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第七話 2人と瑠璃②
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「でな、8時間の死闘の末、結局じゃんけんで決着をつけることになってな」
「8時間の死闘の末じゃんけんで勝負つけるのか・・・・・・最近の不良の感性はよくわかんないね」
サクラと勇気の2人は、帰り道を歩きながらそんなことを話していた。来た時は2人別々、駅前で待ち合わせをしたわけなのだが、今度は駅では別れずに家に帰るまで一緒に帰ることにしていた。
駅前の栄えている部分から離れていくうちに、街並みはどんどん変わっていって住宅街へと移っていった。
「そういえば、最近ここに通り魔的な奴が出るって聞いたことがあるな」
「えー本当かい?怖いなあ」
2人は噂話なんかしながら住宅街を進んでいく。そして途中の交差する道の角を曲がろうとした時、2人は意外な人物に出会った。
「ん?おお・・・・・・」
「あれ?お前・・・・・・」
2人が出会ったのは、魔法少女ラピスの正体。ノーマルでノーマルなごく普通の男子高校生。瑠璃という名前と同じ髪色と同じ目の色をした男、緑瑠璃であった。
「おー、お前、同じクラスの緑瑠璃じゃんか!」
「そういうお前は、ヤンキーガールのサクラじゃないか。こんなところで奇遇だな」
瑠璃は手をちょっとあげて気さくな笑顔を浮かべながらそう言った。
「緑、いや本当に奇遇だな。お前、ここら辺に住んでるわけじゃないだろ?なんでこんなとこにいるんだ?」
「それはパトロっ・・・・・・い、いやたまたま散歩をしてただけだ!それだけだ!」
「ほーん」
もちろん散歩というのは嘘である。さっきサクラが話していた通り、ここら辺に通り魔的な怪人物が出るという噂を聞いたので、パトロールをしていたのである。男の姿なのは、魔法少女ラピスだとバレて余計な警戒をされないためだ。
瑠璃はけっこうバレバレな感じで誤魔化したのだが、サクラは別に違和感を抱かなかったようで、なんだ散歩か、と普通に受け取った。そしてふと思い出した。
「あれ?そういえばお前、緑のこと好きとか言ってなかったっけ──────」
勇気が緑のことを好きと言っていたことを思い出し、問いかけながら振り向くと、
「・・・・・・・」
勇気が目を丸くし、両手で口元を覆って絶句していた。
「え、嘘・・・・・・?緑くん・・・・・・?」
「お前もう恋する乙女じゃん」
「あ、あの!緑くん!」
「ん?えーっと・・・・・・サクラさんのお友達かな?」
「あの!ファンです!握手してください!」
「あー、ファンね・・・・・・はあファン!?俺の!?魔法所女ラピスじゃなく!?俺の!?」
「いきなりファンとか言われて緑も困惑してんなあ・・・・・・」
とりあえず、瑠璃は言われた通りに勇気と握手した。顔を真っ赤にした勇気は、しばらくその手を洗わないことにしたのだった。
さて、そんなことで2人と道ばたで話をしていわけなのだが、不意に何者かに声をかけられた。
「よお、ずいぶん冴えねー男と喋ってんじゃねえかよ。そんな男と話すくらいなら、俺と3人で話してみねえか?3人だけの空間とかでよ」
本日二度目のナンパであった。瑠璃が振り向くと、そこにはいかにもガラの悪い、派手な服装をした男がいた。髪型もツンツンしていて派手で、目の覚めるような赤色をしている。
「なんだ?お前は。失せろ」
サクラは朝にナンパしてきた奴らにしたのと同じように、睨みを効かせた。しかし、その男はニヤニヤしたままでさっきの男たちのように逃げる素振りなど見せない。
「っ、コイツ・・・・・・!」
サクラは少し焦りを見せる。サクラの眼光で逃げ出さないというのは、そこそこ腕に自信がある奴だ。
「ん・・・・・・?ッ、コイツまさか!?」
瑠璃は何かに気づいたように懐から折り畳まれた紙を取り出し、それを開いて確認した。
「コイツ、間違いない!ここ最近ここら辺に出るっていう通り魔だ!!」
「は!?」
「え!?」
瑠璃の言葉に、2人は驚愕した。男は、そんな3人の様子を見てほくそ笑むと言った。
「通り魔なんて人聞き悪いなあ。俺はただ、親切な奴らから金もらっただけだぜ?ただちょーっと行きがかり上痛めつけたなきゃいけないこともあったってだけでさ」
「っ、ゲス野郎が・・・・・・」
「そんな睨みつけんなよ。可愛い顔が台無しだぜ?」
ヘラヘラ笑いながら、サクラに向かって男は言う。そして、瑠璃に向かって言った。
「そこのお前、とっとと失せろ。男はいらねーんだ。死にたくなかったら、そこの女2人置いて逃げることだな」
「バカが、誰がそんなこと─────」
するか、と瑠璃が言い切ろうとしたその時。
男が掌を瑠璃に見せるように前に突き出すという不思議な格好をして─────
瑠璃は反射的に腕を交差してそれを受け止めていた。この時、この場にいる男を含めた3人は気づかなかったが、瑠璃は瞬間的に男の時でも多少は使える、なけなしの魔力で腕をカバーして守っていた。プラス、姉が持たせてくれた『お守り』も効き目があったのだろう。瑠璃は無事だった。
しかしそれらがなかったとしたら─────考えたくもないことだ。
その二つがあってなお、瑠璃は腕に軽い火傷を負ってしまった。服などひとたまりもなく、それが当たった部分は焼け焦げて無くなってしまった。
「あれ、俺のファイアーボールを防がれたのは初めてだな。めちゃくちゃ頑丈な奴だなテメー」
ファイアーボール。そう、まさに炎の玉だった。男は掌から炎の玉を射出したのだ。
「そうかお前・・・・・・歪みか」
歪み。この世界は魔界の衝突によって世界の理法が捻じ曲がってしまって、普通ではありえないような能力を持った人間が現れるようになってしまったということは、すでに話しただろう。
しかし、そうして生まれた特殊な能力を持つ者の全てが、良き精神を持っていたわけではない。
その力を人々のために役立とうと、自衛官、警察、セカンドなどの職業に就く者もいれば、その力を自分の欲を満たすために使い、犯罪を犯す者もいた。
そういった者どもを、人々はこう呼んでいるのだ、歪みと。
「これは、ちょっと厳しいことになりそうだな・・・・・・」
瑠璃の頬を、冷や汗が一筋、伝っていくのだった。
「8時間の死闘の末じゃんけんで勝負つけるのか・・・・・・最近の不良の感性はよくわかんないね」
サクラと勇気の2人は、帰り道を歩きながらそんなことを話していた。来た時は2人別々、駅前で待ち合わせをしたわけなのだが、今度は駅では別れずに家に帰るまで一緒に帰ることにしていた。
駅前の栄えている部分から離れていくうちに、街並みはどんどん変わっていって住宅街へと移っていった。
「そういえば、最近ここに通り魔的な奴が出るって聞いたことがあるな」
「えー本当かい?怖いなあ」
2人は噂話なんかしながら住宅街を進んでいく。そして途中の交差する道の角を曲がろうとした時、2人は意外な人物に出会った。
「ん?おお・・・・・・」
「あれ?お前・・・・・・」
2人が出会ったのは、魔法少女ラピスの正体。ノーマルでノーマルなごく普通の男子高校生。瑠璃という名前と同じ髪色と同じ目の色をした男、緑瑠璃であった。
「おー、お前、同じクラスの緑瑠璃じゃんか!」
「そういうお前は、ヤンキーガールのサクラじゃないか。こんなところで奇遇だな」
瑠璃は手をちょっとあげて気さくな笑顔を浮かべながらそう言った。
「緑、いや本当に奇遇だな。お前、ここら辺に住んでるわけじゃないだろ?なんでこんなとこにいるんだ?」
「それはパトロっ・・・・・・い、いやたまたま散歩をしてただけだ!それだけだ!」
「ほーん」
もちろん散歩というのは嘘である。さっきサクラが話していた通り、ここら辺に通り魔的な怪人物が出るという噂を聞いたので、パトロールをしていたのである。男の姿なのは、魔法少女ラピスだとバレて余計な警戒をされないためだ。
瑠璃はけっこうバレバレな感じで誤魔化したのだが、サクラは別に違和感を抱かなかったようで、なんだ散歩か、と普通に受け取った。そしてふと思い出した。
「あれ?そういえばお前、緑のこと好きとか言ってなかったっけ──────」
勇気が緑のことを好きと言っていたことを思い出し、問いかけながら振り向くと、
「・・・・・・・」
勇気が目を丸くし、両手で口元を覆って絶句していた。
「え、嘘・・・・・・?緑くん・・・・・・?」
「お前もう恋する乙女じゃん」
「あ、あの!緑くん!」
「ん?えーっと・・・・・・サクラさんのお友達かな?」
「あの!ファンです!握手してください!」
「あー、ファンね・・・・・・はあファン!?俺の!?魔法所女ラピスじゃなく!?俺の!?」
「いきなりファンとか言われて緑も困惑してんなあ・・・・・・」
とりあえず、瑠璃は言われた通りに勇気と握手した。顔を真っ赤にした勇気は、しばらくその手を洗わないことにしたのだった。
さて、そんなことで2人と道ばたで話をしていわけなのだが、不意に何者かに声をかけられた。
「よお、ずいぶん冴えねー男と喋ってんじゃねえかよ。そんな男と話すくらいなら、俺と3人で話してみねえか?3人だけの空間とかでよ」
本日二度目のナンパであった。瑠璃が振り向くと、そこにはいかにもガラの悪い、派手な服装をした男がいた。髪型もツンツンしていて派手で、目の覚めるような赤色をしている。
「なんだ?お前は。失せろ」
サクラは朝にナンパしてきた奴らにしたのと同じように、睨みを効かせた。しかし、その男はニヤニヤしたままでさっきの男たちのように逃げる素振りなど見せない。
「っ、コイツ・・・・・・!」
サクラは少し焦りを見せる。サクラの眼光で逃げ出さないというのは、そこそこ腕に自信がある奴だ。
「ん・・・・・・?ッ、コイツまさか!?」
瑠璃は何かに気づいたように懐から折り畳まれた紙を取り出し、それを開いて確認した。
「コイツ、間違いない!ここ最近ここら辺に出るっていう通り魔だ!!」
「は!?」
「え!?」
瑠璃の言葉に、2人は驚愕した。男は、そんな3人の様子を見てほくそ笑むと言った。
「通り魔なんて人聞き悪いなあ。俺はただ、親切な奴らから金もらっただけだぜ?ただちょーっと行きがかり上痛めつけたなきゃいけないこともあったってだけでさ」
「っ、ゲス野郎が・・・・・・」
「そんな睨みつけんなよ。可愛い顔が台無しだぜ?」
ヘラヘラ笑いながら、サクラに向かって男は言う。そして、瑠璃に向かって言った。
「そこのお前、とっとと失せろ。男はいらねーんだ。死にたくなかったら、そこの女2人置いて逃げることだな」
「バカが、誰がそんなこと─────」
するか、と瑠璃が言い切ろうとしたその時。
男が掌を瑠璃に見せるように前に突き出すという不思議な格好をして─────
瑠璃は反射的に腕を交差してそれを受け止めていた。この時、この場にいる男を含めた3人は気づかなかったが、瑠璃は瞬間的に男の時でも多少は使える、なけなしの魔力で腕をカバーして守っていた。プラス、姉が持たせてくれた『お守り』も効き目があったのだろう。瑠璃は無事だった。
しかしそれらがなかったとしたら─────考えたくもないことだ。
その二つがあってなお、瑠璃は腕に軽い火傷を負ってしまった。服などひとたまりもなく、それが当たった部分は焼け焦げて無くなってしまった。
「あれ、俺のファイアーボールを防がれたのは初めてだな。めちゃくちゃ頑丈な奴だなテメー」
ファイアーボール。そう、まさに炎の玉だった。男は掌から炎の玉を射出したのだ。
「そうかお前・・・・・・歪みか」
歪み。この世界は魔界の衝突によって世界の理法が捻じ曲がってしまって、普通ではありえないような能力を持った人間が現れるようになってしまったということは、すでに話しただろう。
しかし、そうして生まれた特殊な能力を持つ者の全てが、良き精神を持っていたわけではない。
その力を人々のために役立とうと、自衛官、警察、セカンドなどの職業に就く者もいれば、その力を自分の欲を満たすために使い、犯罪を犯す者もいた。
そういった者どもを、人々はこう呼んでいるのだ、歪みと。
「これは、ちょっと厳しいことになりそうだな・・・・・・」
瑠璃の頬を、冷や汗が一筋、伝っていくのだった。
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