『TRAVERUMINA』~名も無き世界に光あれ~

ネコミケ

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第一章 一新紀元

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というわけで、次の日。


気分屋な猫さんと一緒に、街の学校へと足を運んだ。


「じいさん、居るかー」


「これはこれは、ようこそおいでくださいました。今回は、どういったご用件で?」


件の学校に着くと、学校を管理しているらしいお爺さんに出迎えられた。


「突然お邪魔してすみません。実は今、仕事を探しているんです。」


「おや、エルフのお嬢さんか。仕事を探してるということは、ここで教師をしてみたいのかな?」


「はい。魔法なら得意なので、少しはお役に立てるかと思います。」


「そうかそうか。なら、少し見せてもらってもいいかい。」





私は、校舎の隣の、訓練場とでも呼ぶべき施設に案内された。


中には、数種類の的が並んでいる。倉庫のようなものが併設されていたので、用途によって的や設備を変えるのだろうと想像する。


「ちょうど、丈夫なものが置いてあるから、適当に魔法を打ってみてくだされ。」


適当、って言われても…。


まあ、自分の魔法を売るいい機会だ。インパクトを重視して、比較的苦手な魔法から、いくつか試してみることにしよう。


とりあえず、一番苦手な火魔法からだ。


魔法の炎を見ると、の記憶がよみがえる。とても嫌な気分だが、便利なので普段から仕方なく使っている。


投げナイフみたいな形にして、あの変わった形の岩の的にでも突き刺そう。


…私の最大の武器は、魔法を操る精度だ。


少し離れたところで見守るお爺さんにも見えるように、少し大げさに炎を見せた後、形を整えてから射出するという算段だ。


さて、始めるか…と、手のひらの上に魔力を集める。が、何かおかしい。


前は感じていた、魔力を絞り出すような感覚…言い換えれば、抵抗感が、ない。少し力を込めただけで、魔法があふれ出すようだ。


……そうか、神聖魔法の枷が外れたから、魔力操作にかかっていた制限が外れたのだ。


今になって、ようやく気が付いた。家事で使う程度の、精密さのいらない小規模の魔法を使っているだけでは、気付けなかった。


これはなかなか、いい気分だ。炎のナイフを一本だけ出すつもりだったが……予定変更。体の前に十本具現化し、連続で射出する。


岩に刃物が突き刺さる、リズミカルな鈍い音が、訓練場内にこだまする。


爽快!











…や、


やりすぎた…。


お爺さんと猫さんに視線を移す。二人は、口と目をを真ん丸にして、的のほうを向いて突っ立っていた。


「こ、こりゃたまげた。」


「まじか」


火、闇、光、水、風の順番で得意だったので、火と水と風の魔法を披露する予定だった。…が、もうこの一発で充分、という雰囲気になってしまった。


…お爺さんが、もう勘弁してくれと言わんばかりの目でこっちを見てくる。


「ぜ、ぜひ、魔法の講師をやってくだされ…。」


他の仕事も考えていたが、まあいいか。


なんだか予定と違ったが、無事に(?)私の職場が決まった。
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