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あげる
しおりを挟む今日は、朝から隣の天野くんとほとんど会話をしていない。
なんとなくテンションが上がらなくて、話す気分じゃないからだ。
まぁ、そういう日もある。
午後3時。
ふぅ、と隣から小さなため息が聞こえた。
分かるよ、わたしもそう。
ぽそっと「眠くない?」と声をかけると、天野くんは、はぁ、と大きく息をつき「ほんとですね」と返した。
「食べる?」
レモンのミントタブレットを机の引き出しから出すと「欲しいです」と天野くん。
差し出された手のひらに触れないように少し浮かせて、ケースをガラッガラッと振った。
「あっ。」
慎重に振ったのに、ミントタブレットが4粒も出てきてしまった。
残りの3粒を、天野くんの手のひらの上から一粒ひとつぶ摘まんで、ケースの中に戻していく。
手に触れないように気を付けていたんだよ、と自分に言い訳をしながら、それでも触れられたことがなんだか甘酸っぱい。
天野くん、ごめんね。
それにしても、一度出てしまったものを戻すのもなんだかな。
ミントタブレットを摘まむ手が、少しためらった。
あと2粒。
もしかして2粒くらい食べないかな、と考えたら、そんなわたしの頭の中を見透かすように「一粒でいいですよ」と天野くんが言った。
「あ、うん。」
1粒だけ残して、残りはケースの中に戻し終わった。
眠気はすっかり吹っ飛んでいた。
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