅をのせ口紅をさすだけで終わり。
 カツラは丁寧にとかした。
 髪結いは、あきらめた。地毛であれば後ろで結んでリボンを結ぶことくらいならできたかもしれないけれど、カツラはどうにも扱いが難しい。
 ハンカチを封筒に入れて持つ。
 手紙も添えた方がいいかとも思い、慌てて書く。
 ジョアン様宛てに。前に贈ったハンカチの賛辞に対してのお礼と、贈った人に喜んでもらえるようにと。簡単に書いて封筒に入れる。
 それから屋敷の前に待っていた馬車に慌てて乗り込んだ。
 行先はお父様から伝えられているようで、何も言わなくてお侯爵家に向かって動き出した。
 侯爵家について、用件を伝えるとすぐに屋敷の中に通される。
 え?どうして?
 渡したらおしまいじゃないの?
 いえ、じゃないから本人に届けるように言ったのだけれど……。
「こちらでお待ちください。すぐに奥様がいらっしゃいます」
 と、侍女に言われて応接室の一つに通される。
 奥様?奥様って、侯爵夫人のジョアン様のことだよね……。
 わ、私なんかが侯爵夫人にお会いするなんて。
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