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2-幕間 兄弟のこそこそ話 ①
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◆兄弟のこそこそ話 ①
家族団らんの夕食は、わちゃわちゃしてしまったが。
母上が一言。
「公爵家当主である父上のお言葉は、無下にしてはならないものです。けれど、クロウもシオンも大事な我が子。どちらも当主になれるよう、育ててきたつもりです。クロード様、私もえこひいきは嫌いです」
それで、無意識でドラゴン出したぼくに大興奮だった父も。いったん言葉をのみ込んだのだ。
母は笑顔ながら、ぼくのドラゴンよりも冷ややかな空気感で、恐ろしかった。
「とはいえ、後継問題は家の大事ですから。誰もが納得いく形になるよう、もう少し話を積み重ねていきましょう。ねぇ、クロード様? まずはクロウと、ゆっくりお話をしたいと、申しておりましたよね?」
やんわりとした言い方で、母は父に振り。
父は、ガクガクとうなずく。
「そうだ、クロウ。目覚めてすぐに、息子が話す間もなく、輿入れしてしまうなんて。悲しいではないか? 嫁いでいくとしても、短い間でもいいから、父として、クロウと思い出を作りたいのだ」
シオンと同じ顔で、情けない様子で懇願されると。弱い。
つか、兄上ぇ、というシオンの声が聞こえるようだ。
まさしく、ぼくが一番弱いやつぅ。
ため息をつき、ぼくは父に謝った。
「父上。当主である父上に、いきなり怒っちゃって、すみません。けど僕は。十歳しか離れていなくて、弟のシオンと同じ顔立ちをしている父上を、なんだか、父上として見られないのです。どちらかというと、兄上、的な?」
ずっと。父を助けた日から、違和感があったのだ。
いわゆる、こんな若い人、父上とか、無理無理ぃ、みたいな?
前世の父親だって、彼よりは年上だった。
なんというか、大樹を思わせるどっしり感というのか。決して追いつけない時間の重みというのか。父親には、そういうものがあるではないか?
もちろん、父上も、公爵家の当主となって長い年月があるのだから。威厳や経験値は、ぼくよりいっぱいあるけれど。
友達認定したセドリックやアルフレドと、年がマジで近いんだもん。
だからどうしても、友達とか兄弟感覚になってしまうわけだ。
親子間で年齢差って、大事なものなのだな、としみじみ思ったよ。
「兄上? それでも良いぞ」
だが、戸惑うぼくを見て。父はあっさり、兄的地位を受け入れたのだった。
「私も、いきなり成人した息子ができて、戸惑っているところもある。クロウには兄弟の立場で、私を支えてもらいたい。まぁ、公では、父上と呼んでもらわなければならないが。忌憚なく助言してくれたら嬉しい」
公爵家の当主が、ここまで譲歩してくれるのだ。ぼくは、それに応えなければならないな。
だ、け、ど。
陛下との結婚は、外せないので。
ぼくはお言葉に甘えて、ひとつ父に提案することにした。
「では、さっそく。父上はまだお若い。十歳しか年の離れていないぼくが、後継者というのは良くないです。せめて、一回り以上離れているのが、代替わりには相応しい。ぼくはシオンが最適だと思いますが。後継者がひとりでは心もとないということでしたら、もうひとり、御子を作ってみてはどうですか?」
ぼくの言葉に、母は頬を染め、父はワタワタと手を振り回した。
「一提案です。こればかりは授かりものですしね?」
そう言って、ぼくは席を立ち。シオンとふたりで食堂を出たのだった。
あとは、お若い者同士で…なんちゃって。
それで、ぼくは自室に戻ったわけなのだが。
なんでかシオンも入ってきた。
とはいえ、慣れ親しんだ兄弟水入らずな感じが、なんだか、懐かしくて。ホッとした気分になる。
それにつけても、喧嘩からの気まずい食卓、は母の言葉で回避したものの。まだ、問題が解決したわけではなく。後継問題については、もう一波乱くらいはありそうだな?
王宮から公爵家に、ぼくが帰る。それは、このことを話すためだったのかと思うと。陛下との結婚式まで、気が重い日々が続きそうだ。
堅苦しい、重い衣装を脱ぐと。背後から、シオンが受け取ってくれて。クローゼットに戻してくれる。
ちらりと見た感じ、なんか、上等な衣装が十着以上ありそうで。引く。
大叔母様が用意したのだろうか?
安定の黒色の、シャツとズボンになった、ぼく。
その首元に、シオンが頭を預けてきた。
「甘えんぼ、坊ちゃん」
「からかわないでください。兄上と一週間も離れるのは、久しぶりで。寂しかったのですよ」
シオンはスゥと、息を吸い込むが。
なんか、吸われているような。匂いを嗅ぐという軽い感じではなくて、血を吸われているみたいな。体からなにかが抜け出て行くみたいな、感じだ。
「なにか、吸ってる?」
「魔力。兄上から漏れ出る魔力が、とても心地よくて。あぁ、癖になるな、この感じ」
「他人の魔力は、受け付けないものが多いと聞くが。兄弟だから、心地いいのかな?」
魔力は、前世で言うところの輸血みたいに。人によって、受け入れるものと受け入れられないものがある。それは感覚的にわかる。
相性の悪い魔力を取り込むと、気持ち悪くなったり、ヘタしたら、死ぬこともあるらしい。
同じ属性でも、波長が違えば、好まない。
でも、会話や軽いスキンシップくらいでは、影響はないんだって。
ちなみに、陛下の魔力は。
さすがに、対を成す者なので。非常に甘くて心地よいのです。ふふ。
「つい最近まで、魔力のこととか、考えたことがなかったのですが。ぼくは結構、好き嫌いが激しそうです。魔力の好き嫌いは、人の好き嫌いにも関わるので、学園でうまく立ち回れるのか、今から心配ですよ」
はぁ、と。シオンは重いため息をついて、つぶやいた。
シオンも。シャーロット殿下同様、四月十日から学園に通うことになっている。
「学園出身のセドリックに、ちょっと聞いたけど。魔法属性を気にしないで、まんべんなく付き合う方が、良いらしい。一見、魔力的に相性が悪そうでも、付き合ってみたら気さくで良いやつってパターンは多いんだって。ベタベタしなければ、魔力の影響は受けないし。やっぱり、友達は中身が大切だってことだな?」
「そうですね。清浄な魔力に飢えたら、兄上の魔力を吸えば良いのですし」
いやいや、兄を吸いに来る弟の図は、いかがなものか。
陛下にも、怒られちゃいそうだ。
「ま、ほどほどにな」
ぼくは、シオンの頭をパフパフはたいて、体を離すと。ふたりでベッドに腰かけ、兄弟こそこそ話の体勢を取った。
ま、もうこそこそ話さなくてもいいんだけど。
「それよりも、後継のことだ。ぼくは、そのことは全然頭になかった。一足飛びに、陛下と結婚、って思っていたから。公爵家の跡取りは、当然シオンがなるものだと、思い込んでいたよ」
「兄上は、そういう人ですよね。ぼくは、公爵家の跡取りには、兄上が一番相応しいと思っていますけど」
「おまえまで、そんなことを言うなんて…」
シオンは気だるげな感じで上着を脱いで、スカーフタイをゆるめる。
その仕草が、セクシーワイルドなのですけど?
「そりゃ、兄上は。魔力も潤沢で、王家の魔法を抑止する対の者の、資格も充分ですし。聡明で、人柄も申し分なく、領地経営も、すぐに任せられる才覚がおありですから。でも、ぼくは。兄上の幸せを一番に望みます。兄上が、陛下と結婚するのが、一番幸せなのだというのなら。公爵家はぼくが引き受けますよ。そして、兄上を、生涯サポートします」
「シオンんんん」
ぼくは、感激して。瞳をウルウルさせた。
「でも、陛下と結婚して不幸せになるのなら、速攻で帰ってきてくださいね? ぼくが兄上を一生養いますから」
「一言、余計だっつうの」
ぼくは、口をとがらせる。すぐ、そういうことを言う。
「ぼくも、シオンの幸せが大事だよ? シオンの意見も聞かないまま、後継に推してしまって、すまなかった。でも、引き受けると言ってくれて、ぼくのことを考えてくれて、嬉しいよ」
本当に、よくできた弟である。
ぼくの弟にはもったいないくらいだ。
「しかし、父上をどう説得するべきか。父上がどういう人か、イマイチよくわからなくて。どう接していいのかも、そこから、もうわからないんだ。さっきは、兄でいいなんて言ったけど。本音かどうか…」
ぼくが、父の対応についてつぶやくと。
シオンは訳知り顔で、うなずいた。
「あぁ、本音だと思いますよ。父上は…非常に言いにくく。自分で言うのも、嫌な感じなのですが。一週間そばで見て、感じたのは。父上は、厄介なぼくです」
「厄介な、シオン?」
意味がわからず。首を傾げると。
シオンは、んんっと喉に咳をこじらせた。
この頃、陛下もよくそれをやるんですが、風邪が流行っているのですか?
「…兄上大好きな、ぼく。兄上のそばにいたい、ぼく。そこにさらに、国を動かせるくらいに、地位と権威がある、ぼく。はたまた、ぼくは兄上とずっと一緒にいましたが…十年分の兄上を堪能できなかった、兄上に飢えた、ぼく。ですっ」
「なんだとっ! 激重ブラコンのシオンが×2とか? いやいや、父上は母上が一番好きだろ? だったら、ちょっとは、重みが減るんじゃないか?」
そんなわけないと、否定したいが。シオンは、さらりと言う。
「そうですね。確かに、父は母が一番だ。だったら。厄介な、ぼく。三分の一、くらいですかね?」
ぼくは。眉間のシワが取れなかった。
シオンの激重ブラコンは、たとえ三分の一でも、激重に変わりはない。
「そうか…それは厄介だな」
「なんか、しみじみ言われると、ぼくにもダメージが来るのですが」
シオンの眉間にも、シワができた。
「しかし、ほぼほぼ会ったことがないのに。なんで父上は、ぼくにそんなに執着するんだろう?」
十年以上前、ぼくが子供の頃。父上はたびたび、別邸に顔を見せに来た。けれど。
その程度しか、関りがなかったのだ。
ぼくとシオンは、第二夫人の子で、別邸に住んでいた。
今いる公爵邸、いわゆる本邸には、第一夫人と父上が生活していたわけなのだが。
元々体の弱かった第一夫人が、病で亡くなるまで…つか、結局はずっと、離れて暮らしていたわけだ。
父には。公爵家の跡取りとして勉学に励めよ、とか。父親なら言うだろう、当たり前なことを声掛けされた、という記憶しかない。
「幼少の頃。家庭教師から、兄上が神童だと報告を受け。後継に据える日を楽しみにしていたらしいよ? さらに、一週間前に一目惚れ、というか。出会った頃の母上にそっくりで。惚れ直したとか、なんとか」
「いやいや、それは。母上に惚れ直したんでしょ?」
「もちろん、母上も好きだが。子爵令嬢だった母上に猛烈アタックした、あのときの気持ちがよみがえって。そんな兄上を、手放したくないって思っちゃったみたいなんだよね?」
うわぁ、激重な好意で押し潰されるような気分です。
ウザッ、とか。キモッ、とか。言ったらダメですよね? 一応、父ですし。
息子が好き、という気持ちを無下にはできません。
これは、アレですか? ファザコン?
ファザコンは、子供が父を好きなやつか。
じゃあ、息子ラブ? ムスコン? ウケるぅ。とか言ってる場合ではない。
「なーにー? どうすればいいのぉ? どうやったら父上は、ぼくを円満に嫁がせてくれるのぉ?」
「ま、しばらく? 学園通う間くらいは、父孝行して? 思い出作りに付き合ってやればぁ? ぼくはぼくで、学園生活中は、じっくり兄上を堪能するから」
シオンの語尾に、ハートマークが見えた。
まぁ、それはいつものことだからいいのだが。
はぁ。父に関しては、どうやらシオンの言うとおりにするしかなさそうだな?
もうっ、アイキンⅡが始まるかもしれなくて、こっちもハラハラだっていうのに。
そこで、ぼくは。アイリスの言葉を唐突に思い出した。
攻略対象者には、漏れなく婚約者がいるって、言ってたけど?
「シオン。ちょっと、薄っすら、聞いたんだけど。違っているかもしれないけど。シオンに婚約者って、いるのか?」
「…いませんよ」
なんか間があったけど、一応、シオンは否定した。
「つか、婚約者じゃなくて、婚約者候補になら、なっていますけど。シャーロット殿下の」
「えっ、殿下の、婚約者?」
これまた、公爵家から王族への結婚話?
そうかぁ、シャーロットはシオンのことを意識していたから。ラブの予感がします。
でもそうなってくると、有力貴族の勢力図とか…アワアワ。
バジリスク公爵家一強の気配が…アワアワ。
小説とかで、権力が偏ると、不満が出て、内乱勃発とか…アワアワ。
「婚約者じゃなくて、婚約者候補だよ、兄上。ぼくの他に、宰相の孫とか、オフロ公爵家の三男とか、いるから。兄上と陛下が、結婚となると。御世継問題が出てくるだろ? それで、王族の血脈で、男系を保つ、殿下の年齢に近しい有力貴族に、婚約話が来ているんだ。とはいえ、陛下も妹に政略的な結婚をさせたくないから。何人かの候補の中で、恋愛するようなら、いいなぁ、くらいな? だから正式な打診ではないんだ」
ってことは? アイキンⅡで言うと? まずぼくが、陛下の婚約者で、第一悪役令嬢。
そして、公爵令息のシオンと宰相の孫が婚約者候補であるシャーロットが、第二悪役令嬢?
つか、第一悪役令嬢って、なんだよ?
「へー、シオンが殿下の婚約者候補かぁ、ほー」
しかししかし、大きなナリをしていても、まだ十四歳のシオンが。婚約者の話が来る年になるとは。お兄ちゃん、感激です。
でも、見た目はエロエロビーストですから。
結婚話がわんさか来るのは、時間の問題だとは思っていましたけど。
でも、たとえばぁ。シオンとシャーロットが恋に落ちて。
その、お子様をひとり、養子にお迎えできれば。ぼくも陛下も、己の血族の子供を育てられるかもしれませんね?
そうしたら、バジリスク公爵家は。王家の血脈を男系でつないでいるので、王家の存続に貢献できます。
いえいえ、これは夢のお話です。
親戚といえど、本当の両親から子供を引き離してしまうのは、可哀想なことですから。
実は、王家の御世継問題について、陛下としっかり話していないのです。
つか、怖くて…聞けないよぉ。
普通に、側室を迎えるから大丈夫だ、なんて、言われるかもしれないじゃん?
そんなの、嫌じゃー。ぼくにだって、それなりに独占欲とかあるんですから。
でも、王族と結婚するなら。王家の血族を絶やさないようにしなければならない、というか。
だから、側室嫌じゃーなんて言っていられない、というか。
男同士で結婚するなら、当然、側室を迎えるのは覚悟しとけよ…みたいな。
脈々と、男系直系でつないできた、由緒ある王家一族。
その血筋を、ぼくらの代で途絶えさせる。それは…。
王家の英雄伝説や自伝を愛読してきた、ぼくとしても。背筋が凍る、由々しき事態なのです。
わ、わ、わ、無理無理。
ぼくの頭だけでは、考えられない。
だから、結婚する前に、ここはちゃんと、陛下と話しておかなければいけないところなのです。
陛下が、どのようにお考えなのか。
陛下の後継者問題は、国の一大事なのですから。
男のぼくでは、陛下の御子を産んで差し上げられないのですからね。
家族団らんの夕食は、わちゃわちゃしてしまったが。
母上が一言。
「公爵家当主である父上のお言葉は、無下にしてはならないものです。けれど、クロウもシオンも大事な我が子。どちらも当主になれるよう、育ててきたつもりです。クロード様、私もえこひいきは嫌いです」
それで、無意識でドラゴン出したぼくに大興奮だった父も。いったん言葉をのみ込んだのだ。
母は笑顔ながら、ぼくのドラゴンよりも冷ややかな空気感で、恐ろしかった。
「とはいえ、後継問題は家の大事ですから。誰もが納得いく形になるよう、もう少し話を積み重ねていきましょう。ねぇ、クロード様? まずはクロウと、ゆっくりお話をしたいと、申しておりましたよね?」
やんわりとした言い方で、母は父に振り。
父は、ガクガクとうなずく。
「そうだ、クロウ。目覚めてすぐに、息子が話す間もなく、輿入れしてしまうなんて。悲しいではないか? 嫁いでいくとしても、短い間でもいいから、父として、クロウと思い出を作りたいのだ」
シオンと同じ顔で、情けない様子で懇願されると。弱い。
つか、兄上ぇ、というシオンの声が聞こえるようだ。
まさしく、ぼくが一番弱いやつぅ。
ため息をつき、ぼくは父に謝った。
「父上。当主である父上に、いきなり怒っちゃって、すみません。けど僕は。十歳しか離れていなくて、弟のシオンと同じ顔立ちをしている父上を、なんだか、父上として見られないのです。どちらかというと、兄上、的な?」
ずっと。父を助けた日から、違和感があったのだ。
いわゆる、こんな若い人、父上とか、無理無理ぃ、みたいな?
前世の父親だって、彼よりは年上だった。
なんというか、大樹を思わせるどっしり感というのか。決して追いつけない時間の重みというのか。父親には、そういうものがあるではないか?
もちろん、父上も、公爵家の当主となって長い年月があるのだから。威厳や経験値は、ぼくよりいっぱいあるけれど。
友達認定したセドリックやアルフレドと、年がマジで近いんだもん。
だからどうしても、友達とか兄弟感覚になってしまうわけだ。
親子間で年齢差って、大事なものなのだな、としみじみ思ったよ。
「兄上? それでも良いぞ」
だが、戸惑うぼくを見て。父はあっさり、兄的地位を受け入れたのだった。
「私も、いきなり成人した息子ができて、戸惑っているところもある。クロウには兄弟の立場で、私を支えてもらいたい。まぁ、公では、父上と呼んでもらわなければならないが。忌憚なく助言してくれたら嬉しい」
公爵家の当主が、ここまで譲歩してくれるのだ。ぼくは、それに応えなければならないな。
だ、け、ど。
陛下との結婚は、外せないので。
ぼくはお言葉に甘えて、ひとつ父に提案することにした。
「では、さっそく。父上はまだお若い。十歳しか年の離れていないぼくが、後継者というのは良くないです。せめて、一回り以上離れているのが、代替わりには相応しい。ぼくはシオンが最適だと思いますが。後継者がひとりでは心もとないということでしたら、もうひとり、御子を作ってみてはどうですか?」
ぼくの言葉に、母は頬を染め、父はワタワタと手を振り回した。
「一提案です。こればかりは授かりものですしね?」
そう言って、ぼくは席を立ち。シオンとふたりで食堂を出たのだった。
あとは、お若い者同士で…なんちゃって。
それで、ぼくは自室に戻ったわけなのだが。
なんでかシオンも入ってきた。
とはいえ、慣れ親しんだ兄弟水入らずな感じが、なんだか、懐かしくて。ホッとした気分になる。
それにつけても、喧嘩からの気まずい食卓、は母の言葉で回避したものの。まだ、問題が解決したわけではなく。後継問題については、もう一波乱くらいはありそうだな?
王宮から公爵家に、ぼくが帰る。それは、このことを話すためだったのかと思うと。陛下との結婚式まで、気が重い日々が続きそうだ。
堅苦しい、重い衣装を脱ぐと。背後から、シオンが受け取ってくれて。クローゼットに戻してくれる。
ちらりと見た感じ、なんか、上等な衣装が十着以上ありそうで。引く。
大叔母様が用意したのだろうか?
安定の黒色の、シャツとズボンになった、ぼく。
その首元に、シオンが頭を預けてきた。
「甘えんぼ、坊ちゃん」
「からかわないでください。兄上と一週間も離れるのは、久しぶりで。寂しかったのですよ」
シオンはスゥと、息を吸い込むが。
なんか、吸われているような。匂いを嗅ぐという軽い感じではなくて、血を吸われているみたいな。体からなにかが抜け出て行くみたいな、感じだ。
「なにか、吸ってる?」
「魔力。兄上から漏れ出る魔力が、とても心地よくて。あぁ、癖になるな、この感じ」
「他人の魔力は、受け付けないものが多いと聞くが。兄弟だから、心地いいのかな?」
魔力は、前世で言うところの輸血みたいに。人によって、受け入れるものと受け入れられないものがある。それは感覚的にわかる。
相性の悪い魔力を取り込むと、気持ち悪くなったり、ヘタしたら、死ぬこともあるらしい。
同じ属性でも、波長が違えば、好まない。
でも、会話や軽いスキンシップくらいでは、影響はないんだって。
ちなみに、陛下の魔力は。
さすがに、対を成す者なので。非常に甘くて心地よいのです。ふふ。
「つい最近まで、魔力のこととか、考えたことがなかったのですが。ぼくは結構、好き嫌いが激しそうです。魔力の好き嫌いは、人の好き嫌いにも関わるので、学園でうまく立ち回れるのか、今から心配ですよ」
はぁ、と。シオンは重いため息をついて、つぶやいた。
シオンも。シャーロット殿下同様、四月十日から学園に通うことになっている。
「学園出身のセドリックに、ちょっと聞いたけど。魔法属性を気にしないで、まんべんなく付き合う方が、良いらしい。一見、魔力的に相性が悪そうでも、付き合ってみたら気さくで良いやつってパターンは多いんだって。ベタベタしなければ、魔力の影響は受けないし。やっぱり、友達は中身が大切だってことだな?」
「そうですね。清浄な魔力に飢えたら、兄上の魔力を吸えば良いのですし」
いやいや、兄を吸いに来る弟の図は、いかがなものか。
陛下にも、怒られちゃいそうだ。
「ま、ほどほどにな」
ぼくは、シオンの頭をパフパフはたいて、体を離すと。ふたりでベッドに腰かけ、兄弟こそこそ話の体勢を取った。
ま、もうこそこそ話さなくてもいいんだけど。
「それよりも、後継のことだ。ぼくは、そのことは全然頭になかった。一足飛びに、陛下と結婚、って思っていたから。公爵家の跡取りは、当然シオンがなるものだと、思い込んでいたよ」
「兄上は、そういう人ですよね。ぼくは、公爵家の跡取りには、兄上が一番相応しいと思っていますけど」
「おまえまで、そんなことを言うなんて…」
シオンは気だるげな感じで上着を脱いで、スカーフタイをゆるめる。
その仕草が、セクシーワイルドなのですけど?
「そりゃ、兄上は。魔力も潤沢で、王家の魔法を抑止する対の者の、資格も充分ですし。聡明で、人柄も申し分なく、領地経営も、すぐに任せられる才覚がおありですから。でも、ぼくは。兄上の幸せを一番に望みます。兄上が、陛下と結婚するのが、一番幸せなのだというのなら。公爵家はぼくが引き受けますよ。そして、兄上を、生涯サポートします」
「シオンんんん」
ぼくは、感激して。瞳をウルウルさせた。
「でも、陛下と結婚して不幸せになるのなら、速攻で帰ってきてくださいね? ぼくが兄上を一生養いますから」
「一言、余計だっつうの」
ぼくは、口をとがらせる。すぐ、そういうことを言う。
「ぼくも、シオンの幸せが大事だよ? シオンの意見も聞かないまま、後継に推してしまって、すまなかった。でも、引き受けると言ってくれて、ぼくのことを考えてくれて、嬉しいよ」
本当に、よくできた弟である。
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ぼくが、父の対応についてつぶやくと。
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「あぁ、本音だと思いますよ。父上は…非常に言いにくく。自分で言うのも、嫌な感じなのですが。一週間そばで見て、感じたのは。父上は、厄介なぼくです」
「厄介な、シオン?」
意味がわからず。首を傾げると。
シオンは、んんっと喉に咳をこじらせた。
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「…兄上大好きな、ぼく。兄上のそばにいたい、ぼく。そこにさらに、国を動かせるくらいに、地位と権威がある、ぼく。はたまた、ぼくは兄上とずっと一緒にいましたが…十年分の兄上を堪能できなかった、兄上に飢えた、ぼく。ですっ」
「なんだとっ! 激重ブラコンのシオンが×2とか? いやいや、父上は母上が一番好きだろ? だったら、ちょっとは、重みが減るんじゃないか?」
そんなわけないと、否定したいが。シオンは、さらりと言う。
「そうですね。確かに、父は母が一番だ。だったら。厄介な、ぼく。三分の一、くらいですかね?」
ぼくは。眉間のシワが取れなかった。
シオンの激重ブラコンは、たとえ三分の一でも、激重に変わりはない。
「そうか…それは厄介だな」
「なんか、しみじみ言われると、ぼくにもダメージが来るのですが」
シオンの眉間にも、シワができた。
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うわぁ、激重な好意で押し潰されるような気分です。
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息子が好き、という気持ちを無下にはできません。
これは、アレですか? ファザコン?
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じゃあ、息子ラブ? ムスコン? ウケるぅ。とか言ってる場合ではない。
「なーにー? どうすればいいのぉ? どうやったら父上は、ぼくを円満に嫁がせてくれるのぉ?」
「ま、しばらく? 学園通う間くらいは、父孝行して? 思い出作りに付き合ってやればぁ? ぼくはぼくで、学園生活中は、じっくり兄上を堪能するから」
シオンの語尾に、ハートマークが見えた。
まぁ、それはいつものことだからいいのだが。
はぁ。父に関しては、どうやらシオンの言うとおりにするしかなさそうだな?
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「…いませんよ」
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「つか、婚約者じゃなくて、婚約者候補になら、なっていますけど。シャーロット殿下の」
「えっ、殿下の、婚約者?」
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そうかぁ、シャーロットはシオンのことを意識していたから。ラブの予感がします。
でもそうなってくると、有力貴族の勢力図とか…アワアワ。
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小説とかで、権力が偏ると、不満が出て、内乱勃発とか…アワアワ。
「婚約者じゃなくて、婚約者候補だよ、兄上。ぼくの他に、宰相の孫とか、オフロ公爵家の三男とか、いるから。兄上と陛下が、結婚となると。御世継問題が出てくるだろ? それで、王族の血脈で、男系を保つ、殿下の年齢に近しい有力貴族に、婚約話が来ているんだ。とはいえ、陛下も妹に政略的な結婚をさせたくないから。何人かの候補の中で、恋愛するようなら、いいなぁ、くらいな? だから正式な打診ではないんだ」
ってことは? アイキンⅡで言うと? まずぼくが、陛下の婚約者で、第一悪役令嬢。
そして、公爵令息のシオンと宰相の孫が婚約者候補であるシャーロットが、第二悪役令嬢?
つか、第一悪役令嬢って、なんだよ?
「へー、シオンが殿下の婚約者候補かぁ、ほー」
しかししかし、大きなナリをしていても、まだ十四歳のシオンが。婚約者の話が来る年になるとは。お兄ちゃん、感激です。
でも、見た目はエロエロビーストですから。
結婚話がわんさか来るのは、時間の問題だとは思っていましたけど。
でも、たとえばぁ。シオンとシャーロットが恋に落ちて。
その、お子様をひとり、養子にお迎えできれば。ぼくも陛下も、己の血族の子供を育てられるかもしれませんね?
そうしたら、バジリスク公爵家は。王家の血脈を男系でつないでいるので、王家の存続に貢献できます。
いえいえ、これは夢のお話です。
親戚といえど、本当の両親から子供を引き離してしまうのは、可哀想なことですから。
実は、王家の御世継問題について、陛下としっかり話していないのです。
つか、怖くて…聞けないよぉ。
普通に、側室を迎えるから大丈夫だ、なんて、言われるかもしれないじゃん?
そんなの、嫌じゃー。ぼくにだって、それなりに独占欲とかあるんですから。
でも、王族と結婚するなら。王家の血族を絶やさないようにしなければならない、というか。
だから、側室嫌じゃーなんて言っていられない、というか。
男同士で結婚するなら、当然、側室を迎えるのは覚悟しとけよ…みたいな。
脈々と、男系直系でつないできた、由緒ある王家一族。
その血筋を、ぼくらの代で途絶えさせる。それは…。
王家の英雄伝説や自伝を愛読してきた、ぼくとしても。背筋が凍る、由々しき事態なのです。
わ、わ、わ、無理無理。
ぼくの頭だけでは、考えられない。
だから、結婚する前に、ここはちゃんと、陛下と話しておかなければいけないところなのです。
陛下が、どのようにお考えなのか。
陛下の後継者問題は、国の一大事なのですから。
男のぼくでは、陛下の御子を産んで差し上げられないのですからね。
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その美しさで知られた母に似て美貌の第三王子ツェーレンは、王弟に嫁いだ隣国で不貞を疑われ哀れ極刑に……と思ったら逆行!? しかもまだ夫選びの前。訳が分からないが、同じ道は絶対に御免だ。
「隣国以外でお願いします!」
死を回避する為に選んだ先々でもバラエティ豊かにkillされ続け、巻き戻り続けるツェーレン。これが最後と十二回目の夫となったのは、有名特殊な一族の三男、天才魔術師アレスター。
彼は婚姻を拒絶するが、ツェーレンが呪いを受けていると言い解呪を約束する。
いじられ体質の情けない末っ子天才魔術師×素直前向きな呪われ美形王子。
転移日本人を祖に持つグレイシア三兄弟、三男アレスターの物語。
小説家になろう様にも掲載しております。
※本編完結。ぼちぼち番外編を投稿していきます。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
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