17 / 26
17
しおりを挟む
そのころ王都では……。(視点が変わります)
======================
[だめです。この井戸の水も飲めません」
「どういうことだ?突然同時に井戸の水がだめになるなんて……」
学園で卒業パーティーが行われている裏で、宰相が部下の報告を受けて冷汗をかいていた。
「とりあえず、水は出さずに果実水とお酒だけに……毒味は徹底して、それから原因究明を迅速に」
「判明しました、どうやら毒蛙が大量発生しているようで」
宰相が驚きの声を上げる。
「なんだって?井戸の蓋はきちんと閉めていれば防げるだろう?なぜ同時に何か所も毒蛙が……まさか、誰かが故意に……」
宰相の言葉に、部下の報告が続く。
「いえ、10年以上被害がなかったため、蓋をしめる習慣が失われていたようです」
「なんと……。しかし、起きてしまったことは仕方がない。毒蛙が発生した井戸は早急に使用を中止し、毒蛙の駆除、それから浄化草で浄化を」
宰相に言われて部下は必要部署に指示を飛ばし、走り回っている。
学園では、卒業を迎えた貴族の子息令嬢たちが歓談中だ。
ダンスを踊っている者もいる。
まだ、聖女が姿を消してしまったことに気が付いている者はいない。
いつも目立たずひっそりと立っているので、参加していても気がつかれないことも多いのだ。
婚約者である皇太子殿下の隣にいなくとも、誰も不思議に思わなかった。
いつものように、美しい令嬢が数人殿下に侍っている。
殿下の側近の令息たちにもそれぞれ何人かのかわいらしい令嬢が話しかけている。
非常に華やかなグループが出来上がっていた。
「殿下、卒業式の日くらい、婚約者をエスコートしなくてもよろしいのですか?」
「あの大罪人との婚約は破棄したよ」
「まぁ!大罪人とは、何をなさったのです?」
「何もしなかったからだよ、聖女とは名ばかりで」
「確かに、名ばかりですわねぇ。浄化魔法が使えると言っても、何をしていたのか分かりませんもの」
パーティーを楽しんでいる裏では宰相が青ざめている。
「なんだと?浄化草がない?」
「はい、近隣の村の井戸に毒蛙が出たと言うときに渡していましたので」
「使った分の補充はしなかったのか?」
「それが、王都では必要がなかったため、年々予算が削られおり、備蓄数も少なく……。どうやら大雨の影響で今年は毒蛙の数が多いようで……」
宰相は頭を激しくかいた。
「5年前も同じように大雨が降っただろう、その時はどうだった」
「えーっと、やはり近隣から浄化草を必要とする村がいくつかありましたが、王都での被害はなく、問題ありませんでした。まさか、今回に限りこのように王都でも毒蛙が大量に発生するとは……」
「いざというときのための備蓄だろうに。すぐに浄化草の手配をしろ。このままでは、水が不足して王都の住民に死者が出かねない」
部下の一人が恐る恐る手を挙げた。
「あの……」
「なんだ?」
「聖女様は浄化魔法が使えるのですよね?井戸を浄化していただくことはできないのですか?」
宰相が立ち上がった。
「それだ!」
宰相はすぐに学園へと向かった。
パーティーに出席するために学園にいる陛下にまずは報告する。
「うむ、せっかくの卒業パーティーだが、ことがことだ。聖女に働いてもらおう」
陛下の言葉に、教師がマリアージュ(マリー)を探す。
「恐れながら陛下、姿が見えません」
「息子を……皇太子を呼んでこい」
こめかみを抑える陛下のもとへ皇太子がやってきた。
「お呼びですか父上」
「婚約者のエスコートはどうした?」
皇太子が顔を上げる。
======================
[だめです。この井戸の水も飲めません」
「どういうことだ?突然同時に井戸の水がだめになるなんて……」
学園で卒業パーティーが行われている裏で、宰相が部下の報告を受けて冷汗をかいていた。
「とりあえず、水は出さずに果実水とお酒だけに……毒味は徹底して、それから原因究明を迅速に」
「判明しました、どうやら毒蛙が大量発生しているようで」
宰相が驚きの声を上げる。
「なんだって?井戸の蓋はきちんと閉めていれば防げるだろう?なぜ同時に何か所も毒蛙が……まさか、誰かが故意に……」
宰相の言葉に、部下の報告が続く。
「いえ、10年以上被害がなかったため、蓋をしめる習慣が失われていたようです」
「なんと……。しかし、起きてしまったことは仕方がない。毒蛙が発生した井戸は早急に使用を中止し、毒蛙の駆除、それから浄化草で浄化を」
宰相に言われて部下は必要部署に指示を飛ばし、走り回っている。
学園では、卒業を迎えた貴族の子息令嬢たちが歓談中だ。
ダンスを踊っている者もいる。
まだ、聖女が姿を消してしまったことに気が付いている者はいない。
いつも目立たずひっそりと立っているので、参加していても気がつかれないことも多いのだ。
婚約者である皇太子殿下の隣にいなくとも、誰も不思議に思わなかった。
いつものように、美しい令嬢が数人殿下に侍っている。
殿下の側近の令息たちにもそれぞれ何人かのかわいらしい令嬢が話しかけている。
非常に華やかなグループが出来上がっていた。
「殿下、卒業式の日くらい、婚約者をエスコートしなくてもよろしいのですか?」
「あの大罪人との婚約は破棄したよ」
「まぁ!大罪人とは、何をなさったのです?」
「何もしなかったからだよ、聖女とは名ばかりで」
「確かに、名ばかりですわねぇ。浄化魔法が使えると言っても、何をしていたのか分かりませんもの」
パーティーを楽しんでいる裏では宰相が青ざめている。
「なんだと?浄化草がない?」
「はい、近隣の村の井戸に毒蛙が出たと言うときに渡していましたので」
「使った分の補充はしなかったのか?」
「それが、王都では必要がなかったため、年々予算が削られおり、備蓄数も少なく……。どうやら大雨の影響で今年は毒蛙の数が多いようで……」
宰相は頭を激しくかいた。
「5年前も同じように大雨が降っただろう、その時はどうだった」
「えーっと、やはり近隣から浄化草を必要とする村がいくつかありましたが、王都での被害はなく、問題ありませんでした。まさか、今回に限りこのように王都でも毒蛙が大量に発生するとは……」
「いざというときのための備蓄だろうに。すぐに浄化草の手配をしろ。このままでは、水が不足して王都の住民に死者が出かねない」
部下の一人が恐る恐る手を挙げた。
「あの……」
「なんだ?」
「聖女様は浄化魔法が使えるのですよね?井戸を浄化していただくことはできないのですか?」
宰相が立ち上がった。
「それだ!」
宰相はすぐに学園へと向かった。
パーティーに出席するために学園にいる陛下にまずは報告する。
「うむ、せっかくの卒業パーティーだが、ことがことだ。聖女に働いてもらおう」
陛下の言葉に、教師がマリアージュ(マリー)を探す。
「恐れながら陛下、姿が見えません」
「息子を……皇太子を呼んでこい」
こめかみを抑える陛下のもとへ皇太子がやってきた。
「お呼びですか父上」
「婚約者のエスコートはどうした?」
皇太子が顔を上げる。
781
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます
碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」
そんな夫と
「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」
そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。
嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる