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第4話 戦士フィオナの襲撃
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朝靄が晴れ、奴隷市場の広場には喧騒が満ち始めていた。
地面には豪奢な紅い絨毯が敷かれ、その中央には組み上げられた木製の特設ステージ。金の縁取りがされた幕が風に揺れ、上空には朝日に照らされた鎖が吊るされている。
その鎖に繋がれ、悠斗の檻がゆっくりと吊り上げられていった。
「うわっ……ちょっ、マジかよ……」
鉄の格子にしがみつきながら、悠斗は眼下の光景に言葉を失った。
ステージの周囲には、ド派手な衣装を身にまとった貴族たち、肥え太った富豪、眼光鋭い商人たちが、次々と集まってくる。まるで豪華な舞踏会でも始まるかのような雰囲気だが、そこで売買されるのは「人間」や「獣人」。
そして——その目玉商品が、自分だ。
「おい、見ろよ。あれが噂の精霊獣の混血種らしいぜ」
「ふむ……あれが『支配の声』を持つという……本当なら、兵に使える」
「いくらまで跳ね上がるかねぇ。奴隷の値段じゃねぇぞ、こりゃ」
見下すような視線と、値踏みするような会話が飛び交う中、ステージ下で奴隷商人の一人がマイクのような魔導具を持って叫んだ。
「お待たせいたしました! 本日の目玉はなんと……滅多にお目にかかれない、『精霊獣の混血種』でございます!」
檻の上にかけられた布がバサリと取り払われると、観客たちからどよめきが起こる。
「見た目は人間……だが、内に宿るは異種の血。こやつ、な、なんと! 獣人すら制御できるのです!」
その言葉に、群衆の空気が変わった。興味から、熱狂へ。欲望がざわつく。
「おもしろい……人間の姿のまま、支配の呪術でも使えるのか?」
ひときわ目立つローブ姿の貴族が笑う。
悠斗は、黙って格子越しにその男を睨みつけた。
(クソ……俺、売られるどころか、完全に見世物じゃねぇか……)
背筋をつたう冷たい感覚。汗が首筋を流れ、手は無意識に鉄格子を握りしめる。心臓の鼓動が、嫌でも高まっていく。
ここから逃げなければならない。だが手は縛られ、檻は吊るされ、観客の視線が突き刺さる。
悠斗の緊張と不安が、今まさに頂点へと達しようとしていた——。
そして、オークションが始まったその瞬間。
突如、遠くの空気が震えるような音が市場を包み込む。
「アオォォォォン!!!」
鋭く、力強く、魂を揺さぶるような咆哮——。それは紛れもない、獣人の咆哮だった。
「……な、なんだ?」
「いまの声……まさか」
観客たちがざわついた次の瞬間。
ドガァァンッ!!
市場の東側にある木壁が、内側から爆発するように吹き飛ばされた。土煙が上がり、視界を奪う。観客たちが悲鳴を上げる間に、その中から飛び出してきたのは数名の武装した獣人たちだった。
その先頭に立っていたのは、銀色の髪と鋭い金色の瞳を持つ少女。銀狼の耳がぴんと立ち、長い尾が威嚇するように揺れている。軽やかな革鎧に黒いショートマント、背には戦斧、腰には双の短剣——。
小柄な体格ながら、その一歩一歩からは凄まじい気迫が溢れていた。
「誰だッ!?」
「護衛を呼べ、武装襲撃だッ!」
商人たちが混乱に叫び、護衛の兵が動き出す。
だが少女は怯まない。
群れの先頭に立つその者こそ、銀狼族の戦士・フィオナだった。彼女は檻の上に吊られた悠斗に一瞥をくれると、そのままステージに向けて跳び上がった。
「奴隷にされるために生まれた獣人など、いない……!」
その一喝に、獣人たちの檻の中から感情が爆ぜる。驚き、希望、歓喜——そして、怒り。
「長、制圧は?」
後方から駆け寄った狼獣人の一人が、低く問う。
フィオナは短剣を抜きながら、涼しい声で言い放った。
「人間どもに慈悲はいらない。殺さずとも、骨の一本くらい折れ」
「了解」
武装した獣人たちが、一斉に行動を開始する。
悠斗はその一部始終を、檻の中から目を丸くして見ていた。
「うおっ……めっちゃ本気だ……!」
まるで映画の一場面のような光景。だがこれは現実——。
檻に入れられたまま、悠斗は理解していた。
解放者は現れた。しかし同時に、新たな混乱の種も巻かれたのだ。
