16 / 32
第一章 一新紀元
4-2
しおりを挟む
というわけで、次の日。
気分屋な猫さんと一緒に、街の学校へと足を運んだ。
「じいさん、居るかー」
「これはこれは、ようこそおいでくださいました。今回は、どういったご用件で?」
件の学校に着くと、学校を管理しているらしいお爺さんに出迎えられた。
「突然お邪魔してすみません。実は今、仕事を探しているんです。」
「おや、エルフのお嬢さんか。仕事を探してるということは、ここで教師をしてみたいのかな?」
「はい。魔法なら得意なので、少しはお役に立てるかと思います。」
「そうかそうか。なら、少し見せてもらってもいいかい。」
…
私は、校舎の隣の、訓練場とでも呼ぶべき施設に案内された。
中には、数種類の的が並んでいる。倉庫のようなものが併設されていたので、用途によって的や設備を変えるのだろうと想像する。
「ちょうど、丈夫なものが置いてあるから、適当に魔法を打ってみてくだされ。」
適当、って言われても…。
まあ、自分の魔法を売るいい機会だ。インパクトを重視して、比較的苦手な魔法から、いくつか試してみることにしよう。
とりあえず、一番苦手な火魔法からだ。
魔法の炎を見ると、あの時の記憶がよみがえる。とても嫌な気分だが、便利なので普段から仕方なく使っている。
投げナイフみたいな形にして、あの変わった形の岩の的にでも突き刺そう。
…私の最大の武器は、魔法を操る精度だ。
少し離れたところで見守るお爺さんにも見えるように、少し大げさに炎を見せた後、形を整えてから射出するという算段だ。
さて、始めるか…と、手のひらの上に魔力を集める。が、何かおかしい。
前は感じていた、魔力を絞り出すような感覚…言い換えれば、抵抗感が、ない。少し力を込めただけで、魔法があふれ出すようだ。
……そうか、神聖魔法の枷が外れたから、魔力操作にかかっていた制限が外れたのだ。
今になって、ようやく気が付いた。家事で使う程度の、精密さのいらない小規模の魔法を使っているだけでは、気付けなかった。
これはなかなか、いい気分だ。炎のナイフを一本だけ出すつもりだったが……予定変更。体の前に十本具現化し、連続で射出する。
岩に刃物が突き刺さる、リズミカルな鈍い音が、訓練場内にこだまする。
爽快!
、
、
、
…や、
やりすぎた…。
お爺さんと猫さんに視線を移す。二人は、口と目をを真ん丸にして、的のほうを向いて突っ立っていた。
「こ、こりゃたまげた。」
「まじか」
火、闇、光、水、風の順番で得意だったので、火と水と風の魔法を披露する予定だった。…が、もうこの一発で充分、という雰囲気になってしまった。
…お爺さんが、もう勘弁してくれと言わんばかりの目でこっちを見てくる。
「ぜ、ぜひ、魔法の講師をやってくだされ…。」
他の仕事も考えていたが、まあいいか。
なんだか予定と違ったが、無事に(?)私の職場が決まった。
気分屋な猫さんと一緒に、街の学校へと足を運んだ。
「じいさん、居るかー」
「これはこれは、ようこそおいでくださいました。今回は、どういったご用件で?」
件の学校に着くと、学校を管理しているらしいお爺さんに出迎えられた。
「突然お邪魔してすみません。実は今、仕事を探しているんです。」
「おや、エルフのお嬢さんか。仕事を探してるということは、ここで教師をしてみたいのかな?」
「はい。魔法なら得意なので、少しはお役に立てるかと思います。」
「そうかそうか。なら、少し見せてもらってもいいかい。」
…
私は、校舎の隣の、訓練場とでも呼ぶべき施設に案内された。
中には、数種類の的が並んでいる。倉庫のようなものが併設されていたので、用途によって的や設備を変えるのだろうと想像する。
「ちょうど、丈夫なものが置いてあるから、適当に魔法を打ってみてくだされ。」
適当、って言われても…。
まあ、自分の魔法を売るいい機会だ。インパクトを重視して、比較的苦手な魔法から、いくつか試してみることにしよう。
とりあえず、一番苦手な火魔法からだ。
魔法の炎を見ると、あの時の記憶がよみがえる。とても嫌な気分だが、便利なので普段から仕方なく使っている。
投げナイフみたいな形にして、あの変わった形の岩の的にでも突き刺そう。
…私の最大の武器は、魔法を操る精度だ。
少し離れたところで見守るお爺さんにも見えるように、少し大げさに炎を見せた後、形を整えてから射出するという算段だ。
さて、始めるか…と、手のひらの上に魔力を集める。が、何かおかしい。
前は感じていた、魔力を絞り出すような感覚…言い換えれば、抵抗感が、ない。少し力を込めただけで、魔法があふれ出すようだ。
……そうか、神聖魔法の枷が外れたから、魔力操作にかかっていた制限が外れたのだ。
今になって、ようやく気が付いた。家事で使う程度の、精密さのいらない小規模の魔法を使っているだけでは、気付けなかった。
これはなかなか、いい気分だ。炎のナイフを一本だけ出すつもりだったが……予定変更。体の前に十本具現化し、連続で射出する。
岩に刃物が突き刺さる、リズミカルな鈍い音が、訓練場内にこだまする。
爽快!
、
、
、
…や、
やりすぎた…。
お爺さんと猫さんに視線を移す。二人は、口と目をを真ん丸にして、的のほうを向いて突っ立っていた。
「こ、こりゃたまげた。」
「まじか」
火、闇、光、水、風の順番で得意だったので、火と水と風の魔法を披露する予定だった。…が、もうこの一発で充分、という雰囲気になってしまった。
…お爺さんが、もう勘弁してくれと言わんばかりの目でこっちを見てくる。
「ぜ、ぜひ、魔法の講師をやってくだされ…。」
他の仕事も考えていたが、まあいいか。
なんだか予定と違ったが、無事に(?)私の職場が決まった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
タイム連打ってなんだよ(困惑)
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」
王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。
パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。
アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。
「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」
目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?
※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。
『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。
絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。
一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。
無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる