姉から始まる魔法少女

大崎 狂花

文字の大きさ
8 / 27

第七話 2人と瑠璃②

しおりを挟む
「でな、8時間の死闘の末、結局じゃんけんで決着をつけることになってな」

「8時間の死闘の末じゃんけんで勝負つけるのか・・・・・・最近の不良の感性はよくわかんないね」

サクラと勇気の2人は、帰り道を歩きながらそんなことを話していた。来た時は2人別々、駅前で待ち合わせをしたわけなのだが、今度は駅では別れずに家に帰るまで一緒に帰ることにしていた。

駅前の栄えている部分から離れていくうちに、街並みはどんどん変わっていって住宅街へと移っていった。

「そういえば、最近ここに通り魔的な奴が出るって聞いたことがあるな」

「えー本当かい?怖いなあ」

2人は噂話なんかしながら住宅街を進んでいく。そして途中の交差する道の角を曲がろうとした時、2人は意外な人物に出会った。

「ん?おお・・・・・・」

「あれ?お前・・・・・・」

2人が出会ったのは、魔法少女ラピスの正体。ノーマルでノーマルなごく普通の男子高校生。瑠璃という名前と同じ髪色と同じ目の色をした男、緑瑠璃であった。

「おー、お前、同じクラスの緑瑠璃じゃんか!」

「そういうお前は、ヤンキーガールのサクラじゃないか。こんなところで奇遇だな」

瑠璃は手をちょっとあげて気さくな笑顔を浮かべながらそう言った。

「緑、いや本当に奇遇だな。お前、ここら辺に住んでるわけじゃないだろ?なんでこんなとこにいるんだ?」

「それはパトロっ・・・・・・い、いやたまたま散歩をしてただけだ!それだけだ!」

「ほーん」

もちろん散歩というのは嘘である。さっきサクラが話していた通り、ここら辺に通り魔的な怪人物が出るという噂を聞いたので、パトロールをしていたのである。男の姿なのは、魔法少女ラピスだとバレて余計な警戒をされないためだ。

瑠璃はけっこうバレバレな感じで誤魔化したのだが、サクラは別に違和感を抱かなかったようで、なんだ散歩か、と普通に受け取った。そしてふと思い出した。

「あれ?そういえばお前、緑のこと好きとか言ってなかったっけ──────」

勇気が緑のことを好きと言っていたことを思い出し、問いかけながら振り向くと、

「・・・・・・・」

勇気が目を丸くし、両手で口元を覆って絶句していた。

「え、嘘・・・・・・?緑くん・・・・・・?」

「お前もう恋する乙女じゃん」

「あ、あの!緑くん!」

「ん?えーっと・・・・・・サクラさんのお友達かな?」

「あの!ファンです!握手してください!」

「あー、ファンね・・・・・・はあファン!?俺の!?魔法所女ラピスじゃなく!?俺の!?」

「いきなりファンとか言われて緑も困惑してんなあ・・・・・・」

とりあえず、瑠璃は言われた通りに勇気と握手した。顔を真っ赤にした勇気は、しばらくその手を洗わないことにしたのだった。

さて、そんなことで2人と道ばたで話をしていわけなのだが、不意に何者かに声をかけられた。

「よお、ずいぶん冴えねー男と喋ってんじゃねえかよ。そんな男と話すくらいなら、俺と3人で話してみねえか?3人だけの空間とかでよ」

本日二度目のナンパであった。瑠璃が振り向くと、そこにはいかにもガラの悪い、派手な服装をした男がいた。髪型もツンツンしていて派手で、目の覚めるような赤色をしている。

「なんだ?お前は。失せろ」

サクラは朝にナンパしてきた奴らにしたのと同じように、睨みを効かせた。しかし、その男はニヤニヤしたままでさっきの男たちのように逃げる素振りなど見せない。

「っ、コイツ・・・・・・!」

サクラは少し焦りを見せる。サクラの眼光で逃げ出さないというのは、そこそこ腕に自信がある奴だ。

「ん・・・・・・?ッ、コイツまさか!?」

瑠璃は何かに気づいたように懐から折り畳まれた紙を取り出し、それを開いて確認した。

「コイツ、間違いない!ここ最近ここら辺に出るっていう通り魔だ!!」

「は!?」

「え!?」

瑠璃の言葉に、2人は驚愕した。男は、そんな3人の様子を見てほくそ笑むと言った。

「通り魔なんて人聞き悪いなあ。俺はただ、親切な奴らから金もらっただけだぜ?ただちょーっと行きがかり上痛めつけたなきゃいけないこともあったってだけでさ」

「っ、ゲス野郎が・・・・・・」

「そんな睨みつけんなよ。可愛い顔が台無しだぜ?」

ヘラヘラ笑いながら、サクラに向かって男は言う。そして、瑠璃に向かって言った。

「そこのお前、とっとと失せろ。男はいらねーんだ。死にたくなかったら、そこの女2人置いて逃げることだな」

「バカが、誰がそんなこと─────」

するか、と瑠璃が言い切ろうとしたその時。

男が掌を瑠璃に見せるように前に突き出すという不思議な格好をして─────

瑠璃は反射的に腕を交差してそれを受け止めていた。この時、この場にいる男を含めた3人は気づかなかったが、瑠璃は瞬間的に男の時でも多少は使える、なけなしの魔力で腕をカバーして守っていた。プラス、姉が持たせてくれた『お守り』も効き目があったのだろう。瑠璃は無事だった。

しかしそれらがなかったとしたら─────考えたくもないことだ。

その二つがあってなお、瑠璃は腕に軽い火傷を負ってしまった。服などひとたまりもなく、それが当たった部分は焼け焦げて無くなってしまった。

「あれ、俺のファイアーボールを防がれたのは初めてだな。めちゃくちゃ頑丈な奴だなテメー」

ファイアーボール。そう、まさに炎の玉だった。男は掌から炎の玉を射出したのだ。

「そうかお前・・・・・・歪みか」

歪み。この世界は魔界の衝突によって世界の理法が捻じ曲がってしまって、普通ではありえないような能力を持った人間が現れるようになってしまったということは、すでに話しただろう。

しかし、そうして生まれた特殊な能力を持つ者の全てが、良き精神を持っていたわけではない。
 
その力を人々のために役立とうと、自衛官、警察、セカンドなどの職業に就く者もいれば、その力を自分の欲を満たすために使い、犯罪を犯す者もいた。

そういった者どもを、人々はこう呼んでいるのだ、歪みと。

「これは、ちょっと厳しいことになりそうだな・・・・・・」

瑠璃の頬を、冷や汗が一筋、伝っていくのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は賑やかになった。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...