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山奈みちかはモブでいい
しおりを挟む女子高生は、いろんな話をする。
家族の話、動物の話、好きな人の話。
そのどれもが聞いていて心地よくて、まだ話していたいなんて思ってしまう。
私、山奈(やまな)みちか はそんなことを思いつつ話を聞いていた。
「かすみ! 今日は駅前のクレープ食べに行こっ」
「えぇ‥‥りあちゃん昨日もそう言って私が食べるところ見てただけじゃない」
「それはかすみが美味しそうに食べてくれるからで‥‥い、いいでしょかすみ!」
同じクラスの小泉かすみ と 和泉りあ。
あの二人、ほんと急に仲良くなったな‥‥。友達の会話に相槌を打ちながら、そっと聞き耳をたてる。おしゃべりが好きだった私だけど、ここ最近二人の会話が気になってしょうがない。
「もう、じゃあ今日は一緒に食べてよ?約束だからね」
「もちろん!私アイス入ってるのがいいなぁ」
頭が良くて、周りとはどこか一線を引いていた和泉さんが今ではかすみちゃんにべったりだ。それはもう見ていて恥ずかしいくらいに。
かすみちゃんとは割とよく話す仲だったけどそれも少なくなってきてしまった。
まぁ二人の会話が聞けるなら私はいつでも空気になれますけどね。
「どうしたの? みちか」
「んーん。なんでもない」
いけないいけない。今は会話の途中だった。
慌てて話に耳を傾ける。最近飼っているペットの話らしい。
「でさ、うちのゴンノスケなんだけど__」
いや名前すごいな。
じゃなかった、可愛いー。
「頭を撫でると喜び方が独特で__」
「もう、りあちゃんどうしたの?」
「なんかかすみに甘えたくなって」
「急にそんなのびっくりするよぉ」
……振り向きたい。
何してるの?あの隙のない和泉さんが教室でどんな甘え方するんだろう。
あぁ、考えただけでキュンときたわ。
「可愛い‥‥」
「だよね!柴犬なんだけど散歩拒否の顔が可愛くてさー」
いやゴンノスケじゃなくて。
いやゴンノスケも可愛いな。
「そういえばりあちゃんこの前言ってたお泊まりなんだけどね」
「え、何それ聞いてない」
「あれ?言ってなかったっけ、ゴンノスケは元々のら犬で」
「ごめんゴンノスケじゃなくて」
「じゃあなんの話してんのよ……」
もうそんな仲になってたの?お泊まりする仲ってけっこう親密じゃない?かす×りあの仲がそんなに進んでたなんて予想外だったわ。
「その、うちはオッケーだって」
「やったー!一度かすみとは一日中 遊びたいなって思ってたんだ」
「ひゃうっ、もぉ苦しいよ」
「みちか、身体ふるわせてどうしたの?」
「なんかもう私の友達かわいいなって」
「ばっ、て、照れるじゃんもう!」
あんたじゃないけど、なんてツッコミは飲み込んでおいた。それよりもいまは背後に感じるこの幸せオーラを感じていたい。
「なんか私もうモブでいいよ」
「なに言ってんの?」
呆れる友達をよそに私は手を合わせ、目を閉じた。
きっとマンガの世界なんかではこの感情をこう言うんだろう。
「尊い‥‥」
まだまだ始まったばかりの推しカプだけど、私は二人を全力で応援していこう。
女子高生はいろんな話をする。
家族の話、動物の話、好きな人の話、そして。
尊い二人の話を。
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