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酒!

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 フィーネさんが出張ギルドのもう一人の職員に声をかけました。
「しばらく指揮を頼みます。私はすぐにギルドへ。封印に必要な魔導士の招集そのほか現状報告などしてきます。ユーキ、一緒に街へ」
 首を横に振ります。
「そう。分かったわ。気を付けるのよ」
「フィーネさんも気を付けて」
 検索とは違う。目の前に対象物がないと鑑定は使えません。
 もう一度、視界にドラゴンの尾を入れる。
 9つの頭、ドラゴン、封印
 もう一度鑑定結果を見ていく。
 8つめの結果。
【酔っぱらって夢でも見たんだろうと、誰も信じてくれねぇ。だが、嘘じゃねぇ。俺は、確かに9つの頭を持つドラゴンを見たんだ。きっと、大昔に封印されたっていうドラゴンに違いない。うっかり、封印されている場所に足を踏み入れちまったみたいなんだ。なのに誰も信じてくれない。
「もし、それが本当なら、お前が今生きてここにいるわけないじゃねぇか」と、酒飲み仲間はげらげらと笑いやがる。
「無事に生きて逃げられたのは酒のおかげだ」と説明を始めれば、ははは、そりゃいいやと、さらに笑う。
 本当なんだ。嘘じゃない。
 驚いて腰を抜かした俺は、持っていた酒壺を落とした。すると、その酒の匂いを嗅いだドラゴンがまるで酔っぱらったようにくてんとなったから、そのすきに無事に逃げることができたんだ。
「ドラゴンが避けに酔っぱらうなんて聞いたことねぇぜ」
「本当なら、ドラゴンとは友達になれそうだな」
 何度話しても、酒飲み仲間は面白そうに笑うばかりで信じてはくれない。】
 酒?
 これは本当の話なの?
 それとも、本当に酔っ払いのただの妄想?
「うわー!出てきた!」
「に、逃げろ!距離をとるんだっ!」
 検索結果に集中するあまり、騒ぎに気が付くのが遅れてしまいました。
 ダンジョンから、ついにナイトヘッドドラゴンが全貌を現しています。
 ダンジョンの入り口にいた冒険者たちが一斉に距離を取り始めました。単に逃げているわけでもありません。E級F級の身体能力が劣っていて逃げ送れそうな人の手助けをしながらの撤退です。
「だ、誰か、お酒を、強いお酒を持っていませんかっ!」
 声の限り叫ぶけれど、誰もこちらの言葉に耳を貸してはくれません。
「おい、坊主も早く逃げろ!」
 あ!
「ダタズはどうした?」
 初めに屋台を手伝ってくれた冒険者さんです。
「もう街に逃げています」
「そうか、街……ももう安全だとは言い切れない。なるべく森の方へ誘導を試みるだろうが……街の人間にも避難指示が出ていると思う、坊主お前も逃げろ」
 冒険者さんが私の身を気遣ってくれています。ですけど……。
 逃げない。バーヌを置いて逃げたりしない。
「お酒、持っていませんか?できるだけ強いお酒」
「なんだ?怪我か?消毒か痛みを飛ばすのか?ポーションが必要なら」
 ああ、そうですね。お酒って、傷の消毒などにも使うんですた。痛みを飛ばすとはなんでしょう?
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