『TRAVERUMINA』~名も無き世界に光あれ~

ネコミケ

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第一章 一新紀元

5-1 爬羅剔抉

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「いーち、にーい、さーん、しーい、」


教師を始めて、一か月経った。今日は休日だが、学校に遊びにきている。


というのも、授業で私の適正魔法の認識阻害魔法を知った子たちがかくれんぼをしたいと言ってきたので、それに付き合っているのだ。


みんな自分が見つけてやると息巻いて、やる気に満ちた目をしていた。


「ごー、ろーく、なーな、」



どういう風の吹き回しか、猫さんも学校に来ていた。


なんと、どうせヒマだし……と言って、自分も先生をやり始めているのだ。


また、回復魔法の使い手なんて滅多にお目にかかれないので、いい機会だと言って授業には大人が多く来るらしい。


「はーち、きゅーう、じゅう!」


私は四日に二回、猫さんは四日に一回、授業を行っている。


授業には子どもたちだけでなく大人も来て、私の話を聞いている。


その後の実習目的かとも思ったが、意外にも話に聞き入ってくれるので、こっちも気合が入る。


…とはいえ、もちろん実習にも参加して、子どもたちに魔法を見せびらかして得意げになっている。大人げないものだ。


「もーいーかーい!」








かくれんぼのルールは、最初は見つける役が一人でそれ以外は隠れ、発見され次第見つける側に回るというごく一般的なものだ。


「みつけた!」


「や、やられた。」


さっきから、子どもたちがどんどん見つかっている。


だが、悔しがっているそぶりは見せるものの、そもそも認識阻害魔法を使った私を見つけるために始めたものだからか、どのセリフも棒演技にしか聞こえない。


「うにゃー、やるな」


猫さんも情けなくも捕まってしまったようだ。


…かくいう私はというと、予想通り近くに探しには来るものの、素通りされる。


幼少のころにかくれんぼをした時、隠れていることすら忘れられて、友達が帰り始めて焦った時の気分を思い出して、懐かしさを覚える。


「うわ!びっくりしたー、こんなところに隠れてたのか。」


「あちゃー。見つかっちゃった。」


今見つかったのは、たしか領主様の娘さんだったか。目隠しをした、銀髪の少女である。


感覚が優れているらしく、視覚に頼らずとも生活に支障はないとのことだ。いつも、執事風の男性とともに学校へ来ているので、少し目立っていた。





…見つける側になった子どもたちが集団で近づいてくる。


まあ、これも偶然だろう。私は、もう少しの間は見つかるつもりはない。


子どもたちが楽しそうに動き回っているのを見ていると、私も意外と楽しめていた。


…だが、ずっと同じ場所でじっとしていると、さすがに足が痺れてくる。


まあ、多少動いたところで、認識阻害の魔法は看破されまい。少し足を開いて、伸びをする。


…いや、待てよ…。なんだか、視線を感じるような気がする。


ふと集団の方を見ると、例の銀髪の少女がこっちを向いている。まさか、気付かれた?


目隠しをして目が隠れているはずが、見られているような……言ってしまえば不気味な感覚がする。


それに心なしか、髪がこちらの方に向かって靡いているようにも見える。


…だが、その後すぐに目線を切って、


「先生、見つからないねー。」


また別の場所へと歩いて行った。


一体、なんだったのだろう…。とりあえず、錯覚ということで納得することにした。
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