殿下、あなたはいりません。お父様も不要です。

富士とまと

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 立ち上がると、使用人を呼び、集まってもらった。
「この部屋に運んだのは誰の指示?」
 尋ねても、使用人の誰も答えない。
「では、誰がこの部屋に運んだの?」
 私の質問に、3人が手を挙げた。
「はい、私が平民ルイーゼにふさわしい部屋をと考えました」
「汚れてもいいシーツに取替たのは私です」
「寝たふりをしているのか水をかけたて確かめたのは私です」
 誇らしげに自分のしたことを口にする。
「食事だけれど、いつもかびたパンを用意していたわよね?それは誰が?」
 別の使用人が手を挙げた。
「私です!カビたパンを選んで運んでいました!」
「かびるように古いパンを棚の上に載せておいたのはオイラです」
「私は、いつも一度床に落としてから皿に戻していました」
 カビの生えたパンがあったから嫌がらせでルイーゼに出していたのだと思っていた。
 だからカビたパンがないときはカビたパンが出てこないのかと……。
 それが、わざわざカビたパンを作っていた?さらにわざと地面に落として汚していた?
「他には?」
 自慢げに自分のしていたことを口にする使用人たちに顔を向けると、今度は犯罪者を告発するように口を開いた。
「こいつは、いつも自分のパンを持って行ってました。辞めるようになんども言ったんですが」
 指をさされたそばかす顔の侍女は視線を泳がせてから口を開いた。
「あの、それは、えっと、し、使用人の私が食べるはずだったものを口にするのを見たら、なんか、わ、私の方が偉くなったみたいな……気持ちに……その……」
 嘘だわ。
 こんなものしか出せなくてごめんなさいっていう顔をいつもしていた。
 だけど、私はこの子がかびてないパンを持ってきてくれるのが嬉しかった。
 まさか、自分の分を分けてくれていたなんて……。
「あー、こいつはせっかく腐らせたルイーゼ様ようのシチューを捨てちまうんですよ」
「料理人としてのプライドです。お腹を壊すようなものを提供しては料理人失格ですから」
 と言ってはいるけど、ルイーゼのことを思ってくれていたのだろう。
「では、あなたとあなた、それからあなた、ルイーゼお義姉様を私の部屋に運んでちょうだい」
 ”ルイーゼ”いじめに加担していなかったわずかな使用人に指示を出す。
「は、はい」
 すぐに3人は動き出した。乱暴に扱うことなく、丁寧に私の体を運んでくれる。きっと、濡れた髪や汚れた顔をぬぐってくれるだろう。
 柔らかく清潔なシーツに寝かせてくれるだろう。
「なぜですか?」
 この部屋に運び込んだ使用人が口を開いた。
「医師が診察に来ます。このような部屋にルイーゼお姉様をこのような扱いをしているのを知られたらどうなるかわかりますか?」
 使用人たちが顔を見合わせた。
「ですが、公爵様の子ではなく、庶民の子だと、ならば別に」
 公爵の子だと思ってた時から酷い扱いをしていたくせに。
 何を言うのか。
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