混乱の渦の中、檻の前を駆け抜けた誰かの蹴りが、鉄の鍵を砕いた。
「え……あ、開いた……?」
悠斗はしばし呆然とし、その後ようやく事態を飲み込み、震える手で扉を押し開ける。自由。何時間、いや何日ぶりだろうか。
初めてこの異世界に来て以来、ようやく檻の外に立った。
「助かった……マジで……」
思わずその場にへたり込みそうになるが、背筋に冷たい気配が走った。その気配に導かれるように顔を上げると、目の前にはひとりの少女が立っていた。
銀色の髪が揺れる。金の瞳が、射抜くように悠斗を見据えていた。
「……人間が、なぜ獣人の檻にいた?」
低く、静かな声。その先にあるのは、明確な敵意。
「え、あの……いや、俺、ただ巻き込まれただけっていうか……」
少女は言葉を聞こうともせず、すでに腰の短剣に手をかけていた。
「人間のくせに、獣人の檻に入ってるなんて……罠に決まってるだろ」
「いやいやいや! 俺は敵じゃないって! 誤解だってば!」
悠斗が両手を広げて必死に否定すると、フィオナの瞳が細くなる。
「……知ってる。お前、人間の臭いがする」
「そりゃそうだ、だって人間だも――」
シュンッ――!
話の途中で、フィオナが地を蹴った。その動きは獣のように速く、鋭く、迷いがなかった。
「だからこそ怪しいんだ」
双の短剣が、風を裂いて一直線に悠斗へ襲いかかる!
「ちょ、マジか!?」
悠斗は咄嗟に身を引き、背後にあった檻の柱にぶつかりながらも避ける。
「助けに来た人に殺されるなんて聞いてないんだけど!?」
だがフィオナは一切迷わない。その目には、「敵と見なした者」以外、何も映っていなかった。
この混乱の中、ようやく解放されたはずの悠斗に迫る新たな危機。状況は味方を得たはずが、一転して命を狙われる展開へと変貌していた——。
悠斗vsフィオナ! 助けを求めた相手に襲われる!? 彼の運命やいかに!
地面には豪奢な紅い絨毯が敷かれ、その中央には組み上げられた木製の特設ステージ。金の縁取りがされた幕が風に揺れ、上空には朝日に照らされた鎖が吊るされている。
その鎖に繋がれ、悠斗の檻がゆっくりと吊り上げられていった。
「うわっ……ちょっ、マジかよ……」
鉄の格子にしがみつきながら、悠斗は眼下の光景に言葉を失った。
ステージの周囲には、ド派手な衣装を身にまとった貴族たち、肥え太った富豪、眼光鋭い商人たちが、次々と集まってくる。まるで豪華な舞踏会でも始まるかのような雰囲気だが、そこで売買されるのは「人間」や「獣人」。
そして——その目玉商品が、自分だ。
「おい、見ろよ。あれが噂の精霊獣の混血種らしいぜ」
「ふむ……あれが『支配の声』を持つという……本当なら、兵に使える」
「いくらまで跳ね上がるかねぇ。奴隷の値段じゃねぇぞ、こりゃ」
見下すような視線と、値踏みするような会話が飛び交う中、ステージ下で奴隷商人の一人がマイクのような魔導具を持って叫んだ。
「お待たせいたしました! 本日の目玉はなんと……滅多にお目にかかれない、『精霊獣の混血種』でございます!」
檻の上にかけられた布がバサリと取り払われると、観客たちからどよめきが起こる。
「見た目は人間……だが、内に宿るは異種の血。こやつ、な、なんと! 獣人すら制御できるのです!」
その言葉に、群衆の空気が変わった。興味から、熱狂へ。欲望がざわつく。
「おもしろい……人間の姿のまま、支配の呪術でも使えるのか?」
ひときわ目立つローブ姿の貴族が笑う。
悠斗は、黙って格子越しにその男を睨みつけた。
(クソ……俺、売られるどころか、完全に見世物じゃねぇか……)
背筋をつたう冷たい感覚。汗が首筋を流れ、手は無意識に鉄格子を握りしめる。心臓の鼓動が、嫌でも高まっていく。
ここから逃げなければならない。だが手は縛られ、檻は吊るされ、観客の視線が突き刺さる。
悠斗の緊張と不安が、今まさに頂点へと達しようとしていた——。
そして、オークションが始まったその瞬間。
突如、遠くの空気が震えるような音が市場を包み込む。
「アオォォォォン!!!」
鋭く、力強く、魂を揺さぶるような咆哮——。それは紛れもない、獣人の咆哮だった。
「……な、なんだ?」
「いまの声……まさか」
観客たちがざわついた次の瞬間。
ドガァァンッ!!
