『TRAVERUMINA』~名も無き世界に光あれ~

ネコミケ

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第一章 一新紀元

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「適正魔法が何かを調べるときには、いくつかの方法があります。一般的には、有効射程、精度、威力の三つの観点から判断することが多く、それぞれに応じた方法をとります。」


そう言って、生徒たちへのレクチャーを始める。


「一つ目の、有効射程です。適当な物体……この場ではボールを用いて、それを魔法で包んで浮かせたまま、少しずつ遠くへ動かします。」


説明しながら、実際にやって見せる。


「すると段々効果が弱くなっていって、地面についてしまいます。その地面に着いた瞬間の自分とボールとの距離を測ることで、有効射程を測ってみましょう。」


生徒たちも、見よう見まねでやり始める。


…年下の生徒が困っていると、比較的年上の生徒たちも助け船を出してくれていた。


分かりやすい説明をしようとすると、どうしても冗長になってしまい、余計に時間がかかってしまう。


そこで、端的な説明で把握できる者を中心に小さめのグループができるように仕向け、私はそこにあぶれてしまった子たちを集め、その補助に集中することにした。


年上の生徒たちの積極的な協力のおかげで、授業が滞ることは少なく済んでいた。





「俺の魔法が強すぎて、終わりが見えないぜ!」


「あんた、そんな軽いボール使ってどうすんのよ!これでも使ってなさい!」


「どえーっ、重いっ!」


…私の場合、最も有効射程の差が大きい火魔法と風魔法でも二メートルほどしか違わず、これでは適正魔法と断定することはできない。





「二つ目に、精度です。各属性の魔法を基準となる円と同じ大きさと形にして、重ねて見てみたときにもっとも揺らぎの少ないものを比較してみましょう。」


「せんせー、まん丸にならないよぉ。」


「そういう時は、別の形にしてみてもいいですよ。それか、いろんな形に変えてみるときに、どの魔法が一番形を変えやすいかで比べてみてもいいです。」


「す、すごい。先生の魔法、どれも全然揺らいでない。」


子どもたちが楽しそうだと、とてもいい気分で授業をすることができる。教師冥利に尽きると言いうものだ。


「精度に関しては、訓練で最も伸びやすい項目です。皆さんも頑張って練習すれば、どんどん上手になれますよ。」


「私、もっと練習する!」


「俺はかっこいい炎の剣士になってやる!」


「マンガの読みすぎよ。」


そんなやり取りをに、次の項目に移る。





「最後は威力です。これは少し、計るのが難しいですが…。魔法で小さい玉を作って撃ちだして、鐘に当てて音を鳴らしてみましょう。音の大きさを比べて、威力を比較します。」


一度手本を見せる。


小さい豆程度の大きさの火魔法の玉を作り、鐘に向けて射出する。すると、鐘は ゴーン と重い音を鳴らす。


待ちきれないといった様子の子どもたちも、順番に実践し始める。


コン、と鳴ったのかわからない程のかわいらしい音がしたかと思えば、私の火魔法と遜色ない音を鳴らす子もいた。訓練せずにこの威力とは大したものだ。








一通り計測は終わり、みんな自分の結果に一喜一憂している。


「あんたは炎の剣士はダメそうね。」


「いいだろ!氷の剣士でも!」


「私、どの魔法が適正なのか、いまいちわからないわ。」


「僕は闇魔法か…。日陰者にはピッタリじゃあないか。」


「ぼ、ボクは光魔法みたいだよ…。闇のほうがお似合いだと思うんだけどなあ…。」


「みなさん、今回の計測は、あくまで仮のものです。私のように、特定の属性が適正でない人もたくさんいます。それに、今は苦手な魔法でも、練習すれば得意になることだってあります。あきらめないで、一緒に頑張って練習していきましょう!」


「「「はーい!」」」


かくして、私の教師生活一日目が完了した。
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