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98 先生の資質

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「もう一つ見解をうかがってもよろしいでしょうか?」
 フレッドが手を上げた。
 うん、ちゃんと挙手してるあたり、抜かりない。何を聞くつもりだろう?
「我々、Fクラスは、先生方のおっしゃったとおりクラス分けテストで点を取れませんでした。7クラスのなかで最下位というのは事実です」
 ちょ、フレッド、何言ってんだよ。これから順位を上げていくんだろうっ!
「教師からは出来損ないだの屑だの言われるようなクラスです」
 裁判官の表情はフードに隠れて見えないけれど、後ろに控えている人たちの何人かがちょっと視線を逸らす。
 ああ、もしかしてこの学校から高等部へ進んだ人達なのかもしれない。で、過去を思い出したみたいな?
「生徒に向かってそのような発言をしていると言うのは事実か?」
 はい。事実です。
 が、教師は誰も口を開かない。卑怯者め!
「審議し、事実であれば改善を求めるように指導するが?」
 フレッドが首を横に振った。
「いいえ、真実かどうかということはどうでもいいです。僕が知りたいのは、そんなFクラスの生徒よりも、計算ができない者たちが果たして教師の資格があるのかと、それを問いたいんです」
 教師たちの顔色が変わった。
「なるほど。確かに、Fクラスの生徒のほうがはるかに計算が早く正確だったようだ」
 慌てて教師の一人が声を上げる。あ、挙手してますね。立派立派。
「計算に関しては事実かもしれませんが、教師は計算の速さだけをウリにしているわけではありません。計算のスピードは、計算機を使えば補えます。我々教師は、それ以外の数学的な考え方を教えるのが役割で……」
 呪われし裁判官が補佐官に指示を飛ばす。
「何か問題を」
「はい、では、5人の兵に6キロの麦を与えた場合、3小隊で行動するにはどれだけの麦が必要になるか」
 補佐官の問い。なんだ簡単じゃん。5人で6キロなら10人で12キロ。その3倍だろう。36。
「36キロ」
 あ、しまった。また挙手もせずに発言しちゃった。
 皆の視線が集まる。ごめん、ごめんって、挙手制度、慣れてなくて……独り言ももともと多いたちなので……。
 しゅんっと頭を垂れる。
「次」
 裁判官の言葉に補佐官が口を開く。
「ある品物の値段を1個につきいくらか値上げすると、一日の売り上げ個数がいくらかの五倍の数減る。今現在、ある品物の値段が80ゴールドで、売り上げ個数は700個である。現状は56000ゴールドの売り上げだ。これを1日60000ゴールドにするには、1つの値段をどう設定すればよいか」
 いくらかって言うのをxに設定して、式を作ればいいんじゃね?
 80円の品をx円値段を上げて、あ、円で考えちゃった。そうすると、個数が700-5x個でしょ。それを駆けてイコールが60000。
 ん?んんん?
 これ、2次方程式じゃない?
 あー、……これはさすがに。
「だめだ……」
 暗算ではできない。
「ふふ、ほら、Fクラスの生徒には解けないようですよ、ですが、私どもは解くことができます!お時間をいただければ!」
 そりゃね、まだ中学レベルの問題なんだもん。教師なら解けるでしょう。ってか、お時間?


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問題文は無料プリントを参考にさせていただきました。
自由に使ってねって書いてあったけど、参考サイトとしてアドレス書いた方がよいのだろうか?規約にはなかったので、簡単に報告のみするだけしときます。
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