市場の東側にある木壁が、内側から爆発するように吹き飛ばされた。土煙が上がり、視界を奪う。観客たちが悲鳴を上げる間に、その中から飛び出してきたのは数名の武装した獣人たちだった。
その先頭に立っていたのは、銀色の髪と鋭い金色の瞳を持つ少女。銀狼の耳がぴんと立ち、長い尾が威嚇するように揺れている。軽やかな革鎧に黒いショートマント、背には戦斧、腰には双の短剣——。
小柄な体格ながら、その一歩一歩からは凄まじい気迫が溢れていた。
「誰だッ!?」
「護衛を呼べ、武装襲撃だッ!」
商人たちが混乱に叫び、護衛の兵が動き出す。
だが少女は怯まない。
群れの先頭に立つその者こそ、銀狼族の戦士・フィオナだった。彼女は檻の上に吊られた悠斗に一瞥をくれると、そのままステージに向けて跳び上がった。
「奴隷にされるために生まれた獣人など、いない……!」
その一喝に、獣人たちの檻の中から感情が爆ぜる。驚き、希望、歓喜——そして、怒り。
「長、制圧は?」
後方から駆け寄った狼獣人の一人が、低く問う。
フィオナは短剣を抜きながら、涼しい声で言い放った。
「人間どもに慈悲はいらない。殺さずとも、骨の一本くらい折れ」
「了解」
武装した獣人たちが、一斉に行動を開始する。
悠斗はその一部始終を、檻の中から目を丸くして見ていた。
「うおっ……めっちゃ本気だ……!」
まるで映画の一場面のような光景。だがこれは現実——。
檻に入れられたまま、悠斗は理解していた。
解放者は現れた。しかし同時に、新たな混乱の種も巻かれたのだ。
混乱の渦の中、檻の前を駆け抜けた誰かの蹴りが、鉄の鍵を砕いた。
「え……あ、開いた……?」
悠斗はしばし呆然とし、その後ようやく事態を飲み込み、震える手で扉を押し開ける。自由。何時間、いや何日ぶりだろうか。
初めてこの異世界に来て以来、ようやく檻の外に立った。
「助かった……マジで……」
思わずその場にへたり込みそうになるが、背筋に冷たい気配が走った。その気配に導かれるように顔を上げると、目の前にはひとりの少女が立っていた。
銀色の髪が揺れる。金の瞳が、射抜くように悠斗を見据えていた。
「……人間が、なぜ獣人の檻にいた?」
低く、静かな声。その先にあるのは、明確な敵意。
「え、あの……いや、俺、ただ巻き込まれただけっていうか……」
少女は言葉を聞こうともせず、すでに腰の短剣に手をかけていた。
「人間のくせに、獣人の檻に入ってるなんて……罠に決まってるだろ」
「いやいやいや! 俺は敵じゃないって! 誤解だってば!」
悠斗が両手を広げて必死に否定すると、フィオナの瞳が細くなる。
「……知ってる。お前、人間の臭いがする」
「そりゃそうだ、だって人間だも――」
シュンッ――!
話の途中で、フィオナが地を蹴った。その動きは獣のように速く、鋭く、迷いがなかった。
「だからこそ怪しいんだ」
双の短剣が、風を裂いて一直線に悠斗へ襲いかかる!
「ちょ、マジか!?」
悠斗は咄嗟に身を引き、背後にあった檻の柱にぶつかりながらも避ける。
「助けに来た人に殺されるなんて聞いてないんだけど!?」
だがフィオナは一切迷わない。その目には、「敵と見なした者」以外、何も映っていなかった。
この混乱の中、ようやく解放されたはずの悠斗に迫る新たな危機。状況は味方を得たはずが、一転して命を狙われる展開へと変貌していた——。
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