殿下、あなたはいりません。お父様も不要です。

富士とまと

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 部屋に戻ると、覚悟を決めて日記帳を手に取った。
 あの時の、お母様が不貞を働いていた証拠として見せられた日記だ。
 ”ユメア”は筆跡の鑑定すらしなかったと言っていた。対策はしてあるとも。
 ということは筆跡鑑定されても偽物だと分からない対策をしているということだろう。
「マーサ……聞きたいことがあるんだけれど」
 日記帳を手に、マーサのもとへと向かう。
「ユメア様、お茶を入れます、お座りください」
 マーサはベッドサイドにある椅子から立ち上がり、お茶の用意を始めた。
 私が疲れているときにマーサが出してくれたお茶だ。
 砂糖を入れてかき混ぜた後、カラフルな金平糖を3つ落としたお茶。
 私は、そんなに疲れた顔をしているのだろうか?
 スプーンで、金平糖の一つを救って食べる。
 マーサはその様子を何も言わずに見ていた。
「マーサも座ってちょうだい。見て欲しいものがあるの。これよ」
 と、マーサに日記帳を手渡す。
「お母様……ルイーゼお姉様のお母様の日記が見つかったそうなの。それで、ルイーゼお姉様は実はお父様の子ではないと言うのだけど……」
 マーサはすぐに日記帳を開いて読み始めた。
「この字は確かに奥様の書いたものに見えますが……」
 ページをめくる手に次第に小刻みに震え、途中でバタンと力を込めて閉じてしまった。
「内容は真っ赤な偽物です。嘘ばかりが書いてあります」
 怒りにマーサは震えていた。
「ルイーゼ様は正真正銘旦那様の子供です。奥様は浮気などしておりません。浮気をする旦那様に対抗心を燃やして?とんでもない話です。当時公爵家に勤めていた者なら皆が違うと口をそろえて言うでしょう」
「……それは、奥様を慕うあまりそんなことをするはずがないと言うだけ?それならば何の証拠にもならないわ」
 マーサは顔を横に振った。
「奥様が、マリーさんに嫉妬するはずがないんです。マリーさんの身を案じ逃がしたのは奥様ご自身なのですから」
「え?逃がした?……お父様は、嫉妬して追い出したと言っているわ。だから許せないと……」
 マーサはうんと頷いた。
「ユメア様に恨み言をいうつもりはないのです。真実も隠しておくつもりでした。どうしても知りたいというのなら……」
「教えてちょうだい!」
 真実?
 どういうこと?
「旦那様はマリーさんに異常に執着していました。悪魔にとりつかれたのかと言うほど。無理やり関係を迫り、手籠めにしたのが始まりです。旦那様を避けようとするマリーさんは軟禁されました」
 まさかっ。

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